【第44回】昭和23年創業の大須を代表する老舗焼鳥店「初鳥」

2017年12月7日 7:30更新

東海ウォーカー 藤原均

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焼鳥好きのあいだで名店として有名な「初鳥(はつとり)」。この道およそ50年の大将が、炭やタレ、塩などすべてにこだわりながら、長い経験に裏打ちされた絶妙な焼き加減の串焼きを提供してくれる。

戦後に野鳥専門の屋台として創業

1948(昭和23)年、まだ戦後の混乱が収まっていない時期に屋台の店として創業し、上前津のあたりで営業していたという「初鳥」。ちなみに江戸時代の焼鳥は野鳥が主流だったといわれるが、同店の創業当時も今より狩猟が盛んだったころ。スズメや鴨、キジ、ウズラなどの野鳥が豊富に獲れたため、秋から春にかけての狩猟期間は野鳥専門の店としてにぎわったという。

現在の場所に店が建てられたのは1964(昭和39)年。ちょうど1回目の東京オリンピックの年である。「自分が大学に通いながら店を手伝い始めたのも同じころ。そして卒業と同時に、父のもとで本格的な修業に入ったんです」と話すのは、2代目の服部豊二(とよじ)さん。

しかし同年に、父親が病気で倒れてしまうアクシデントが発生。その後は豊二さんと母親の2人で店を回すも、最初のころは常連客に半焼きだと怒られることもあったとか。今からは信じられないようなエピソードだが、なにしろ約50年も昔のことである。「まだ見よう見まねで、門前の小僧みたいなものでしたからね」。焼き場で客との真剣勝負を繰り返しながら、独学で焼き方のこだわりなどを1つ1つ積み上げていったのだという。

備長炭やタレ、塩などすべてにこだわりがある

同店の売りは炭火焼き。それも焼鳥店には珍しく、創業当時から一貫して高級な紀州備長炭だけを使用している。「火力が強いですから、短時間で火が中まで通って、表面をカリッと仕上げることができるんです」と豊二さん。さらに肉汁や脂が炭に落ちることで煙が立ち昇り、燻製と同じ効果を発揮することで、素材の味と香りをより引き立てる。とくに名古屋コーチンを使用した「名古屋コーチンねぎま」(420円)が人気だ。

タレは創業当時からの継ぎ足しを今も大切に守っている。2種類の醤油にみりん、白ザラメを調合し、さらに素材を通すことで肉の脂やエキスが加えられ、年月を重ねるごとに味が熟成されていく。「初鳥」では「かわ」(180円)や「すなぎも」(180円)もタレで注文する客が少なくない。

次に出してくれたのは「手羽先」(250円)の塩。ちなみに塩は、7~8年ほど前からドイツの岩塩を使用している。「焼き上がりがちょうどいい具合に甘くなる。それも口の中に残らない、理想的な味になるんです」。さまざまな塩を試した結果、最後に行き着いたのがこの岩塩であるという。

「つくね」や「牡蠣」なども人気

ほかにも合鴨の肉を使った「つくね」(220円)、広島や仙台から取り寄せた真ガキを焼き上げる秋冬限定の「牡蠣」(570円)、三河一色産のウナギにこだわった「うなぎ小串」(850円)など、「初鳥」には気になるメニューが目白押し。メニュー表には載っていないが「ミニ鰻丼」(1000円)も密かに人気だ。

近年は若い人や女性客も増え、客層がより幅広くなっている。「いろいろな人に来ていただけるのは非常にありがたいことですね」と豊二さん。日によっては17:00の開店からすぐに席が埋まってしまうことも少なくない。常連客は店に入るなり、冷蔵庫から自分で瓶ビールを出して席に着く。店と客の距離が近く、互いに余計な気遣いがない。なんだかとてもアットホームな光景である。

なお、毎年11月から2月中旬にかけての狩猟シーズンには、ごく稀に野生の鴨やスズメ(いずれも時価)が入荷することもあるとか。「モットーは一串入魂。これからも手を抜かず、自分の納得する焼き方を追求していきたい」と豊二さん。「初鳥」では、どのメニューを頼んでも、そんな豊二さんのこだわりがいっぱい詰まった絶妙な焼き上がりを堪能できるはずだ。【東海ウォーカー】

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