バナナが1万7500円?スキンケアブランド「The Ordinary」が問いかける“商品の本当の価値”に迫る
東京ウォーカー(全国版)
物を買うとき、何を基準に選んでいるだろうか。ブランドの知名度やパッケージ、商品のイメージ、配合されている成分や期待できる機能など、そこにはさまざまな決め手があるはずだ。
昨今は、SNSや口コミサイトを通じて、商品の成分や機能を自ら調べ、納得したうえで購入する消費者が増えている。そんな時代にあらためて考えたいのが、「商品の価格は何によって決まるのか」ということだ。
このテーマにユニークな方法で切り込んだのが、スキンケアブランド「The Ordinary(オーディナリー)」。2026年10月8日~10月11日に東京で開催された同ブランドのイベント「The Markup Marche(価格のひみつマルシェ)」では、バナナに“1万7500円”という価格を提示していた。身近な食品を高級スキンケア商品さながらに演出することで、商品そのものではなく、「広告やマーケティングによって生まれるイメージにもお金を払っているのではないか」と問いかけた。
なぜスキンケアブランドが食品を通じて価格の問題を提起したのか。その背景には、成分の透明性を重視してきたThe Ordinaryならではの考え方があった。
成分を知って選ぶ時代に問われる「価格の透明性」とは?
The Ordinaryは、配合成分を明確に伝えることで、ブランドイメージだけでなく「商品の中身を基準に選ぶ」という考え方を提案してきたブランドだ。
スキンケア商品を選ぶ際、ブランドイメージや広告の印象だけでなく、「ナイアシンアミド」や「レチノール」といった成分に着目する動きが広がっていることから、商品名にも成分名を取り入れ、消費者が何をどう使うのかを想定して商品を選びやすくしている。SNSで成分の特徴を調べたり、口コミを比較したりしながら自分の肌悩みや目的に合う商品を探す“成分買い”も、今の時代ならではの消費行動の一つだ。
商品の中身の次に気になるのは価格ではないだろうか。同じような成分を配合していても、商品によって価格は大きく異なる。その差は、配合成分や研究開発、品質管理などに由来するものなのか。それとも、ブランドイメージやパッケージ、広告などによって生まれるものなのか。
もちろん、化粧品の価格は単一の要素だけで決まるわけではない。原材料費や製造費、研究開発費、流通費など、さまざまな要素が関係する。「The Markup Marche(価格のひみつマルシェ)」が投げかけたのは、そうした価格の背景に目を向け、商品に付けられた価格とその価値を考えてみることだ。
成分の透明性を大切にしてきたブランドが、今度は価格の透明性に目を向ける。そこに、同イベントの狙いがあるという。
バナナが1万7500円?マーケティングの手法を食品に応用
同イベントの会場に並んだのは、バナナやアボカドなど、普段の生活で見慣れた食品たち。ただし、その見せ方は一般的な青果売り場とは大きく異なる。高級品を思わせるネーミングやパッケージ、マーケティング表現を取り入れ、バナナには“1万7500円”という価格を提示した。
ここでポイントとなるのが、商品を魅力的に見せるための表現だ。バナナは「天然由来・魔法のエナジーチャージバー(All-Natural Magical Energy-Boosting Bar)」、オレンジは「輝きチャージ ビタミン C カプセル(Glow-Amplifying Vitamin C Capsule)」、アボカドは「100% 天然由来・ツヤを高める活力アップカプセル(100% Natural Glow-Enhancing Vitality Orb)」、日本限定で展示されたサツマイモは「複合炭水化物・うるおいチャージ コンプレックス(Complex Carbohydrate Hydration Matrix)」と、マーケティングの手法で見られる訴求表現が加えられていた。
こうした「見せ方」による価格や印象の変化を体験できるのが、会場内のゲーム「追加オプション売り場」。アボカドにマーケティング表現や付加価値を加えていくと、価格がどのように上昇するのかを体験できる。普段はスキンケアアイテムのパッケージで目にする表現を身近な食品に置き換えることで、商品そのものは変わらなくても、受ける印象や価格が変わることを実感できる仕組みになっている。
もちろん、ネーミングやパッケージ、広告は、商品の特徴を伝え、消費者に魅力を感じてもらうために重要な役割を果たす。一方で、そうした表現が加わったとき、私たちは商品そのものの価値と、商品を魅力的に見せるための演出を区別できているのだろうか。
同イベントは、商品を購入する際、何に価値を感じ、何にお金を払っているのかをあらためて考える機会を提供した。
商品の価値はブランドだけが決めるものではない
商品を販売するうえで、商品の特徴を伝え、消費者に魅力を感じてもらうためのマーケティング活動には、当然ながら意味がある。
しかし、情報があふれる現代では、消費者がブランドから伝えられた情報をそのまま受け取るだけでなく、自ら調べ、比較し、納得して購入する。こうした環境では、「なぜこの商品なのか」「なぜこの価格なのか」を伝えることも、ブランドにとって重要になっていくはずだ。
「この商品にはどのような価値があるのか」、そして「自分は何に対してお金を払っているのか」。「The Markup Marche(価格のひみつマルシェ)」で投げかけられた問いは、日々の買い物にも通じる。The Ordinaryの試みは、ブランドと消費者の関係を考えるきっかけの一つになりそうだ。
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