梅田の“スターバックスの森”誕生に密着、地域密着アクション「JIMOTO table」の取り組みとは?

東京ウォーカー(全国版)

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自然を守るためには、人の手入れが必要


間伐を体験した後は、このあと工作を行う木根館(きんこんかん)スタッフの倉橋さんの案内で、森を散歩する。整備された林道を歩くと、山にはさまざまな太さの木が目に付く。「人の手で適度に間伐をしないと、木が細くなってしまいます。細い木は根も細く弱いので保水力が少なく、少しの雨でも土砂崩れなどが起きてしまう」と、倉橋さん。森の環境を維持していくためには、人の手による手入れが不可欠なのだ。

木根館スタッフの倉橋さん(右)が森を案内してくれた


さらに進むと、先ほどコーヒーに使用した湧き水が流れる小川が。山に降った雨が長い時間をかけて濾過されることにより、適度にミネラルを含んだまろやかな水になるのだ。パートナーたちは水を飲んだり、手を浸したりして思い思いに過ごし、「とてもまろやか」「やわらかい感じがする」「思ったより冷たくなくて、さわり心地もいい」など、うれしそうに話した。

森の中にある、湧き水が流れる小川


森での体験を終えたパートナーたち。ひとりが「ここにこんな森があるなんて知りませんでした。自然っていいな、ずっとこのままであって欲しい」と目を細めた。さらに「自然ってありのままがいいと思っていたけど、人の手を入れて守っていかなければいけないんですね」「森を守ってくれる人がいる。この取り組みが若い人へもつながって欲しい」とも。森を維持するには、人の手入れが不可欠なのだ。実際に森に入ることで、パートナーたちも、森を手入れすることの重要さと意味を知ることができた。

伐採の際に切り取った木片。小さな木片からもヒノキのよい香りがする


改めてLINKS UMEDA2階店の内装を見てみると


3F中央には、河内長野の杉を加工した柱が立ち、同じく杉のベンチと、大阪産の栗の木を使った椅子やテーブルなどが並ぶ。地元の材木屋、製材所に入り、職人との調整を行い、スターバックスとのつながりを手掛けるのが株式会社ワイス・ワイスだ。「森は人の手を入れ続けないと荒れてしまう。この取り組みで自然の循環を知ってもらい、“日本の木”を使う人や企業が広がればという思いでスターバックスさんと一緒に取り組んでいます」と同社の戸田光貴さんが話してくれた。

体にフィットして座りやすい栗の木を使った椅子。栗の木は固いため、足が細い椅子などにも加工可能なのだ


木は種類によって固さも性質も違う。例えば、丸太材をそのまま乾燥させて使用すると、木が縮小し、表面に細かなヒビが入ってしまう。それを防ぐためにあらかじめ「背割り」と言われる割りを入れる。「オフィスや飲食店は空気が乾燥しやすく、木が反ったり割れたりしやすい。木の性質を見極め、工夫して加工するのが職人の腕の見せ所なのです」と戸田さん。さらに「木ごとに違う木目や色合いも楽しんでいただければ」と語ってくれた。ここでは、職人の技やこだわりが存分に発揮された家具で、コーヒーを楽しむ事ができる。

木目が美しい輪切りの杉のテーブルは、背割りの部分に鉄の脚を入れ、そのままデザインに生かしている


「日本の森で何が起きているのか」…スターバックスが実現したいことは、お店を通じて「自分ごと」に


1960年代から始まった木材の輸入自由化で、市場に安い外国産の木材が出回り、日本の林業は衰退の一途をたどった。平成29年度に林野庁が発表した日本の木材自給率は36.1%。ピークだった昭和30年の94.5%には遠く及ばない数字だ。しかし近年、林業界全体が取り組んだことにより、木材自給率は平成23年から7年連続で上昇している。スターバックスも未来のために「JIMOTO table」を導入することで、店舗に地元の木材を使用し、お客さんに興味を持ってもらうことで少しでも地元の森が元気になればと考えているのだ。

大阪府河内長野市の森


「『JIMOTO table』の取り組みは2019年に始まったばかり。今でも手探りで進めているんです」とLINKS UMEDA2階店のデザインを担当するスターバックス コーヒー ジャパン店舗設計部の中川氏は語る。地域とのつながりを大事にしているスターバックス。「社内にはコンセプトワークも合わせ、30名ほど店舗設計に関わる社員がいます。『JIMOTO table』だけではなく、これからもいろいろな可能性を探って、地域ごとの取り組みができればと思っています」

スターバックスコーヒー函館五稜郭駅前店の「JIMOTO table」


全国に約1500店舗を展開する、スターバックスの店舗は、出店が決まってからデザイナーがその場所に合わせてコンセプトを考え、内装をデザインするため、1つとして同じものはないのだという。

木ごとに異なる木目の美しさや手触りにも注目して欲しい


店舗を通じて、地元の森や自然環境のことを知り、考えるきっかけになって欲しい。そんな思いで始まった「JIMOTO table」。大阪ではこの「LINKS UMEDA 2階店」が初となる。地元の森を生かし、森と木のストーリーを多くの人に知ってもらい、自然を循環させて未来へつなげる取り組みは、これからも少しずつ広げていきたいという。

キャンプや登山など“森の中で飲むコーヒー”は格別なもの。完成した店舗で記者もコーヒーを飲んでみた。繁華街の梅田の中にありながら、大阪の木に囲まれ飲むコーヒーは、森林浴のような気分に浸れ、ひと時の安らぎを与えてくれる。そして、地元の木材のテーブルや椅子…木の温かさを一層感じることができた。コーヒー1杯の時間だけでも、自然について思いをはせてみては。きっといつもとは違ったコーヒー体験ができるはずだ。

二木繁美

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