トータス松本と藤巻亮太が大学で講義も!? 大きな盛り上がりを見せた「楽演祭vol.2」ルポ

19時からは昭和音楽大学内にあるホール「テアトロ・ジーリオ・ショウワ」に場所を移してライブがスタート。

まずは藤巻亮太が登場。「トータス松本さんとご一緒できてとても光栄です」という挨拶に続いて1曲目に選んだのは『まめ電球』。レミオロメンはデビュー前に故郷の山梨の神社内にあった母屋にこもってひたすら曲作りをしていた期間(通称“神社時代”)があり、そのなかで最初にできた思い出深い曲だ。

その頃の藤巻と同年代の観客が多くを占める会場に時を超えてメロディーが染み渡っていく。『Have a nice day』『五月雨』『マスターキー』とバンドとソロの楽曲を織り交ぜながら披露。終盤の『星取り』『粉雪』『3月9日』という流れは会場の集中力が何段階も増すほどの圧巻のパフォーマンスだった。自身の辿ってきた道のりを凝縮して構築したセットリストに「楽演祭」の特別感があらわれていた。

ちょっと寄らしてもらうで――そんなラフな雰囲気でふらりと現れたトータス松本のライブは、まさにこれぞライブ、何をやるか、何が起こるかわからないという楽しみが詰まったステージだった。

譜面をパラパラとめくりながら、その場の気分で楽曲をチョイス。こちらが事前にもらっていたセットリストはそっと伏せた。

『変わる 変わる時 変われば 変われ』から始まったライブ、2曲目の『ワンダフル・ワールド』(※サム・クックの代表曲にトータスが日本語詞をつけたもの)の途中から自然と会場中にハンドクラップが鳴り始め、サビ終わりで曲を止めたトータスが、「この曲この先あと一緒やけど。まだやる？」とオーディエンスに確認する場面が。もう完全にトータスの部屋へようこそ状態に突入だ。

噂の超大型新人バンド・カーリングシトーンズの『わかってさえいれば』、ウルフルズの『チークタイム』と、“ど”のつくほどの土臭いブルースを続けざまにやったかと思うと、椎名林檎とのデュエットで話題になった『目抜き通り』、ウルフルズのできたてほやほや最新曲を“ちょっとシリーズ”と名付けてちょっとだけやるというDJ的演出に目からウロコ。

そして、講義で藤巻亮太がこの曲を聴いてソロというものへの実感が湧いたという『涙をとどけて』を披露。最後の曲、『愛がなくちゃ』では、途中でギターを置いてハンドマイクで客席をあおる場面が。終わってみれば無敵のステージ。さすがの一言だ。

セッションでは、ウルフルズの『バカヤロー』、藤巻のソロ楽曲『日日是好日』を手合わせ。それぞれの曲の合間にもトークを挟み、どこか講義の実習編といった趣だ。ラストは忌野清志郎がモンキーズの原曲に日本語詞を乗せた『デイ・ドリーム・ビリーバー』。50代のトータス、30代の藤巻、そして客席の現役学生、全員が知っているというスタンダードの偉大さを再確認。

バンド、ソロ、形態は違えど音楽は音楽、作り手を離れ、世の中に浸透して息づいていく過程を二人のライブとセッションを通じて教えてもらったような気がした。

「『日日是好日』は今日の本番が一番高揚したなぁ。あの8ビートのダウンストロークをどうバッキングしたらええんか自分のなかにはない感覚やったからすごく新鮮やった」(トータス松本)

「それでいうと『バカヤロー』の跳ねる感じは僕にはないものなのですごく勉強になりました。とにかくトータスさんとセッションできたというのが何よりうれしかったですね」(藤巻亮太)

お互いにないものを交換し合い、さらなる音楽の高みへ。これからを予感させる最高のステージだった。【取材・文/谷岡正浩　撮影/今井卓】

篠田