日本の峠で生まれた「ドリフト」が世界大会開催へと羽ばたくまで

東京ウォーカー(全国版)

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FIA側から「ドリフトについて聞きたい」と話がやってきた


2015年にさらなる転機が訪れる。齊田さんのところに、JAF経由でFIA(世界自動車連盟)がドリフトに興味を持っているという話がやってきたのだ。FIAはF1だけでなく、WRC(世界ラリー選手権)やWEC(世界耐久選手権)などといったモータースポーツの世界大会を取り仕切る、サッカーでいうところのFIFAのような存在だ。

齊田さんはJAFの関係者と一緒にFIAに説明に赴き、D1誕生やJAFが公認した経緯を説明した。

サンプロス齊田功社長撮影:栗原祥光


「FIAはモータースポーツの人口を増やしたいということがあり、そこでドリフトの活用を考えたようです。当時40カ国近くでD1を模したドリフト競技が行われていました。FIAとしてもそういう競技会があるということは知っていたんでしょうね。FIAとしては途上国でのモータースポーツ人口を増やしたいという意図があったのでしょう。しかしサーキットであったりレース用のクルマが必要など、なかなか普及するのは難しい。しかしドリフトは広場と中古車があればできる。いわゆるサッカーでいうところのボールと広場があればよい、みたいなものですね」

その後、FIAは「世界標準のルールづくり」のため、日本だけでなく各国のドリフト関係者が集まる作業部会が年4回開かれるようになった。「まずは、誰もがドリフト大会を開催するためのガイドライン作りがはじまりました。例えばコーナーが2つ以上でコース幅は10m以上といったものです」。また競技として行う以上、選手や観客への安全は何よりも優先される。FIAにはF1をはじめとするレースで培ったノウハウがあり、齊田さんはその安全基準をD1グランプリに取り込んだ。もちろん、今回行われるFIA-IDCにもその安全基準は盛り込まれている。

「スポンジやタイヤバリアなどを設置すると、そこに乗っかってしまいロールオーバーする可能性があります。アメリカのNASCARやINDYなどがそうなのですが、お客様にとってウォールが一番安全なのです。ですので、観客とコースの距離が他のモータースポーツに比べて狭く設定することができます。また車体も、他のツーリングカーレースと同様のFIA規格で作られているので、とても安全です。壁にぶつかった場合、クルマは壊れてしまう可能性はありますけれど、運転手が怪我をする可能性はまずないです」。

スポンジバリアを設置した場合、車両が乗り上げてしまったり横転する危険性があるという撮影:栗原祥光/2017年8月撮影


連絡会の発足から2年後の2017年11月、世界初のドリフト統一王座決定戦「FIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップ」がお台場で開催されることとなった。川畑さんの耳にこの話が届いたのは同年中頃だったという。「正直、あまりピンと来ない部分もあったのですけれど、とにかくすごくなるなと。将来的にドリフトがちゃんと続けられるのかな、発展するのかなという不安はあったのですが、これをきっかけに発展するのかなという期待はありました」。しかし、日が進むにつれて実感が湧き「絶対に初代王者になる」と思ったという。

昨年のFIA-IDCのオープニングに登場した川畑さん撮影:栗原祥光/2017年11月撮影


しかし、どうしてお台場だったのだろうか。齊田さんはこう振り返る。「たまたま昨年の11月に、FIAがモビリティカンファレンスというのを、お台場でやる予定だったらしいんですね。それはモータースポーツではなく、ロードサービスのカンファレンスなのですが、できたらその時にFIAがモータースポーツとして普及させたいドリフト競技を、その隣でやってくれないか、ということを言われたのです。私達は最初、年をまたいで2018年の春にやったらどうか、と言っていたのですけれど、パイロットイベントという事で開催することにしました。FIAもドリフト競技が日本が発祥の地ということを知っているほか、他国と比べて日本が安全面や運営面などで最も及第点に達しているということで、日本からスタートするのがいいだろうと判断したようです」

お台場にある大型の駐車場にコースを設置して行われた撮影:栗原祥光/2017年11月撮影


さらに都心の広場で行うことも重要な要素であった。「FIAがドリフトに魅力を感じているのは、広場でできるということです。サーキットでモータースポーツができるのは当然ですよね。広場で開催されるノウハウや技術が確立されれば、どの国でも空きがあればコースを作ってイベントができる。都心の空き地でできれば多くの人が訪れる可能性がある、ということになりますよね。よって当面はノウハウを蓄積していくという意味で東京で行うことになりました」

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