地域の特産品をボトルに詰めた「地サイダー」、旅先でよく見るご当地ドリンクを佐賀の小さな町の会社がプロデュースするワケ
東京ウォーカー(全国版)
道の駅やサービスエリア、観光地の売店、スーパーマーケットなどで販売されているご当地商品「地サイダー」を知っているだろうか?福岡県のあまおうを使った「あまおうサイダー」や、長野県のシャインマスカット果汁を使った「信州シャインマスカットサイダー」をはじめ、その土地ならではの特産品や観光地をイメージした地サイダーは、全国各地に展開されている。

地サイダーの企画・開発・製造に大きく関わっているのが、佐賀県小城市に本社を構える友桝飲料だ。多くの飲料会社が大規模な工場を設置し、大量生産を行っているのに対し、友桝飲料は比較的少ない本数の生産でも要望を叶えられる製造設備を備えるなど、オリジナル製品の開発に注力した事業を行っている珍しい会社。今回はそんな友桝飲料の担当者に、地サイダーに込めた想いや、オリジナルサイダーの設計・マーケティングから流通までを手広くサポートするODM(Original Design Manufacturing)事業を行う理由などを聞いてみた。
大量生産じゃないからこそ可能になった、地域に寄り添うオリジナル飲料作りとは?
――地サイダーの企画および販売の意図や狙いを教えてください。
友桝飲料の強みを活かす戦略としてたどり着いたのが、小ロットでの商品開発を可能にするODM事業でした。「オリジナルドリンクを作りたい」というお客様の夢を形にすることを目的とし、各地から名産品や果汁を使用したサイダーの開発依頼が寄せられています。私たちは、そうしたご要望に丁寧に応えながら商品を作り続けてきました。その結果、大手メーカーがひしめく飲料業界において、独自のポジションを築くことに成功しました。
なかでも地サイダーは、地域の特産品を活かした商品として、地元経済の活性化や地域ブランドの構築に貢献しています。日本列島にはかつて、地域に根付いたローカル飲料が数多く存在していました。しかし、時代の流れとともにその多くが姿を消しつつあります。だからこそ今、地域の素材や作り手の想いが詰まった、記憶に残るような地サイダー、地ドリンクの価値が見直され、広く喜ばれていると考えます。
また、商品化されたもののなかには、一見ニッチながらも市場拡大の可能性を秘めた優れた商品もあり、そうした製品をきっかけに大手が市場に参入することで、全体の市場が活性化し、業界全体の発展につながることもあると思っています。

――その土地ならではの地サイダー作りに取り組み、販売促進をサポートするというアイデアはどのように生まれましたか?
友桝飲料では、小ロットでオリジナル飲料を製造できる設備と技術を活かし、「他ではやっていないことをやろう」という想いから、自社サイトで「オリジナル飲料がつくれます」と打ち出しました。そして誕生したのが、「こどもびいる」という商品です。こちらが想像以上の大きな反響を呼び、当社の存在を広く知っていただくきっかけになりました。そして、全国の企業・自治体から「オリジナルのサイダーを作りたい」という問い合わせが増加しました。以後、地域の個性や特産品を活かした地サイダー作りをサポートする取り組みが、私たちの主力事業の一つとなっています。
地サイダーをはじめとする地域発の商品は、その地域の特色を活かした魅力ある商品である一方、知名度の低さから、売り場に置いてもらうこと自体が難しいという課題もあります。そこで友桝飲料では、単なる製造委託にとどまらず、私たち自身が共同販売者として販路開拓にも積極的に取り組んでいます。全国の問屋や小売店とのネットワークを活用し、商品を各地の売り場へ展開することで、商品の認知度と販売機会の拡大を図っています。
こうした取り組みにより、オリジナル飲料販売に取りかかるお客様にとっては販売数の増加が期待でき、友桝飲料としてもリピート生産につながるため、相互に利益をもたらす関係を築けると考えています。製造から販売までを一体で支援することで、地域に根ざした商品の価値を、より多くの人々に届けられるよう努めています。
――友桝飲料が手掛けるODM事業を詳しく教えてください。
友桝ODM事業とは、設計からマーケティング、物流や販売までを一貫してサポートし、唯一無二のサイダーを共に考え、共に作り、共に世界に広げる事業です。2400本という小ロットからの生産が可能で、低コスト設計で製造することができます。小ロットだからこそ、初期のリスクを極力抑えながらオリジナルサイダーを作るという夢をかなえることが可能となっています。
友桝飲料の歴史を語るには外せない、イチオシ商品3選をチェック!
――これまで多くのオリジナル飲料を手掛けてきた中で、イチオシの商品3選を教えてください。
■スワンサイダー
友桝飲料が販売している商品のなかで、一番長いブランドの商品です。2005年には佐賀の地サイダーとして、昭和の頃のレトロなラベルを再現して復刻し、お中元やお歳暮といったギフトに採用された最初の地サイダーです。グラニュー糖を丹念に溶かしこむ、昔ながらの製法で作っています。すっきりとした後味で、ラベルデザインも大変好評の商品です。

