地域活性化から1次産業の支援まで。コミュニケーションをデザインする株式会社STORYの取り組みとは

東京ウォーカー(全国版)

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農業や地場産業を盛り立てる「レビュージャパン事業」に注力

さまざまな分野の事業を展開しているSTORYだが、潮さんが特に注力していると語る「江戸東京野菜とジビエ」はどういったところから出てきた事業なのだろうか?

「自分たちの街に定住してもらうためにはどうしたらいいのか、どうしたら地場産業が盛り上がるのか、そんな悩みを持つ地方に呼ばれることが多くなりました。そして、STORYを立ち上げた2016年は、内閣府がSDGsを推進するためにSDGs推進本部を立ち上げた年でもあります。各地方自治体でもSDGsの17項目のうちのどれかを達成することが課題になったんです。それで、自分たちが地方に呼ばれて、解決策を提案することが求められるようになりました」

江戸東京野菜はJA東京中央会からの要請で普及に向けたプロモショーンに携わるようになったという。日本の各地方で古くから栽培されてきた伝統野菜というと、京野菜、加賀野菜、鎌倉野菜が知られているが、江戸東京野菜はどんなものなのだろうか?

JA東京中央会主催の「江戸東京野菜都内高校生料理コンテスト」。2024年のテーマはずんぐりとした形が可愛らしい「馬込三寸ニンジン」【写真提供=株式会社STORY】

「江戸東京野菜の起源は、江戸時代の参勤交代にあるそうです。参勤交代で地方から武士が江戸に住むことになると、地元の野菜を食べたいということで、種を江戸に持ち寄って栽培させたのが今につながっています。練馬ダイコンやのらぼう菜、谷中ショウガなど50種類以上が認証されています。一般に流通している野菜は、安定した品質で効率よく栽培できるように品種改良されているのですが、江戸東京野菜は昔のままですから、苦味やえぐみ、独特の香りがあるのですが、栄養価は流通野菜よりも高いのです。栽培にも手間がかかるので大量生産はできないけども、継続的に作っていきたいというJA東京中央会の想いがあり、それを我々のプロモーションで支援しようということで、2022年から都内高校生を対象に料理コンテストの開催を始めました」

2023年度は寺島ナスをテーマに16校282チームがエントリー、大きな盛り上がりを見せたところだ。2024年度のエントリーも5月13日よりスタートしたところで、「馬込三寸ニンジン」をテーマに高校生によるオリジナル料理を募集している。

ジビエの普及には処理施設が欠かせないとして、日本ジビエ振興協会が開発した「ジビエカー」。体洗浄から剥皮・内臓摘出・枝肉洗浄までできる【写真提供=株式会社STORY】

「ジビエは2023年4月に一般社団法人日本ジビエ振興協会の広報PR担当として自分が動くことになりました。ジビエは現代の私たちの生活に馴染みのあるものではありません。しかし、江戸時代は猪肉をぼたん、鹿肉をもみじと呼んで野生鳥獣を食べてきていました。現在、農業における鳥獣被害が深刻化していて、農林水産省によれば、2022年度は全国で年間156億円もの農作物が野生鳥獣の被害を受けています。では、これをなんとかしようということで鹿や猪の駆除をするわけですが、そうして獲った命はきちんと食そう、流通させようということを日本ジビエ振興協会では取り組んでいます。ただ、野生の生き物ですから、食べるにあたってはきちんとした処理が必要です。調理方法も国から厳しいルールが決められています。生食すると肝炎になったり、寄生虫に感染したりする恐れがあります。しかし、全国に800ある食肉の処理施設のうち、野生鳥獣を国の基準で処理できるのはわずか36施設。ハンターはいるから駆除できても、処理ができないから埋めるしかない。そこで、移動式解体処理車ジビエカーを活用することになりました」

2023年度に開催された第8回ジビエ料理コンテストのポスター。2024年度も開催予定【写真提供=株式会社STORY】

ジビエカー自体は2018年に開発されたが、改良を重ねた新型車両が2023年11月にデビュー。実用化に向けて本格的に動き出しているという。

「江戸東京野菜もジビエも、江戸から食されてきたもの。これから日本の食に対して影響をもたらすものだと感じています。こうした第1次産業を中心に日本の魅力を再構築したり、日本各地の伝統技術と現代デザインをマッチングしたりと、日本の伝統を広げ、つなげていく事業を4つ目の事業『レビュージャパン事業』と位置付け、注力しているところです」と潮さん。

いずれの事業も大事にしているのは「発想の基点は“人”」であること。人の尺度、感覚、感性に寄り添うことで、コミュニティの持つ空気をどうデザインするかというのを念頭に考えているという。コミュニティが広がることで、新しい出会いが生まれ、そこから新しいビジネスや文化が生まれるきっかけにもなるだろう。STORYが蒔いた種が、どんなふうに芽吹くのか今後ますます楽しみだ。

取材・文=西連寺くらら

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