コーヒーで旅する日本/九州編|一息つくこと、立ち止まることの大切さを教えてくれる。「Cafe 一雨」にある余白
東京ウォーカー(全国版)
余白があった方がいい

コーヒーを柱に店をやることは決めていて、最初は福岡県うきは市にあるゼルコバコーヒーの豆を選んだという。
「大分にもおいしい自家焙煎のお店はたくさんあるんですが、うきは市の陶芸家・大村 剛さんの展示会で淹れてくださったコーヒーに感動したんです。大村さんのカップと、その時の空気感もあったかと思うんですが、すごく中庸なコーヒーだな、と感じました。それがゼルコバコーヒーさんとの出会いです」

そんな出会いから開業当初はゼルコバコーヒーから豆を仕入れていたが、コーヒーを柱にする以上、自家焙煎にシフトしていきたいという考えは開業当初からあったそうで、現在はすべて自家焙煎に切り替えている。ただ、店のどこにもその旨は書かれていないし、SNSでも特別謳っていない。
池澤さんにその理由を聞いてみると、「焙煎に関して、まだ堂々と『焙煎してます!』と言えるほどの自信がないというのが正直なところ。同業の方たちにいろいろ教えていただきながら、日々勉強中です」と苦笑い。それでも池澤さんが大切にしているのは、どちらにも偏らない中庸なコーヒーであること。味わいの方向性は昔から一切ぶれていない。

コーヒーの抽出はエスプレッソマシンのみ。そのエスプレッソマシンもレバー駆動モデルのイタリア、ラ・サンマルコ社の製品とちょっと変わっている。オートマチックではないため、豆の使用量、挽き目、タンピング圧の調整がシビアで、豆のエイジング具合などによって日々微調整をしている。とはいえ、その日その日で天気は違い、気温も湿度も違うわけで、なんでも多少ブレがあるのは当たり前。池澤さんはそれを“余白”と捉え、ブレさえも楽しんでいけたらという考え方でコーヒーと向き合っている。きっちり完璧じゃなくていいというスタンスもまた、伸びやかな時間を作り出す大切な要素かもしれない。

「コーヒーを飲む時間を大切に」という思いを自分なりにカタチにし、「日々の生活と生活の間(トランジット)のような場所になれたら」と話す池澤さん。幼少期から“お茶の時間”に親しみ、その日常生活をお茶の時間で一旦ストップすることの大切さを知っているからこその提案を表現しているのが「Cafe一雨」というわけだ。
空から降った雨が大地に染み込み川となり、海となり、やがて雲となる。そしてまた雨となって大地に降り注ぐ。そんな風にすべてにつながっている雨。
「てちてちと ふりはじめる 雨のように 珈琲を淹れましょう どうぞあなたに やさしい雨が ふりますように」
メニュー表に書かれたこのメッセージが「Cafe一雨」の想いを表している。

池澤さんレコメンドのコーヒーショップは「nageia coffee」
「大分県竹田市にある『nageia coffee』さん。私がレコメンドする側なんて大変おこがましいのですが、本当にステキなロースタリーです。店主さんの人柄、店の雰囲気、流れる音楽、すべてが“静”なイメージ。浅煎りがメインのコーヒーはとってもクリーンです」(池澤さん)
【Cafe一雨のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式1キロ
●抽出/エスプレッソマシン(ラ・サンマルコ社)
●焙煎度合い/浅煎り〜中煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)
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