■温泉レモネード
「温泉レモネード」は、弊社が初めて手がけた地サイダーとなります。長崎県の一大温泉地・雲仙を代表する手ごろな土産品の開発を検討されているとのことで、弊社にお問い合わせをいただきました。当初は、既存飲料商品のラベルのみを変更する「ラベル替え」をご希望されていましたが、雲仙にはかつてラムネが製造されていた歴史があることが判明し、それを踏まえて中身もオリジナルのサイダーをご提案いたしました。
原料には、地元で湧き出る天然水を使用。平成の名水百選にも選ばれた開聞唐船峡の天然湧水を使用し、かつて外国人の避暑地として親しまれていた雲仙で、当時愛飲されていた味をイメージして復刻しました。その結果、地サイダーの「温泉レモネード」が完成しました。

■こどもびいる
地サイダーとは違いますが、先述の通りODM事業のきっかけとも言える商品であり、友桝飲料の広告塔となった商品です。2024年には発売から20周年を迎えました。
瓶もラベルも本物そっくりでジョッキに注ぐとまるでビール!ぶくぶくと泡も本物そっくりです。実はリンゴ味の炭酸飲料。飲む人もそれを見る人もハッピーにする飲料です。

地サイダーができあがる様子を見学しよう!オリジナルドリンクやラベル作り体験も!
――友桝飲料の工場見学の特徴を教えてください。
弊社の工場見学は予約不要・料金無料でご参加いただけます。開場している日であれば、いつでもお好きなタイミングでお越しください。見学はフリー形式となっており、時間に縛られずご自由にご覧いただけます。

また、無料の体験コーナーとして、「オリジナルドリンクづくり体験」をご用意しております。日替わりでご用意するシロップをブレンドして、自分だけのオリジナルドリンクをお楽しみいただけます。さらに、有料体験として、「オリジナルラベルづくり体験」(1本あたり200円)も実施しています。ご自身でデザインしたラベルを貼ったサイダーは、その日の思い出としてお持ち帰りいただけます。

併設の直売所では、友桝飲料が製造する各種サイダーや、ここでしか手に入らないオリジナルグッズも販売しております。見学や体験とあわせて、ぜひお立ち寄りください。

――最後に一言お願いします!
友桝飲料は今年で創業123年目を迎えました。長い歴史の中で、私たちは多様な飲み物を通じて、人と人とのつながりを生み出し、飲み物文化の発展に貢献してまいりました。これからも、友桝飲料に関わるすべての人をハッピーにできるように、社員一丸となって「イチニのサン!」と心を合わせ、新たな挑戦を続けていきます。
地域の歴史や文化、特産品など、地域に眠る見えない資産を見つけ出し、商品の企画・開発をサポートする友桝飲料は、多くの地サイダーを作り出してきた。その土地だからこそ味わえる地サイダーには、地域のこだわりが炭酸と一緒にたくさん溶け込んでいる。旅先で見かけたらお土産に手に取ってみてはいかが?
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
文=平岡大和
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