コーヒーで旅する日本/関西編|コーヒーを通じてリアルな地元の魅力を発信。「Youth Coffee」が目指す明石の水先案内人

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

モノトーンの空間に、テーマカラーの黄色が映える店内


関西編の第81回は、兵庫県明石市の「Youth Coffee」。店主の橋本さんは、市役所職員からコーヒー店主に転身した、ユニークな経歴の持ち主。誰もが気軽に立ち寄れるコーヒースタンドは、新たな拠り所として市内外のお客から支持を得ている。前職時代に街づくりに関わってきた経験から、開店後は地元のネットワークを活かした街案内はもちろん、時に来店したお客をアテンドすることもしばしば。一杯のコーヒーを通じて、ここにしかないリアルな街の情報に出合える、街のインフォメーションを目指している。

店主の橋本さん


Profile|橋本翔(はしもと・しょう)
1990年(平成2年)、兵庫県明石市生まれ。明石市役所にて環境関連、子ども施策の部署での勤務を経て、コーヒー店主として独立開業を志向。自家焙煎コーヒー店や生豆商社などで経験を積み、2019年、明石市内に「Youth Coffee」をオープン。2022年に現在地に移転リニューアル。

市役所職員からコーヒー店主への転身

壁面に大きく描かれているのは、“コーヒー好きエイリアン”をイメージしたキャラクター・ユースくん

飲食業の中でも、異なる分野からの転身が多いコーヒーの世界。全くかけ離れた仕事から移る人も珍しくなく、それゆえ店主のキャラクターも、実にバラエティに富んでいる。その中にあって、市役所勤務からコーヒー店主となった橋本さんは、とりわけユニークな経歴の持ち主と言えるだろう。前職時代から街づくりに関心を寄せ、コーヒー好きでもあったことから、その2つを掛け合わせて生まれたのが「Youth Coffee」だ。「前職では、街のフィールドワークもしていたので、市民の皆さんと話をする機会も多かった。身近な人にいいなと思ってもらえる仕事をしたいと考えたときに、コーヒー店なら地元に貢献できるのではと考えたんです」

開店にあたり、専門的にコーヒーを学ぶべく、いくつかのカフェやコーヒー店で経験を積みながら、月に一度、東京のコーヒーセミナーを受講したりSCAJやコーヒー会社のスクールなどに通ったりと、独自に知識と技術を習得。伝手を頼って、商社で1年ほどシェアローストで焙煎のトレーニングを積む機会も得た。毎週、焙煎した豆は、当時働いていた知人のカフェで提供してもらい、実際のお客の反応を見ながら味作りに活かしていった。

湯の浸透を均一にするため、抽出の最後はドリッパーを揺らして粉を攪拌


地元のつながりを活かして物件を探し、2019年、元居酒屋を居抜きで改装して「Youth Coffee」を開業。店のイメージカラーでもある、鮮やかな黄色の焙煎機を導入し、心機一転のスタートを切った。シングルオリジンのみ5、6種をそろえる豆は、それぞれの産地に強い商社を吟味して仕入れている。「排気が強い機体で、熱風に近い焙煎なので、はっきりした味の濃淡を出すより、甘くやわらかな風味を引き出せるのが特長です」と橋本さん。なかでも、柑橘系の酸とキビ砂糖のような甘味が印象的な浅煎りのルワンダ・シーラ、ビターな香味にハーブ系の香りをまとった深煎りのインドネシア・マンデリンは、店の定番として定着。焙煎度は両極端ながら、いずれもふわりと広がる穏やかで厚みのある余韻が後を引く。なめらかな口当たりと親しみやすい味わいが好評を得る所以だ。

ドリップコーヒー550円。写真はふくよかな果実味が持ち味の浅煎り、ルワンダ・シーラ


一杯のコーヒーから始まる街歩きの楽しみ

「輪郭をくっきり出すより風味の柔らかさを出すのに向いている」というディードリッヒ焙煎機

開店から3年でじわじわと地元の支持を得て、2022年には、現在地の明石駅前に移転。元レストランの跡地を、懇意の美容室と共同で借り、以前厨房だったスペースをコーヒースタンドにリニューアル。モノトーンの空間に、キーカラーの黄色が映える、スタイリッシュな雰囲気に生まれかわった。夜遅くまで営業しているとあって、ここではワインやビール、日本酒、焼酎までアルコールも多彩にそろい、バー使いも可能だ。「コーヒー店ですが、アルコールも同じ嗜好品。味覚は経験を重ねて広がるものなので、同じ目線で楽しめる場にしたい」と橋本さん。飲食店を営む同業の常連も多く、「味覚のストックになるものは食べに行くようにしています。コーヒー店主としての心がけのひとつです」と、界隈のさまざまなジャンルの飲食店に足を運び、自らの食の経験も広げている。

神戸の陶芸家・伊藤慎さんの手によるドローイングマグは、店をイメージしたオリジナル


とはいえ、こうしたコーヒー店としての基本のスタンスは、橋本さんにとって当り前のこと。「クオリティの高いものを出すのは大前提で、街のコーヒー店としては、ことさら打ち出すほどのものではない。スペシャルティコーヒーといってもピンと来る方は少ないので、何も考えずにおいしいと思ってもらえれば十分」。それよりも、店のあり方として目指すのは、明石のハブ的な存在。いわば、街のインフォメーションとしての店作りを重視している。

「前職の影響もあるかもしれませんが、そういう役割を担うには、コーヒー店は一番合っていると思って。お客の世代を問わず、カウンターで気軽に話もできる。コーヒーを売るだけなら自販機でもいいはずなので、街の案内や紹介できるのがうちの強みです」という橋本さん。地元のネットワークを活かし、普段からお客との会話の流れで街をアテンドすることもしばしば。市外から来た人にとって、コンシェルジュのような役割を担う場所でもある。

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