船での配達に、島民の“見守り”も…宮城・浦戸諸島唯一の郵便局に一日密着!

東京ウォーカー(全国版)

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南北に長く、気候や地形など多様な風土を有する日本。そんな環境のなか、日本郵便の配達員たちは、確実に郵便物を届ける“ユニバーサルサービス”を維持するべく、日々工夫や努力を重ねて配達を行っている。

本記事では、そうした配達員の中から、宮城・浦戸諸島で郵便サービスを提供する浦戸郵便局の結城健文さんに注目。配送に船を使う特殊な環境で、安全に郵便物を届けるためにどのような取り組みをしているのだろうか。

浦戸諸島唯一の郵便局で課長代理を務める結城健文さん


通勤手段は船…4つの島を巡って郵便物を配達!

宮城県塩竈市の松島湾の湾口部に位置する浦戸諸島は、桂島、野々島、寒風沢島、朴島の4島からなる離島(有人島)。252名、160世帯(2026年1月31日時点)の人々が暮らしている。

そんな浦戸諸島の桂島にある浦戸郵便局は、4島で唯一の郵便局であり、課長代理を務める結城健文さんは本土の塩竈から毎日船で通勤。一日300件近い郵便物を、4つの島々を回って届けている。なかにはバイクでは入れず、徒歩で届けている地域もあるという。

【写真】浦戸諸島の桂島にある浦戸郵便局

バイクが入れないエリアでは、徒歩で配達を行う


勤続20年をきっかけに離島への異動を決意

もともとは塩釜郵便局で20年以上業務に従事してきた結城さん。仕事にやりがいは感じていたものの、「20年を迎えたタイミングで新しいことに挑戦したい」と思い、異動を希望。その際、提案されたのが浦戸郵便局だったという。だが、交通手段に船を利用する点が気になり、最初は戸惑いもあったと話す。

「もともとは車で移動できる圏内を想定していたんです。1時間くらいで通える場所だったらいいな…と考えていたんですけど、蓋を開けたら“船に乗る時間も含めて1時間ちょっと”という感じで。提案されたときは、『どうしたものかな…』というのが正直な感想でした」

「というのも、船に乗ること自体、小学校の遠足以来なので約40年ぶり。『船酔い大丈夫かな…』と不安も多々あったんですけど、実際に乗ってみたらそういったこともなく、これなら何とかなるかなと。そこから『せっかくの機会だし、やってみるか』と考えを切り替え、異動を決意した次第です」

マリンゲート塩釜から、市営汽船で浦戸諸島に出勤


ちなみに結城さんは、以前から浦戸地域には縁があったそうで、異動後すぐに地域に溶け込めたという。

「実は、私の祖母が塩竈で理髪店を営んでいて。浦戸の方がよく通ってくださっていたんです。なので間接的に私のことを知っているという方が多くて、赴任当初はしょっちゅう『○○の孫がこんなに大きくなったのか』と言われていました(笑)」

通勤中の結城さん


“地域の見守り”にもやりがいを感じる日々

一見するとのどかで素朴な雰囲気の浦戸諸島だが、結城さんによると、業務において「昨日と一緒」と感じる日は一日もないのだとか。

各島への配送に船を利用しているため、天候や波の影響で業務の段取りが毎日微妙に変化するそうで、“日々、状況に合わせて配達方法を考えなければならない”という環境には、それまでにないやりがいを感じているようだ。

次の島に向かうための渡し船が到着


配達業に加え、もう一つ結城さんがやりがいを感じているのが、“地域の見守り”だという。

「郵便局の仕事は配達だけでなく、実は“地域の見守り”というのも兼ねているんですね。うちだと塩竈市と提携して、異常があれば市のブルーセンター(浦戸諸島開発総合センター)に報告する体制になっているんです」

「浦戸諸島はご高齢の方が多いので、ただ郵便物をお届けするだけでなく、お伺いした際は必ず玄関から声をかけて、コミュニケーションをとるようにしています。声掛けをして、普段なら返事があるのになんの反応もなかったり、外出されている様子はなく、ずっと家にはいらっしゃるようなのに反応がなかったり、『これはちょっと心配だな』と思ったら出張所に連絡するくらいなんですけど、『少しでも地域のお役に立てれば』と取り組ませてもらっています。これも仕事へのやりがいになっていますね」

