誰もが安心して売り買いできる“リレーユース”の社会へ!「コメ兵」社長が語る、リユース業界の社会的意義
東京ウォーカー(全国版)
使用しなくなったものをそのまま捨ててしまうのではなく、有用なものを再び活用することを指す「リユース」(再使用)。持続可能な循環型社会形成の基本原則である「リデュース・リユース・リサイクル」(3R)のうち、「リユース」は「リデュース」に次いで優先順位が高く、環境に配慮した取り組みだ。
近年、日本のリユース市場規模は拡大傾向にあり、環境省が報告したデータによると「2009年の1兆1274億円から2022年時点で2兆8976億円にまで増加し、2025年には3兆2500億円に達する見込み」と言われている。
今回は、愛知県名古屋市に本社を構え、全国で中古品の買取・販売を行う株式会社コメ兵(以下、コメ兵)の代表取締役社長の石原卓児さんに、経営方針や右肩上がりのリユース市場を生き抜く戦略について話を聞いた(※役職、肩書は2025年6月10日取材時点の情報)。

リユース会社激戦区の名古屋から全国へ
――御社は1947年に名古屋で創業、今も本社が名古屋にありますが、名古屋という土地柄が企業文化や事業展開にどのような影響を与えていると思いますか?
【石原卓児】名古屋の土地柄が影響しているとは一概には言えませんが、名古屋発のリユース会社は多いと感じます。“名古屋の人は倹約家”とよく言われますし、「いいものを長く使う」そして「使わなくなったら売る」という意識が強いように思いますね。
――名古屋を中心に複数の店舗を構えておられますが、店舗ごとの商品構成や特徴に違いはありますか?
【石原卓児】鑑定士による目利きやサービス品質、お客様への誠実な対応など、基本的な店舗運営のポリシーは共通しています。商品構成は、どんな人がどんなアイテムを売り・買いしているか履歴が残るポイントカードを作り、それをもとに分析して、客層や地域の特性によって変えています。たとえば、郊外の店舗には車で来店される方が多いので、アパレル中心に構成したり、買取に力を入れたりしています。
――名古屋での成功体験を全国展開にどのように活かしてきたのでしょうか?
【石原卓児】2003年に上場し、全国展開を本格化しました。東京の有楽町や新宿で店舗を展開する際、最初は「中古品には興味がない」という方も多く、信頼を築くのが大変でした。ですが、イベントの実施や、地域性をより深く分析したうえでの店舗運営など、コメ兵の土壌を作りながら少しずつ信頼を得ることができました。

――名古屋の企業として、地域社会への貢献という観点で、何か具体的な取り組みはされていますか?
【石原卓児】若い世代にリユースを身近に感じてもらうために、中学生向けに企業見学を実施しているほか、地域のイベントに参加することもあります。たとえば、買い取ったが再販しない真珠を使ってリメイクジュエリーを作る体験の機会を提供したり、古着のセールで得た収益を寄付したりと、地域に根差した取り組みを行っています。
――地元だけでなく、全国でもそうしたイベントをされているんですね。
【石原卓児】名古屋に限らず、さまざまな地域でイベントは行っています。岐阜県高山市で行った買取イベント「KAITORI GO」では、お客様お一人につき500円をKOMEHYOから高山市の観光振興事業に寄附しており、このイベントは一度で終わらず何度も実施しました。こうした活動は弊社社員の提案から始まることも多く、常に地域に喜ばれるような試みを模索しています。
――社員の方からの提案が実行しやすくなる仕組みがあるのでしょうか?
【石原卓児】社員と私の距離感を近くし、社内の風通しをよくするよう心掛けていて、メールなどでイベントのアイデアを直接送ってもらうこともあります。そうしたアイデアを、発起人を中心にそのままひとつのプロジェクトとして進めた経験もあり、現場の声を大事にして、柔軟に取り入れていくことを重視しています。
インバウンド需要にも対応する心斎橋の旗艦店
――2025年6月11日にオープンした大阪・心斎橋の旗艦店「KOMEHYO OSAKA SHINSAIBASHI」は、大阪におけるブランド認知にどのような役割を果たすと考えていますか?
【石原卓児】これまでの店舗で築いた信頼の上に、新しいインパクトのある店舗を追加することで、新規のお客様にも興味を持っていただけると思います。また、心斎橋という通行量の多い場所なので、KOMEHYOの認知を高める効果も期待しています。
――顧客層やニーズなど、大阪の店舗とほかの店舗で異なる特徴はありますか?
【石原卓児】大阪の方はブランド愛が強く、現行品からヴィンテージまでひとつのブランドを長く愛する方が多いように感じます。たとえば、「KOMEHYO OSAKA SHINSAIBASHI」のオープニングセレモニーにも来ていただいた、“シャネル愛”がとても強いハイヒール・モモコさんはその代表のような方ですね。そうしたこだわりを持って、本当に好きなものを追求する方が多い印象です。

――インバウンド需要が高まるなか、「KOMEHYO OSAKA SHINSAIBASHI」には外国人観光客の来店も多くなると予想されますが、そうしたお客様へどのような施策を打ち出していますか?
【石原卓児】海外では、日本の中古品は質が高く、安心して買えるという評価を得ています。日本人は物を丁寧に使う傾向があり、リユース品においても「ジャパンクオリティ」と言われるほどです。海外にある店舗でも日本の店舗と同様の品質を保つことで信頼関係を作り、コメ兵のことを知らなくても物を見てお店に来てもらえるようにしたいと考えています。

