羽生結弦が「憧れ」から「ライバル」へ!山本草太の進化

東京ウォーカー(全国版)

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わずか3カ月前。西日本ジュニアでの取材時に、全日本ジュニアへの意気込みを聞かれた山本草太は、「いや、宇野君がいますから、優勝なんてとても無理です」と語った。それはおそらく謙遜ではなく本心だったはずだ。

それがどうだろう。ジュニアグランプリファイナルでトリプルアクセルを初めて成功させ、ショートプログラムでは首位に立つ快挙を成し遂げた。

今回の全国中学校大会では、「来年、宇野君がインターハイに出てきてくれたら対決できる。追いつき、追い越したい」とまで発言。

トリプルアクセルの練習を積み重ねながら、試合ではなかなか結果に結びつかずにいた。それが大舞台であるジュニアグランプリファイナルで成功。実戦での成功が、これほど意識に変化をもたらすものか。怖いもの知らずの若武者の勢いを感じさせた。

以前はアクセルの踏み切りに恐怖感があったという。練習を見ていても、なかなか踏み切らずにぐるぐるとリンクを回り、長久保コーチを呆れさせる場面もあった。ところが、ジュニアグランプリファイナルでトリプルアクセルを成功させたことで、踏み切りへの恐怖心が消えたそうだ。

山本はこうも言っていた。「全日本ではショートとフリーで合計3本のトリプルアクセルを決めたい」。残念ながら、その目標は叶わなかったが、1カ月後の全国中学校大会で達成した。それもすべてのエレメンツをノーミスで決める会心の演技だった。

シーズン序盤には全く跳べていなかったトリプルアクセル。しかし、山本はこのジャンプを今季の最重要課題と位置付けて取り組んできた。これを跳ばなければ世界ジュニアでは通用しない。

厳しさを理解していたからこそ、今季中の習得を前提に取り組んできた。だから周囲からは驚異的な進歩のように見えるが、本人にとっては想定内のプロセスだという。その裏には意外な存在があった。

「宇野昌磨君と中京大学のリンクで一緒に練習する機会が多く、彼が失敗してもトリプルアクセルと四回転を繰り返し練習し、今年、ついに習得した姿を見てきました」。練習の重要性は長久保コーチから言われてきたことだが、実際にそれを体現して見せた宇野昌磨の存在は、山本のモチベーションに大きな影響を与えたようだ。

山本草太といえば、憧れの選手は羽生結弦。すっかりおなじみのエピソードだが、彼はただ憧れるだけではなく、自分の現在地を見極める物差しとして羽生結弦を意識してきたという。

「結弦君が自分と同年代の時に何をやっていたか、ずっと意識してきました」。羽生は中学3年生でトリプルアクセルを決め、世界ジュニアで優勝した。トリプルアクセルを決めるところまでは追いついた形だ。

その後、羽生結弦はそれまでの常識を覆す革新的な戦績を残してきた。あまりにも過酷な“物差し”だが、山本はあえてそれに挑む。“憧れの存在”から“ライバル”へ。羽生結弦に向ける目線の変化が、山本の進化を雄弁に物語っている。

最後に、今回の取材で最も印象的だった言葉を紹介したい。「オリンピックで金メダルを取りたい」。そう、彼は初めて公言した。最終目標はオリンピックの金メダル。これをこの年代ではっきり口にした選手は、私が直接知る範囲では浅田真央と羽生結弦の2人しかいない。

言葉にすることの意味を理解して、そして言葉に発する。その重みがいかほどのものか。山本草太ならきっとやり遂げる。そう強く感じた。【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】

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