水族館プロデューサーに聞く、消える水族館と伸びる水族館を分けるもの

東京ウォーカー(全国版)

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水族館のメディア戦略


中村さんは水族館のメディア戦略の重要性を語る


――水族館に人を集める上で、軸にすべきことはなんなのでしょうか。

「水族館そのものが目立つことです。そのためには、他の水族館ではやっていないような取り組みや、水族館がその場所にある必然性が感じられる展示が必要になります」

――規模の小さい水族館ではなかなか難しいようにも思えますが。

「規模の大小はあまり関係ないんです。私がプロデュースした山の水族館は北海道の温泉街にある小さな水族館ですが、『北の大地の水族館』と別名をつけ、北海道の寒さや大地を全面に出したことで人気の水族館となりました。重要なのは施設の大きさではなくメディアが取り扱おうとするか、だからです」

――特色を生かした話題作りができれば集客は見込めるということでしょうか。

「たとえば、クラゲに力を入れて成功している水族館に加茂水族館(山形県鶴岡市)があります。これがたとえば、クラゲじゃなくてペンギンに力を入れてもうまくいかないんです。ペンギンは全国の水族館にいますし、数少ない人気動物なので。逆に、なかなか主役にならないクラゲをあえて打ち出したからこそ面白いし、話題になるんです」

――注目されない生き物をあえて主役に据えて成功したわけですね。

「気をつけなければいけないのは、その施策が興味を惹くものかどうかです。加茂水族館はクラゲの展示種類数でギネス世界記録にも認定されましたが、クラゲに興味がないお客さんには響かないし、メディアもニュースとしてしか取り上げない。『クラゲを食べる会』を作ったり、クラゲを材料に使ったクラゲアイスを売り出したりすることで、バラエティ番組やグラビア記事に出てきて、関心を集めることができたわけです」

――学術的な側面を生かすためにも、人を呼び込む要素が必要になるわけですね。

「水族館は理科教育をする場所だと言われることもあるのですが、それは間違いだと思っています。クラゲを食べる文化を知るのも教養ですし、北の大地の水族館(北海道北見市)の『いただきますライブ』では、イトウに生きた魚を餌として与えることで命を他者から奪わなければ生きていけないことを教えています。展示を通して人文科学的な内容を見せる方が人は集まるし、なにより役に立つだろうと思います」

――それらをまとめた総合的な空間づくりがこれからの水族館に求められていると言えそうですね。

「展示物だけでなく、水中の景観そのものを生かせるというのが水族館が他の展示施設ともっとも違う点です。施設の条件や特色に沿った魅力的な水中世界を作り出せば、有名な魚がいなくても、必ず多くの人を集められる水族館にできると思います」

国分洋平

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