【WEB連載】酒女倶楽部の日本酒レポート 　　　　　　 5本目「繁枡（しげます）純米大吟醸 にごり酒」（福岡県・高橋商店）

前回は、夏にぴったりなしゅわしゅわ〜っとした日本酒をご紹介しましたが、今回も「夏にいいよ～」というお酒をご紹介します。ずばり「にごり酒」です。

にごり酒というのは、完全にろ過しきっていない、ちょっぴり白濁した日本酒のこと。多くの日本酒は、透明でにごりがありませんが、それは「もろみ」という発酵したてのお酒をしぼって、きれいに濾（こ）しているから。もろみを濾すと、透明なお酒と、酒粕とに分かれるんです。にごり酒は、荒く濾した状態のお酒なので、しぼりたてのお酒がもっているフレッシュさを残していて、さわやかでいてフルーティー。だから、さっぱりしたお酒が飲みたい夏にこそ、打ってつけなのです。

このたび紹介する1本「繁枡（しげます）純米大吟醸 にごり酒」（福岡県・高橋商店） http://www.shigemasu.co.jp/ は、福岡県の日本酒。海のようなアクアブルーのラベルに、こう書いてありました。「夏に夢（み）る雪」。ああ…何てステキな響きなのでしょう。夏に雪は降らない。でも、まるで淡雪がほろりと溶けてしまうような、そんな切なくて、ほの甘い味。うだるような暑さの中で、一瞬でもいい。雪のおちる、あの季節に思いをはせたい。そんな気分にさせてくれる一杯です。

実はこの1本、福岡県に出張ででかけたときに、デパ地下で買ったものです。4合瓶（720ml）で1200円！純米大吟醸なのに、とってもリーズナブル！　どんな蔵元さんなんだろう…と調べてみると、高橋商店さんは、江戸中期の創業。かなり古い酒蔵です。しかも、2010年の全国新酒鑑評会では、金賞を受賞なさっています。つまり、実力派ってこと。ホームページの「こだわりの酒造り」を見ると、酒造りがどんなふうに行われているか、よくわかる画像が出てきます。本当に、日本酒を愛していらっしゃるんですね。その気持ちに、酒女の愛をささげたくなります。のどごしさわやかで、カパカパ飲めてしまう美酒。どうか、飲み過ぎにはご注意を。（あなたに言われたくない、って誰かつっこんでくださいね）

甘さ度★★★★☆　辛さ度★☆☆☆☆　女性度★★★★☆　男性度★☆☆☆☆

合う料理：お寿司、野菜のおひたし、なすの浅漬け

このお酒を芸能人に例えると…これを飲むと、なぜか「ウイスキーが、お好きでしょ」が頭の中に流れてくる、というわけで、雪のように清らかな歌声の「石川さゆり」さん！

※甘さ辛さ度、女性男性度、合う料理は、すべて高野の独断と偏見です。

【文・写真＝酒女倶楽部・高野朋美】