水族館プロデューサーに聞く、消える水族館と伸びる水族館を分けるもの

東京ウォーカー(全国版)

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「どうしても行きたくない人を作らない」リニューアル


――サンシャイン水族館と言えば、水族館全体の中でも常に人気の施設というイメージがありました。

「リニューアル直前の来館者数は年間約70万人ほどで、水族館としては十分な集客ではあったのですが、同館は日本でラッコブームが起きた時には来場者数169万人を記録するほどだったので、全盛期とはほど遠い状態でした。

なので、リニューアルを私が監修する際、コンセプトを大人向きにはっきりと変えたんです。その結果、リニューアル後一年間で来館者数が224万人を超えることができました」

――大人向けにリニューアルする上でどういったアプローチを試みたのでしょうか。

「リニューアル前の問題点の1つに、屋外を有効に活用できていないという点がありました。サンシャイン水族館は規模的にはそれほど広くない水族館なので、屋外部分を活用できればもっと広々と使える。ですが、屋外は屋根がないので夏はとても暑いですし、雨にも弱い。なので当時は小動物園として子ども向けのエリアとなっていて、これがもったいなかった」

【写真を見る】サンシャイン水族館「草原のペンギン」写真提供:サンシャイン水族館


――現在のサンシャイン水族館の屋上は、緑と水の涼しげな空間になっています。

「当時、屋上緑化のさきがけと言われていた玉川タカシマヤを訪れた際に、噴水脇の緑化が一番人を集めていたのを見て、これなら水族館にアドバンテージがあると考えたんです。そこで屋上緑化を取り入れた結果、多くの人が屋外エリアを訪れるようになりました。

さらに2017年の第二期リニューアルでは、第一期のテーマであった『天空のオアシス』を完成させるとして屋上緑化をさらに進めるとともに、頭上に水槽を置いてその上をペンギンが泳ぐ『天空のペンギン』という展示を導入しました」

――一方、屋内展示はムードあふれるものになっていますね。

「屋内展示では、狭い面積でも広く感じられるよう、これまで明るかった館内を真っ暗にして、水槽だけが見えるようにしました。また、水槽そのものが綺麗に見えるような演出を施しました。屋外展示と合わせて、いかに女性が行きたい水族館にするかを考えました」

サンシャイン水族館の水槽「サンシャインラグーン」写真提供:サンシャイン水族館


――女性に目を向けた理由はなんだったのでしょうか。

「集客を考える上で大事なのは、熱烈に行きたい人を作るより、どうしても行きたくないという人を作らないことなんです。

家族や友人とどこかに出かける時、誰か1人でも行きたくないといった場所には行かなくなってしまいます。そして旧来の水族館には、汚いとか動物の臭いが気になるというイメージから、女性が敬遠する傾向にありました。

一方で、サンシャインシティの商業施設エリアは多くの女性客が集まるマーケットでしたから、女性人気をしっかり押さえるのがベストだと考えたんです」

――水族館のコンセプトとターゲットを徹底したんですね。

「全体としても、ビルの屋上にあることを生かし『天空のオアシス』というキャッチコピーを考え、それに即した空間づくりをしています。水槽の中も、サンゴ礁の海のように明るくて青い美しい海の色づかいに近づけています」

――展示する生物ではなく、水槽に力を入れたのがポイントだったわけですか。

「水族館にくる人の大半は、魚単体ではなく魚のいる水中が見たいんです。だから、まず美しい水中世界を見せて、そこから気になる魚を探してもらえばいい。生き物の種類は、図鑑を読んでもらう方が早いですから。

『天空のペンギン』でも、目の前の空を借景にして、海の広さを表現したかった。そこから『ペンギンにとって水中は空と同じくらい広いんだ』ということが伝わればいいんです」

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