コーヒーで旅する日本/関西編|原点はベルリンで体感したカフェの本質。「solkatt coffee kyoto」がコーヒーを介して広げるコミュニティの場

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

店内で目を引く鮮やかなブルーは、店のコーヒーのコンセプトである紺碧と玲瓏をイメージ


関西編の第98回は、京都市南区の「solkatt coffee kyoto」。本連載でも登場した大阪・吹田の「TERRA COFFEE ROASTERS」で、ヘッドロースターを務めた山本さんが念願の独立。自身にゆかりの深い祖父の自転車店の跡を引き継ぎ、心機一転のスタートを切った。地元の京都でバリスタとして活躍したのち、単身ベルリンに渡って焙煎の腕を磨いた経験を持つ山本さんが、自店に思い描くのは、かつてベルリンで体感した、コーヒーを媒介にコミュニティを広げる場。「コーヒーがおいしいのは当たり前で、その先を求めて来てもらえるように」と、自らの原点でもある現地のカフェカルチャーを伝える、新たな店作りをうかがった。

店主の山本さん


Profile|山本順平(やまもとじゅんぺい)
1984年(昭和59年)、京都市生まれ。大学卒業後、住宅メーカー在職中に、ラテアートと出合ったのをきっかけにバリスタに転身。スターバックス、小川珈琲で経験を積んだあと、単身ドイツ・ベルリンへ。スペシャルティコーヒー専門店・WIM Kaffeeでヘッドバリスタを務め、Populus Coffeeで焙煎の知識・技術を吸収。帰国後、京都のOkaffe Kyoto嵐山(現在は閉店)、大阪のTERRA COFFEE ROASTERSでヘッドロースターをつとめたあと、2024年に独立し、「solkatt coffee kyoto」をオープン。

ベルリンでの修業を経てバリスタからロースターへ

祖父が営んでいた自転車店を継承した店は、文字通り、山本さんの原点の地でもある

京都を代表する名所の一つ、東寺の五重塔を望む大通り沿いに、2024年秋、念願の自店をオープンした店主の山本さん。勝手知ったる地元のなかでも、ここはひときわ思い入れ深い場所だ。「ここはもともと、祖父が営んでいた自転車店でした。子どものころから、よく訪ねていて、通っていた高校もすぐ近く。京都市内といってもかなりローカルなエリアですが、自分にとってはストーリーのある場所で、何より、祖父の自転車店の跡を引き継ぐことに意味がありました」と、自身ゆかりの地で新たなスタートを切った。

遡れば、ラテアートをきっかけにデザインの仕事からバリスタに転身した山本さん。小川珈琲では数々の競技会に出場するなど研鑽を重ね、さらに視野を広げるべく海外へ。「仕事のモチベーションを保つために、旅行でヨーロッパをよく訪ねるようになって、その中でドイツ・ベルリンの街の雰囲気に強く惹かれるものがあって。ただ、バリスタの修業先としてドイツはほぼ前例がない国、周囲からは“なんでベルリン?”とよく聞かれました」と苦笑するが、自らの直感を信じた挑戦は、本人が思うよりも実り多いものだった。

店先からは、京都のシンボル・東寺の五重塔を望める


ベルリンでは、気鋭のスペシャルティコーヒー専門店・WIM Kaffeeの立ち上げ、プロデュースに携わり、2年でメインバリスタを務めるまでに。その間、ドイツのコーヒーカルチャーに触れるなかで、仕事に対する心境にも大きな変化があった。とりわけ、業務分担がはっきりしている日本と比べて、ドイツではバリスタ・トレーナー・ロースター・バイヤーとキャリアがつながっていることに感銘を受けた。「バリスタだけを続けていては進歩がないので、ステップアップするには焙煎の知識や技術が必要と感じました。そのことは海外に行ってみて初めて気がついたこと。それだけでも行ったかいがありましたね」と振り返る。そんな折、幸運にも、東ベルリンにできたばかりのPopulus Coffeeとの縁を得て、ロースターの道へ。小さいながらも、サスティナビリティを明確に示す姿勢と、スペシャルティコーヒーの本来あるべきサイクルを目指す店作りを体感し、本格的に焙煎の仕事に傾倒していった。

繊細な風味はそのままに、親しみやい“普段着の味”

好みの豆が選べるドリップコーヒー600円。気取らない湯呑型のカップは清水焼のオリジナル

ベルリンでの4年半を経て、帰国後は、小川珈琲の先輩でもある、Okaffe Kyotoの岡田さんからの誘いで姉妹店の焙煎士を務め、さらに大阪・吹田のTERRA COFFEE ROASTERSへ移りヘッドロースターとして活躍。ドイツで得た技術と経験をいかんなく発揮し、ユニークな個性を持つスペシャルティコーヒーの醍醐味を伝えてきた。当時から、「インパクトのあるフレーバーが突出すると飲み疲れするので、“もう一杯飲みたい”と思える味わいが理想」と、テイストバランスと心地よい飲み心地を追求。すっとしみ込むような、穏やかなフレーバーと余韻の透明感を引き出す味作りは、山本さんの真骨頂だ。

TERRA COFFEE ROASTERSでの2年を経て、自店のコーヒーで体現するコンセプトは紺碧と玲瓏。「紺碧は深みのある青、玲瓏は美しく照り輝くさま。しっかりと風味の芯はありながら、飲み心地がきれいなコーヒーを表現したい」と山本さん。現在の豆の品ぞろえの中には、ホンジュラスのユアン・フェルナンデス農園、マリオ・モレノ農園など、前職時代に縁を得た生産者の豆もあり、一見、TERRA COFFEE ROASTERSに近いように見えるが、飲んでみると違いは瞭然。たとえば、エチオピア・ケルー・ゴググは、ふっくらと広がる穏やかな酸味と甘い余韻が印象的。何より異なるのは味わいの厚みだ。繊細な風味はそのままに、まろやかさとふっくらしたボディ感が加わり、どこか親しみやすい飲み応えは以前にはなかったもの。価格も含めて、毎日でも飲みたくなる味わいの抱擁感が、新たな店のコンセプトを体現している。

「ベルリンで北欧スタイルのコーヒーと出合って傾倒したので」と、店名は北欧の造語で猫の瞳に映る陽光を意味するSolkattに


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