本堂で「朝のお勤め」体験も? “寺院共存型”ホテルが京都に誕生したワケを住職に聞いた

東京ウォーカー(全国版)

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史跡や老舗の宝庫である京都・寺町通沿いに「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」がオープンした。名称からもわかるように、寺院とホテルが一体化した施設で、ほかに類を見ないユニークな建物となっている。

新しくオープンした「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」


これまでにない試みが詰まったホテル?ホテルと一体化している「浄教寺」


ホテルと一体化している「浄教寺」は、正式名称を「多聞山鐙籠堂浄教寺(たもんざんとうろうどうじょうきょうじ)」という。国宝の三門で有名な知恩院を総本山とする浄土宗の寺で、承安(1171年から1175年ごろ)、平清盛の長男、平重盛により開基された。当時の名は「東山鐙籠堂」とされ、重盛は信仰厚く「鐙籠大臣」とも呼ばれていたという。その後、1449年に後花園天皇に「浄教寺」の寺名を下賜され、五条東洞院移転を経て、豊臣秀吉の洛中寺社整理により、1591年に現在の場所に移転した。

【写真】ホテル入口の横に「浄教寺」の入口があり、ここから本堂に向かう

ホテルの場所は大通りから少し入ったところで、阪急京都本線「京都河原町駅」からほど近く、デパートのすぐ裏という立地で交通の便もよく、四条河原町や先斗町、祇園も徒歩圏内で観光の拠点としても申し分ない。「寺町通」沿いの和の趣のある建物がホテルで、その奥に「浄教寺」がある。ホテルの建物の1階が本堂になっているような造りで、ロビーにある窓からも本堂が見える。

浄教寺の歴史を感じられる備品があちこちに飾られている

「浄教寺」の本堂は、朝のおつとめ後、見学が可能

ホテルロビーには、旧本堂の床板をあしらった柱や、浄教寺由来の装飾品を配していて、歴史の重さを感じさせる。また、館内に流れる音楽もこのホテルのために作られたもので、通常の三井ガーデンホテルがアロマを香らせているのに対し、こちらのホテルでは寺のイメージに合わせたお香を焚くなど、これまでにない試みが詰まったホテルとなっている。

毎日ほぼ満席!ホテルの宿泊者限定で「朝のお勤め」体験も


落ち着いた雰囲気の客室は、全室2名以上で利用できる広さ

なぜ、このような形のホテルが誕生したのか、「浄教寺」第44世住職の光山公毅さんに話を聞いた。「浄教寺は、私の祖母の実家です。先代は父のいとこでしたが、5年ほど前に跡を継いでほしいという話になりました。この寺の老朽化もあり、立地を生かして再建することを考えました」

フロントにも昔の建物に使われた狛犬が飾られている

そんななかで思いついたのが、“寺院共存型のホテル”だったという。「当時、観光客が押し寄せるこの地にホテルが少ないことが問題となっていて、ホテルと一体化させた建物にすることができないかと考えたのです」

建物の老朽化や後継者の不在、檀家離れなどの理由で、閉じざるを得ない事態に陥っている寺院も少なくないという。三井不動産グループは「浄教寺」を次代へと遺すため、寺院とホテルが提携したユニークな複合建物を計画。多くの寺院が抱える社会的課題の解決方法の1つとして、ホテルと一体開発という寺院再生の新たなモデルケースを実現した。

ロビーの柱には、旧本堂の床板が

“寺のホテル”らしく手水鉢のオブジェが中央に置かれた大浴場

ホテルは和の雰囲気が漂い、落ち着いた空間が心地よく感じられる。「次世代に向けた寺のホテル」をホテルコンセプトに、モノトーンを基調としたお寺の静寂感と和モダンの調和を表している。ロビーには旧本堂の木鼻や、獅子付き留蓋瓦などを展示しており、小窓から見える本堂も印象的だ。また、大浴場には手水鉢(ちょうずばち)をモチーフにしたオブジェがあり、背景に水墨画をイメージした光壁アートを配置している。厳かでありながら、落ち着いた雰囲気のなか、手足を伸ばしてゆっくりと入浴できるのもうれしい。

本堂には「浄教寺」を開いた平重盛の姿が

もっとも特徴的なのは「朝のお勤め」体験だ。光山住職は「寺院では、毎朝お経を上げて、今日一日の無事と幸せをお祈りしています。宗派に関係なく、通常は観光地として知られる寺院以外では一般の方が参加することはほとんどありません。今回、ホテルの宿泊者の方限定でご参加いただけるようになりました。ご縁あってこちらのホテルにお泊りいただいている方にご参加いただけるのはうれしいですね」と話す。

「朝のお勤め」体験では、住職がお経を上げるのを聞き焼香をするのだが、オープン時から参加者が後を絶たず、毎日ほぼ満席となっている。京都という土地柄もあるが、朝から清々しい気持ちになれると好評だ。

歴代の鬼瓦も展示

長い歴史を感じられる

更地にする際、掘り起こした中から見つかった

そして、朝のお勤めのあと20分から30分程度だが、本堂を自由に見学することもできる。朝のお勤めに参加した人はもちろん、参加しなかった人でも見学OK。こちらの本堂には、寺の歴史を物語る数々の品が展示されていて、宿泊しなければ気づかなかった京都の歴史に触れられる。

鯛茶漬けと天ぷらが付く朝食「光明」(2000円)など 3種ある

2階にあるレストラン「僧伽小野 京都浄教寺」は福岡県でミシュランガイドに掲載された「僧伽(さんが)小野 一秀庵」の2号店。日本の米文化を伝えるべく、京野菜を使った料理や朝食でも鯛茶漬け、西京焼きなど、和の醍醐味を堪能できる。また、ランチでは、ミシュラン掲載店「赤間茶屋 あ三五(あさご)」直伝の手打ち蕎麦が味わえる。レストランは宿泊者以外ももちろん利用できるので、観光の合間に訪れてみるのもおすすめだ。

雰囲気も体験もほかにはないものばかりで、歴史のある京都や日本のよさを体感できる。知っているようで、あまりなじみのなかった寺を身近に感じられる“寺のホテル”を京都旅行の拠点にしてみてはいかがだろうか。

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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