コーヒーで旅する日本/関東編|おいしさは最後の一滴まで。積み重ねた技術で全国にファンを拡大する人気ロースター「GLAUBELL COFFEE」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。

東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。店主や店長たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

世田谷代田駅西口から徒歩2分ほどで行ける。一般客から飲食店関係者など客層はさまざま

第12回の東京都世田谷区にある「GLAUBELL COFFEE(グラウベルコーヒー)」は、店主の狩野知代さんが営むロースタリー。週に2日のみの営業で豆売りがメインだが、喫茶スペースとしてカウンター席が設けられている。店は今年で9年目だが、自家焙煎の豆の販売は約20年の歴史があり、彼女が手がけた豆の卸し先はいまや全国に広がる。店舗ではライター・エディターの藤原さんとともに2人で店を切り盛りし、コーヒーの魅力を発信している。

藤原ゆきえさん(写真左)、店主の狩野知代さん(写真右)

Profile|狩野知代(かの・ともよ)
北海道札幌市生まれ。2002年に地元のイベントに参加し、屋台で自家焙煎の一杯を提供したのが本格的にコーヒーを始めるきっかけ。自家焙煎や抽出などコーヒーに関する技術は独学で極め、自身のコーヒースタイルを確立。10年以上、豆の卸しや一般知識や開業をサポートする講座を開く活動を行い、2016年に「GLAUBELL COFFEE」を開業した。共著『休みの日には、コーヒーを淹れよう。』(狩野知代・藤原ゆきえ)、『COFFEE TIME BOOK』(川口葉子・藤原ゆきえ・狩野知代)など。

小さな屋台から始まった日本屈指のロースター

同じ産地でも処理方法の違う豆がそろうので、飲み比べも楽しい

もともとは趣味で焙煎をするほどコーヒーを愛してやまない狩野さん。いまやコーヒー豆の卸しとして全国各地に自慢の商品を届ける人気のロースターだが、その歴史を遡ると幼少期からコーヒーは身近な存在で、始まりは“小さな屋台”からだった。

「故郷の北海道では深煎りコーヒーをホットで飲むことが文化みたいにあったんです。父もよく飲んでいて、小学生のころによく豆を買いに行っていましたよ。近所のコーヒー屋で目の前で豆を挽く様子を見ていて、子どもながらにコーヒーの魅力に触れていたんだと思います。大人になって結婚を機に上京してもコーヒー好きはそのまま。当時は趣味の範囲でしたが、自宅で焙煎して楽しんでいたほどです」

「そんななか2002年に知り合いからお声がかかって、地元のイベントに合わせてコーヒー屋台を出すことになったんです。もちろん自分で焼いた豆を抽出して提供するのは初めて。そこが私のコーヒー人生の始まりですね」

2025年に9周年を迎えたことを記念し、ZINEを出版

店は1カ月だけの簡易的な営業だったが、狩野さんにとっては転期となったできごと。また現在、店のサポートをしている藤原さんと出会ったのもこのとき。

「最初はお客さんとしてきてくれた藤原さん。彼女は編集者で、2005年に共著『休みの日には、コーヒーを淹れよう。』を出すことができたんです。まだお店も出していないときでしたけど、この本がきっかけで私の存在を広く知ってもらえることに。当時はコーヒーの本があまりなかったのもあって、多くの人の目に留まったんだと思います。それがきっかけで、いろんな雑誌や新聞で取材していただいたりもして、さらに口コミでも広がっていって。それから豆の卸し、オンラインショップでの販売を開始。自家焙煎の豆が認められ、本格的なコーヒー屋としてのスタートとなりました」

豆はできるだけ現地に出向き、信頼できる生産者、エクスポーターからのみ仕入れる

「自家焙煎の豆を販売するかたわら、焙煎や抽出、開業に関する知識を伝える講座を開いていたのもこの時期。この講座をきっかけに開業された方がいたり、コーヒー業界の方々とのつながりも大きくなっていきました。またこの活動を続けながらも、勉強を続けていたので、さらに知識が深まり、技術を向上させられたと思います」

「知識を深めたいと思ったのは、2000年以降に普及し始めたスペシャルティコーヒーの存在があったから。スペシャルティコーヒーについて勉強したいと考え、スペシャルティコーヒー協会が主催するカッピングセミナーに通ってみたんです。そこではコーヒーをしっかり学べたのはもちろん、『丸山珈琲』の丸山さんをはじめ、コーヒー業界の人たちとの出会いがあり、それがとても刺激に。自分が独学でやってきたことが正しかったのかを確かめることができましたね。知識と技術を今まで以上に深めることで、自分のコーヒースタイルが確立できたので、重要な時期だったと感じています」

