第61回 名古屋・岩塚の「とんかつオゼキ 鈍池店」。名物の“焼きとんかつ”を味わう

東海ウォーカー

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瓦屋根の堂々とした店構え。暖簾をくぐって店内へ入るphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


油で揚げず、鉄板の上で香ばしく焼き上げる“焼きとんかつ”。戦後間もなく、独自の調理法でこのトンカツを開発したのが「とんかつオゼキ」の初代店主だ。その味を確かめるべく、とんかつオゼキ 鈍池店へと足を運んだ。

創業3代にわたり受け継がれる焼きとんかつ


鉄板で焼き上げる、「焼きとんかつ」(定食1700円)。写真はソースで、味噌も選べるphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


とんかつオゼキの創業は1954(昭和29)年。とんかつオゼキ 鈍池店の店主である、尾関さんの祖父が創業者だ。尾関さんによると、「戦前、祖父はホテルのなかにある洋食レストランで働いていたそうです。戦争が終わり、名古屋市中村区の大門付近で飲食店を開業したのが店の始まり」と説明する。創業直後は和食や洋食など、今で言う定食店のような業態で営業。その後、かつての経験を生かして洋食一本に絞り、名物の焼きとんかつを開発したと言う。

鉄板で焼き上げたトンカツ。衣からラードの香りが漂うphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


焼きとんかつを例えるなら、フライパンに少量の油を敷いて作る「カツレツ」に似ている。一方でとんかつオゼキは、フライパンではなく大きな鉄板を使用。そこにラードを敷き、知多半島産の豚肉をきめの細かい衣に包んでじっくりと焼く。油で揚げるよりも食感はソフトに、かつ衣が薄いため肉の旨味がダイレクトに伝わってくる。「鉄板で焼くので、普通のとんかつに使う衣だとすぐに焦げてしまいます。だからパン粉はきめ細かいものを使いますし、糖分の少ないイギリスパンを採用しています」と尾関さん。

【写真を見る】等間隔にテーブルが配された定食店のような雰囲気。まさにノルタルジーな眺めだphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


焼きとんかつはソースまたは味噌から選べるが、「初めての人はぜひソースを」と尾関さんはおすすめする。そのコク深いトンカツソースだけをかけて食べても旨いが、注目してほしいのは横に添えられた自家製タルタルソース。これをトンカツソースと絡めて味わえば、 “至福”とも思える濃厚な味わいが口いっぱいに広がる。「お好み焼きだと、ソースにマヨネーズをブレンドして食べることがありますよね?その発想を、祖父は焼きとんかつを開発した当初に実践していたんです」。

目移りしてしまう多彩な洋食メニュー


「オゼキ自慢のドリア」(920円)。ホワイトソースのおいしさは洋食店としての実力を示すphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


名物は焼きとんかつだが、とんかつオゼキの魅力はそれだけではない。「ハンバーグステーキ」(870円)や「エビフライ」(1500円)、「オムレツ」(560円)など、メニューに並ぶ多彩な洋食。そのどれもが、手間暇を惜しまない昔ながらの製法で調理されている。「子連れでいらっしゃった場合、焼きとんかつしか選択肢がないと子どもに優しくないですよね。ひと月に何度も来てくれる常連さんだって同じ。たくさんの料理を用意して飽きさせないことも、長く店を続ける秘訣だと思いますよ」。

「カニコロッケ」(1080円)。カニやマッシュルームを衣で包み、油で揚げたphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


「オゼキ自慢のドリア」(920円)や「カニコロッケ」(1080円)をはじめ、洋食メニューの多くは創業時のレシピを忠実に守る。「ぼくに料理を教えてくれたのは祖父のお弟子さんでした。“昔ながら”の人でね、あまりきちんとは教えてくれなかったのを覚えています」と尾関さんは回想する。チーフがレシピをメモしたノートをこっそり読んだり、厨房の様子を観察して調理のタイミングを覚えたりして、少しずつレパートリーを増やしていったそう。「今では時代錯誤ですよね(笑)。けれど、そうやって体で覚えた料理を食べてもらって『おいしい』と言われるのは本当にうれしいです」。

作り手の温もりが伝わる、とんかつオゼキの料理


尾関さん(右から2番目)を囲む従業員の面々。アットホームさが伝わってくるphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


とんかつオゼキは昔も今も、大人数の従業員が厨房で作業するスタイル。故にここで修業して、個々に独立を目指すという料理人も多かったそう。「昔からたくさんの人が店に関わってくれていました。今の従業員の中には、祖父のお弟子さんの息子もいるんですよ」と尾関さんは続ける。

入り口すぐにテーブル席、奥には座敷席と個室があり、幅広い客層に対応できそうだphoto by 古川寛二/(C)KADOKAWA


親子何代にもわたって店に関わるのは、なにも従業員だけではない。「おじいちゃんやおばあちゃんが大きくなった孫を連れて、『昔もこの席で食べていたんだよ』と教えているのを見ると温かい気持ちになりますね」と尾関さんは頬を緩める。親、子、孫と、とんかつオゼキには何代にもわたって通う常連客が多い。尾関さんの抱く“温かい気持ち”は、この店の料理にしっかり映し出されているということだろう。

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