配達時には玄関から声をかけて、コミュニケーションをとるよう心掛けている

地元の人々との交流を通して“地域の見守り”にも貢献


取材中も、結城さんが地元住民と交流する場面が何度かあった。その際、こうした“地域の見守り”に対する取り組みについて住民に話を聞いたところ、「島には若い人がほとんどいないから、こうやって声をかけてくれてうれしい」「一日中、誰とも会わない日もあるから。結城さんの声掛けが毎日の楽しみになっています」と教えてくれた。

配達中に地元住民とコミュニケーションをとるシーンも


船の欠航、大型荷物の配達には毎回大苦戦!

結城さんに、浦戸諸島での業務の中で特に大変なことを質問したところ、やはり“配送が天候に大きく左右される”という点には毎回悩まされているようだ。

特に冬場は寒風沢島~野々島間の海が荒れやすく、視界不良や波の影響で渡し船が欠航になることもしばしば。その場合は代替で汽船を利用するなど別の交通手段を講じるのだが、スケジュールを船の運航時間に合わせなければならず、配送時間が大幅に遅れてしまうという。

また、過去には地震による津波警報で数時間島から出られず、真冬の寒い待合所での待機を余儀なくされたこともあったそうで、結城さんは「3年間の業務の中であれが一番キツかったですね」と振り返った。

浦戸郵便局での業務はやりがいもあるが、大変だと感じることも多々あるという


そしてもう1点、バイクでは運送が困難な大型の荷物が届いたときも大変なのだとか。

「郵便局のバイクは排気量が50ccで、法的最大積載量は30キロまでなんです。ただ、配送をしていると30キロを超えることも結構あって。そういうときは窓口担当のスタッフにも協力してもらって、いったん、人力で桟橋まで荷物を運んで船に乗せてもらって、それを次の島の私が受け取って、手で持って運ぶ…ということをしています」

「30キロの米だったり、2ケース分の飲料だったりと、お届けするものはさまざまですが、特に大変なのは大量の飼料の配送ですね。寒風沢には田んぼがあるので、一袋20キロの飼料が大量に届くことがあって。一度に200キロくらいの飼料を台車に積んで、何往復もして指示されている場所まで運んでいます」

郵便物を抱え、次の島に到着

バイクには最大で30キロまでの郵便物を積むことができる


郵便局が持つ地域インフラとしての機能に期待

浦戸郵便局は、ATMや窓口利用に加え、地元住民の“交流の場”としての側面もある。月に一回「お客様感謝デー」を実施し、来局者に野菜ジュースやインスタント味噌汁などを配布。局の利用促進と同時に、住民の安否確認ができる場にもなっており、結城さんは「こうした使われ方も地域貢献に役立っている」と考える。

朝礼の様子。浦戸郵便局には地元住民の“交流の場”としての側面も


「島では、一日中誰とも話さないで過ごす高齢者も多いので、窓口での受付時や配達時のちょっとした会話でもすごく喜んでもらえて。その際は『具合どうなの?』『あんばいどうなの?』といった感じで、深く踏み込まず、地域に馴染んだ表現で相手の様子をそっと伺うようにしています」

「あまり深く聞いてしまうと相手も言いにくくなってしまうことがあるので、あえて曖昧な感じに聞いて、話したいところまで話してもらって。お顔を見ながら話せば、それだけでも体調とかはなんとなくわかるので、これもまた“地域の見守り”の一環かなと思っています」

寒風沢島にて、島民に直接郵便物を手渡す


2026年4月で、浦戸諸島での勤務が4年目になる結城さん。最後に、島民への想いを聞いた。

「3年前に初めて島にやってきたとき、島民の皆さんは私のことを温かく迎え入れてくれました。どなたも本当に優しい方ばかりなので、これからも元気でいていただきたいです。実際のところ、私の両親と同じ年齢の方がほとんどなので、こうやって島を回り、お話をしていると、自分の両親と重なることがよくあります。皆さんにはいつまでも元気でいてもらいたいので、配達も見守りも、これからもずっと続けていきたいです」

さまざまな使命を持ちながら、結城さんは今日も安全に荷物を届ける


取材・文・撮影=ソムタム田井

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