【スターバックス×デフリンピック】多様な人が集うポップアップストア
東京ウォーカー(全国版)
2025年11月15日~26日に日本で初めて開催された、聞こえない・聞こえにくいアスリートによる国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」。大会の運営拠点であり来場者の交流の場でもある「デフリンピックスクエア」において、12日間にわたりスターバックスのポップアップストアが開催され、多くの来場者でにぎわった。ここでの取り組みと、さまざまなことを感じ、学んだパートナー(従業員)たちの声を紹介する。
多様な人たちが出会う場所
世界79の国・地域から約2800人の選手が参加した、東京2025デフリンピック。会場の一角に設けられたポップアップストアは、東京を中心に各地から集まったパートナーによって運営された。手話を第一言語とする人もいれば、そうでない人もいる。来店客は選手や大会関係者、応援に訪れた人など、聴覚に障がいがある人もない人も、外国語や各国の手話を母語とする人も…。まさに、多様な人々が集う交流の場所となった。
カウンターに並び、笑顔でコーヒーを配るパートナーたち。手話はもちろん、ジェスチャー、時には筆談なども交えて来店客と積極的にコミュニケーションをとっていた。それは、言語や文化の違いを超えて、一杯のコーヒーで人と人がつながる瞬間のようだった。
ポップアップストアでは、コーヒーのテイスティングのほか、アスリートへの応援メッセージボードを設置。「いっぱい輝いてください」「手話を使う使わない関係なく、応援します。分断しません」「頑張っている姿が美しい!ありがとう」など、来場者から集まった6000件以上もの温かな言葉であふれていた。
大阪のスターバックスの店舗パートナーであり、男子バレーボール日本代表として大会に出場した明山哲さんは、期間中よく訪れていたそうで、「メッセージを読んで一緒に頑張ろうという気持ちになりました」と語り、大会を通じてチームの中で成長でき、満足いく経験になったと振り返っていた。
一人ひとりが輝ける場所を全国へ
デフリンピックの大会ビジョンのひとつは、「誰もが個性を活かし力を発揮できる共生社会の実現」。スターバックスのインクルージョン&ダイバーシティの考え方「NO FILTER」にも、障がいの有無や人種、性別、価値観などの違いを超えて、誰もが自分らしくいられる社会を目指そうという想いが込められている。
「この2つが一致しているので、協力できるのは意味のある活動だと思いました」
参加を決めた理由をこう話すのは、ポップアップストアのストアマネージャー(店長)のひとり、佐藤さんだ。手話を第一言語としたスターバックスのサイニングストア・nonowa国立店から参加した佐藤さんは、ろう者であり日本手話を母語としている。
「共生社会を考えてくれる人を増やしたいという想いを持って参加し、『いっしょに歩みましょう』というストアビジョンをみんなで一緒に作りました。各地からパートナーが集まり、ほぼ毎日メンバーが入れ替わるので、今回の経験で感じたことを話し合い、お客様との交流を通じて得た学びをそれぞれの店舗に持ち帰り共有するようにしました」
そしてエリアを超えてパートナーたちと働く日々は、佐藤さんにとってこれまでにない貴重な経験となり、「私がスターバックスの仕事を続けられたのは、パートナー一人ひとりが輝ける場所づくりがあったから。これからは自分のエリアだけでなく、全国のお店で個々のパートナーが成長できる環境づくりをしていきたいと思います」と語った。
みんなが同じように理解できる環境づくりを
スターバックス コーヒー 神宮前6丁目店の坂上さんも、ポップアップストアでストアマネージャーを務めた。この場所では、スポーツだけでなく、手話を語る方々のコミュニティの温かさを感じることができたと語る。
「パートナーとお客様のつながりはもちろん、お客様同士の交流を求めて来場される方も多く、ここで久しぶりの再会を果たしたという声もよく聞かれました」
そんなつながりがこの先も続くようにと願い、当日働くパートナーの名前と店舗を紹介するボードを設置し、ネームバッジにも店舗名を入れる工夫を凝らした。
ここでの日々は、聴者である坂上さんにとっても大きな学びになったようだ。神宮前6丁目店には、3人の聴覚障がいのあるパートナーがいる。
「普段の私は聞こえるパートナーに囲まれていますが、今回は、聞こえるパートナーが自分だけという瞬間も多くありました。手話がどこまで伝わっているか不安になったり、ろう者同士が手話で会話している時に話しかけるタイミングを迷ったりすることもありました」
自分が働く店舗のろう者のパートナーも、こうした瞬間を感じることがあるのかもしれない―――そう感じた坂上さん。
「誰も取り残されない環境をつくることが大切だと感じました。全員が同じ理解度を目指し、一緒に歩んでいく。個々をより理解できるよう心がけていきたいと思います」
パートナーがつなぐ、交流と未来への希望
こうしたストアマネージャーたちの気づきと同様に、ここでの体験はほかのパートナーたちにも新たな学びや希望をもたらしたようだ。
デフリンピックに関わりたいと参加を決めた、スターバックス コーヒー 新橋駅前店の松原さん。新橋駅前店では後方支援を担当するが、ポップアップストアではコーヒーを配り、手話で会話し、来店客との交流を積極的に楽しんでいた。そして、手話カフェを開いているパートナーの体験談など仲間から刺激を受け、「ここで学んだことを活かし、自分の店でも手話カフェを開けたら」と前向きな気持ちになったと語った。
全国の仲間と手話でつながりたいと参加した、スターバックス コーヒー 筑波大学中央図書館店の渡邉さん。ポップアップストアでは聴者が手話で伝えようとする姿に感動し、自分も手話で最高のスターバックス体験を届けたいと思ったそうだ。外国からの来店客とも身振りや表情で心を通わせ、「日本のスターバックスに行きたいと言っていただけた」とうれしそうに話してくれた。
12日間にわたるポップアップストアは大盛況のうちに幕を閉じ、集まった応援メッセージは、デフリンピック準備運営本部のGMO兼大会統括部長の北島隆さんへ贈呈された。
北島さんはパートナーたちが生き生きと働く姿に、希望を感じたと語る。
「子どもに夢を与えることが、大きなテーマでした。たとえば、障がいのあるお子さんを持つ親の不安を払拭できるのは、スターバックスのパートナーさんの笑顔です。親が希望を持つことが大切で、その希望を一杯のコーヒーで届けられた。スターバックスと一緒に取り組めて心からよかったと思っています」
みんなが同じようにコーヒーを楽しみ、時間をわかち合ったポップアップストア。一杯のコーヒーから生まれたつながりや、パートナーの笑顔が育んだ希望は、未来へと少しずつ広がっていくに違いない。
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