抽出の技術も長年試行錯誤を重ね、身に付けた努力の賜物

豆の生産国へ出向きはじめたのも、コーヒー業界の人たちとの出会いがあったから。現地の生産者たちと話し、豆の生産や処理方法を直接見て、豆のことをより詳しく理解できたと語る狩野さん。

メキシコやコスタリカ、エチオピアなど世界各国を巡り、仕入れに対して信頼できる生産者と出会えたこと。そして当時はハニープロセスをはじめ、生産処理方法が多様化してきた時代でもあったため、その知識をいち早く知れたこと。素材ありきのコーヒーづくりの要となる、豆を見極める力を高めるきっかけとなったできごとばかりだった。

閑静なエリアに店を構える。ゆっくりとコーヒーに向き合える落ち着いた空間が魅力

豆やグッズを販売。コーヒーの基礎から教えてくれるので、初心者も気兼ねなく立ち寄れる

豆の販売を続けること約11年、「自分の店を持ちたい」という気持ちが芽生えた狩野さん。なかなかタイミングがつかめずにいたが、藤原さんの後押しもあり、2016年8月に無事に開業を果たした。コーヒー豆や本、グッズが並び、店内にはカウンター2席を設置している。

厳選した豆を活かし、香り立つ珠玉のコーヒーに

自宅に設置した焙煎機。目指すのは、おかわりしたいほどおいしいコーヒー

「お店では豆の販売とコーヒーの提供を行い、自宅を焙煎所としています。コーヒーづくりで大事なのは素材。焙煎の前にまずは良質な豆を仕入れることが重要だと考えています。そしてそれぞれの豆の個性を判断して、それぞれの豆のよさを最大限引き出せる焼き方を施すので、自ずと浅煎りから深煎りまでレンジは幅広くなります。そしてすべての豆に対して重視しているのが、香りをしっかりと出すこと。たとえば同じエチオピア産の豆でも土地、処理方法の違いで特徴が変わってくるので、焼き方も違ってきますよね。火の入れ方など細かく調整しながら香りを出すように焼いていますが、感覚的なところもあって、そこは長年トライ&エラーを繰り返して身に付けた技術が物を言うのかなと思っています」

シングルは約9種類。特に中深煎りの豆の種類は大きく変わるので、いつ来ても新しい豆と出合える

豆の種類は常時10種類ほど。取材時はコロンビアやグアテマラ、ブルンジなどの豆がそろっていたが、時期ごとに異なるラインナップとなっている。そのなかでエチオピア産の豆は定番として置かれている。エチオピアだけでもナチュラル、ウォッシュド、ハニープロセスと処理方法の異なる3種類をそろえるなど、豆ごとの特徴を捉えた狩野さんならではのラインナップだ。

ブレンドはハウスブレンド「BLEND代田」をはじめ、1〜2種類。ほかは豆本来の風味を実感できるようにシングルオリジンをそろえている。

【写真】「TORCH Mountain Dripper」でハンドドリップ。お湯の抜けがよく、豆の風味をストレートに出せる

「徳之島コーヒー」(HOT1200円)。すっきりと清涼感のある飲み口が特徴

店内では販売する豆と同様、約10種類のコーヒーを用意している。なかでも人気なのは豆の販売はないものの店内で注文ができる「徳之島コーヒー」(HOT1200円)。徳之島の吉玉(よしたま)農園で完全無農薬、手摘みで収穫され、ウォッシュドで処理された国産豆を使った一杯だ。収穫量が少ないためほぼ出回らず、他店では味わえないという希少なもの。徳之島産の黒糖をかじりながら堪能するのがおすすめの味わい方。

店名は古代ギリシャ語でフクロウを意味する「GLAUX」と楽器の「BELL」を合わせた造語。ロゴにはGLAUXを採用

それぞれの豆が持つ個性を活かし、芳しい香り、味わいに満ちたコーヒー。狩野さんが追求し続ける“飲み干したい”ほどのおいしさは、この一杯を飲めば実感できるはずだ。

週末だけオープンするロースタリーで、新たなコーヒーのおいしさを体感

狩野さんレコメンドのコーヒーショップは「VIVA COFFEE」

「東京都板橋区にある『VIVA COFFEE(ビバ コーヒー)』。店主の中川さんとは『RMTS(ローストマスターズチームセッション)』に参加したときのチームメイトとして出会ったコーヒー仲間です。もともとは『ドトールコーヒー』でデザイナーをしていらっしゃいました。実際にお話しすると、とても気さくでマニアな一面が垣間見えておもしろい方ですね。お店は角打ちスタイルで営業するなどユニークな取り組みでコーヒーの楽しさを教えてくれる、おすすめの一店です」(狩野さん)

【「GLAUBELL COFFEE」のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 1キロ、5キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(TORCH Mountain Dripper)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり(550円〜)
●豆の販売/100グラム850円〜

取材・文/GAKU(のららいと)
撮影/大野博之(FAKE.)

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