スターバックスのJIMOTO Made＋新作は沖縄から。100年先をつなぐ、やちむんマグ

スターバックスの「JIMOTO Made＋」に、2025年6月6日(金)、沖縄県を代表する陶器「壺屋焼」のマグカップが仲間入りする。「JIMOTO Made＋」は、東京・中目黒にある「スターバックス リザーブ(R) ロースタリー 東京(以下、ロースタリー 東京)」とスターバックス オンラインストアで展開する、日本各地のモノ作りを取り入れた人気の商品シリーズ。新商品「「JIMOTO Made+ 読谷マグ陶眞窯296ml」を手掛ける陶眞窯を訪ねるため、ロースタリー東京のパートナー(従業員)と共に沖縄本島中部・読谷村へ向かった。

300年続く沖縄の伝統的なやちむん・壺屋焼

「やちむん」とは、沖縄の方言で焼き物のことを指す。その中で300年の歴史を持つのが、「壺屋焼」だ。壺屋焼は釉薬を用いず土のまま焼き締める荒焼(あらやち)、釉薬を用いて多彩な加飾をする上焼(じょうやち)に大別され、現在は上焼が主流とされる。

壺屋焼は1682年、琉球王府によりに3つの窯場が首里城近く、現在の那覇市壺屋に集められ、1つの窯場としたことから現在の「壺屋焼」が誕生した。海外貿易が盛んで東アジアのさまざまな地域から製陶技術が伝わった経緯から、多様な技法が壺屋焼に集約されている。第二次大戦後、那覇市では薪窯の使用が禁止されたため、薪窯にこだわる陶工の多くが読谷村に移窯。現在では読谷村は19の工房が集まる「やちむんの里」をはじめ、50以上の窯元が集まる焼き物の産地となっている。

「JIMOTO Made+ 読谷マグ陶眞窯296ml(以下、読谷マグ)」(￥7200)は、伝統的な唐草文様とコーヒーチェリーをイメージした赤いドットを組み合わせた絵付けが施されている。唐草模様は、蔦が伸びることから永遠や子孫繁栄を意味する吉祥模様だ。ブラウンの釉薬は、陶器にもコーヒーにも大切な要素である大地。ここから蔦が伸びるように、スターバックスと陶眞窯の縁が育っていく様を表現した、おおらかな風合いのマグだ。

読谷マグをひとつひとつ手作りする陶眞窯の工場長であり、二代目として工房全体を切り盛りするのは、相馬大作さんだ。朴訥とした話し方と、時折浮かべる温かな笑みに人柄がにじみ出ている。

「釉薬づくり、線彫や絵付けなど加飾の技術…たくさんある伝統的な技術をできる限り守りながら、壺屋焼を作り続けていきたい」という強い想いから、読谷マグの制作を請け負った。 

沖縄の自然の恵みが育む伝統

読谷マグができるまでには大きく、土づくり、成形、削り、素焼き、化粧掛け、絵付け、釉薬掛け、焼成という工程を経る。陶眞窯は分業制で、それぞれの工程を各プロフェッショナルが行う。大作さんが担うのは、ろくろ成形だ。沖縄本島の中部や北部でとれる赤土をベースにした粘土が、大作さんの手の中でみるみるうちに形作られていく。ろくろの職人だけで６人いるが、読谷マグの担当は大作さんのみ。それは、同じ職人が担当することで「一定の品質を保つ」というクオリティへのこだわりからだ。

色彩豊かな絵柄には、窯ごとの個性が現れる。
沖縄の自然や文化を反映した文様が多く、代表的なものには唐草のほか、魚紋、デイゴなどがある。陶眞窯の唐草は “大胆かつ繊細”。絵付けを担当するのは、大作さんの妹・千恵子さんだ。器に下絵はなく、ふわりと筆を乗せると、するすると筆を運び曲線を描く。「描くというより、器に釉薬を置いていくという感覚です。皿と違ってマグカップはカーブしているので、描くのが難しいんです」と千恵子さん。

そして、絵付けの後に施す釉薬は、壺屋焼の大きな特徴のひとつ。
仕上げのコーティングに用いる透明釉は、「沖縄県産のもみ殻に、貝殻やサンゴ礁を焼いた消石灰、具志頭白土などを混ぜる、壺屋焼の伝統的な製法です。その調合は、窯元ごとの独自のもの」と大作さんが言う。沖縄でとれる土、サンゴ礁や貝殻、そして描かれる沖縄の自然。伝統工芸は、その土地の風土に育まれるものなのだと改めて感じる。

施釉を終えると、本焼成だ。
陶眞窯にはガスや薪などいくつかの焼窯があるが、主力は灯油窯。昨今主流となっている電気窯は安定して焼ける反面、その均一性が焼き物の温かみを削いでしまうという面がある。一方、灯油窯は窯内で置かれた位置、火の当たる場所により出る変化が個々の味になっていく面白さがある。最高温度1230度。20時間かけてゆっくりと温度を上げゆっくりと下げ、焼き上げる。焼き終わったらそのまま冷まし、翌日にやっと窯出しとなる。