――リユースショップ激戦区でもある心斎橋ですが、競合との差別化ポイントは何でしょうか?
【石原卓児】全国から買取した商品の中から、厳選してそのエリアのニーズに合った商品を提供しています。心斎橋には既存店もありますが、そちらもリニューアルオープンを予定しており、より地域の方に求められるようなラインナップにしていく予定です。
――実際に「KOMEHYO OSAKA SHINSAIBASHI」を拝見して、すごいラインナップだなと思いました。特に品ぞろえの豊富さは、他店で見られないくらいです。
【石原卓児】「KOMEHYO OSAKA SHINSAIBASHI」の売上の7割くらいはインバウンドのお客様を見込んでいます。日本のお客様の場合、欲しいものがその場になくても別店舗から取り寄せることが可能ですが、海外のお客様はそうはいかず、その場に商品がないと購入につながりません。だからこそ、“店舗に現物がある”というのが重要になってきます。

基準外品をなくし、社会貢献につなげる
――コロナ禍においては店舗での接客が難しい状況だったと思いますが、非対面型の取り組みはどのようにされていましたか?
【石原卓児】オンライン上での接客強化やコンタクトセンターの設置など、デジタルとリアルの融合を進めました。オンラインだと実物を手に取って見られないので、特に高額な買い物はしづらいです。
【石原卓児】そこで、一人のスタッフが最後までお客様とLINEでやり取りしたり、ビデオ通話を使って実物をリアルタイムで見ていただいたりと、オンラインだからこそ、一対一の細やかな接客を重視しました。ほかにも、予約制でご来店いただき、人との接触機会がなるべく少なくすむようにしました。
――たしかに、リユース品はキズや汚れがないか自分の目で見て確かめたいですよね。今後、さらに強化したいオンライン施策はありますか?
【石原卓児】自社サイトの利便性向上や、海外からのアクセスにも対応できるユーザビリティなどが課題です。まだリユースを知らない層にも気づいてもらえるような施策を考えています。
――一方のリアル店舗についても教えてください。今後の新規出店はどのような戦略を考えていますか?
【石原卓児】旗艦店を年に1店舗、買取専門店を20〜30店舗のペースで出店を検討中です。新店舗は、顧客データなどを分析しながら、チャンスを見極めながら地域ごとに最適な形で展開しています。

――リユース企業として、社会に提供できる価値についてどのように考えていますか?
【石原卓児】売り・買いの中継点となる我々のビジネスモデル自体がサステナブルであり、基準外品の流通を防ぐなどの社会貢献性もあると考えています。また、自社だけで情報を独り占めしてしまうのではなく、業界全体で情報を共有して基準外品を撲滅していきたいと考えています。
――実際にどのような取り組みを行っていますか?
【石原卓児】AIを導入したり、鑑定士のスキルを共有したりして、買取・販売する商品をより厳しく選別しています。そうすることで、販売スタッフも安心して商品を売ることができ、お客様と円滑にコミュニケーションが取れるので、よりよい接客にもつながります。さらに、社員が成長できる環境を整え、長く働いてもらうことも社会的価値のひとつであると思います。
――社員の育成について、どのようなことを大切にしていますか?
【石原卓児】鑑定士は教育が必須の仕事です。何も知らない状態で入社した社員が自然に成長することはあり得ないので、長年培ったノウハウを伝えて鑑定のコツを若手に教えていくことで成長を促します。教育チームによる伴走型の育成、現場でのOJT、データを活かした相場感の共有なども行い、商品への情熱やスキルを磨くことができるように環境を整えています。

――コメ兵は「リレーユース」を提唱されていますが、あらためて石原社長が考える「リレーユース」について教えてください。
【石原卓児】「リレーユース」とは、「モノは人から人へと伝承(リレー)され、有効に活用(ユース)されてこそ、その使命を全うする」という弊社独自の考え方です。中古品と言うと「ダウンサイクル」な印象があり、少しネガティブに捉えられがちですが、より価値を高める「アップサイクル」で伝承していくことでサステナブルな社会形成に貢献できると考えます。
――リユース業界の現状と、未来についてどのようにお考えですか?
【石原卓児】以前よりもリユースが身近になってきている傾向があり、「買い物は直営店でなければならない」というイメージから変わってきています。弊社のような企業だけでなく、フリマサイトやオークションサイトといったサービスも数多く展開されています。
【石原卓児】そのため、業界全体の透明性や正しい意味でリユースが広がることを大切にすべきだと考えています。基準外品を買ったり売ったりしないために、お客様にはうまくコメ兵を活用していただきたいです。「買取カウンターに持ち込んだから、必ず売らないといけない」といったことはないので、「ちょっと鑑定してもらおう」くらいの気軽さで来てください。我々が中継点となることで基準外品の流通を防ぎ、基準外品によって悲しむ人を減らしていけたらと思っています。
取材=浅野祐介、文=織田繭(にげば企画)
撮影=福羅広幸
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