成田凌が「永遠の目標」と語る役柄とは? 清原果耶は「役を懸命に生きること」を切望
東京ウォーカー(全国版)
話題作への出演が絶えない人気俳優の成田凌と清原果耶がW主演をつとめる映画『まともじゃないのは君も一緒』が、3月19日(金)より公開される。人と人とのコミュニケーションのすれ違いや、不器用な人間性をコミカルに描いた本作では、世の中の“常識”や“普通”がわからない数学講師の男・大野を成田、聞きかじりの知識だけで恋愛を知ったつもりでいる予備校生・香住を清原が演じる。2人に本作を通して感じたことや自身が演じた役柄、映画館の思い出などについて聞いた。
高校の卒業アルバムを見て「これは普通じゃないなと思った」
――本作は「普通とは何か?」を考えさせられる作品になっていますが、お2人は本作を通してどんなことを感じましたか?
【成田凌】作品を撮り終わってからだいぶ経ちますが、今もなお「普通ってなんだろう?」と考えてしまいます。きっとこれから先も、「普通はさ」と誰かが言うたびに気になってしまうんじゃないかなって。ただ、いくら考えても正解が出ないので、ちょっと困ったなとも思っています(笑)。
【清原果耶】私は自分が思う“普通”というものがあって、人それぞれ“普通”が違って当たり前だと思っていたので、あまり気にしたことはなかったんですけど、本作を通してやはりいろいろ考えさせられましたね。ただ、それでもやっぱり「“普通”は人それぞれでいいんだ」と思いましたし、誰かが決めることでもないのかなと。
――過去に「これって普通じゃないかも?」と思ったエピソードがあれば教えていただけますか。
【成田凌】高校のとき、頭の右側だけパーマをかけてました(笑)。
【清原果耶】え!右側だけですか?
【成田凌】そう。高校の卒業アルバムを見たら、僕の髪型が左は短くて、右はめちゃくちゃ長くてパーマもかかっていて「なんで?」って驚いたし、「これは普通じゃないな」と思いましたね(笑)。たぶん、当時は「いいこと思いついた!」ってチャレンジしてたはず。
【清原果耶】かわいらしい(笑)。
【成田凌】「この髪型いいよね?ね?」と、周りに「変」とは言わせない感じで妙に堂々としてましたよ(笑)。
【清原果耶】私はいまの話よりも面白いエピソードはないです(笑)。自分自身で「これは普通じゃないかも?」と思った経験はあまりないのですが、学生の頃からこのお仕事をしていたので、周りの人たちからは「普通じゃないな」と思われていたかもしれないなと思いました。
【成田凌】同じ学校にテレビや映画に出てる人がいたら、「すごい!」ってなるもんね。
「とにかく素直に演じた」成田と、悩みながらも振り切って“毒っけ”を表現した清原
――お2人が演じられた大野と香住というキャラクターのことを、どんな風に捉えていましたか?
【成田凌】大野のことは、すごく面白い人だなと思いました。“変人”だからという意味ではなくて、彼は真っすぐで真っ当に生きていて、いろいろなことに興味があってフットワークも軽い。とにかく素直でいい人なんです。そういう人ってなかなかいないから面白いですし、今も大野のことを愛おしく思っています。
【清原果耶】私は台本の香住の台詞から「棘が目立つ女の子だな」という印象を受けたので、香住の持つ“毒っけ”をどこまで振り切って演じられるのか、というのはすごく悩みました。撮影中に不安になると、成田さんに「ちょっといま悩んでいて…」と相談することもありました。
香住は、筋が通ってそうなことを言う割には、実はそれが本心じゃなかったりするんです。「たぶんこういうことでしょ?だからこうなんだよね?」と雑にまとめて、それを正論っぽく大野に叩き付けてしまうというか。
【成田凌】地に足がついていないというか、どこに足をつけたらいいかわからないんだよね。
【清原果耶】そうなんです。だけどそこが10代の女の子特有のフラフラ感でもありますし、キュートなところでもあるので、しっかりと台詞に乗せて、香住らしさを表現できるように心がけていました。
――成田さんは大野を演じるうえで、どんなことを大切にしていましたか。
【成田凌】とにかく素直に演じることを大事にしました。「この人は面白いキャラクターですよ」という意識で演じてしまうとめちゃくちゃ寒い映画になってしまうので、脚本を信じて、素直に真っすぐ演じようと。そうすれば自然と面白くなるに違いないと思ってやっていました。清原さんも同じような考えで演じていたので、だからこそ良い作品になったんじゃないかなと思います。
――大野を演じたことで、何かご自身に変化はありましたか。
【成田凌】ネット上の大衆の意見に流されてしまう人たちなどに対して、疑問を持つようになりました。だけど、それまで僕自身もずっと大衆の意見に「うんうん」と頷いて流されている方だったので、疑問を持てるようになったのは良いことなのかなと思います。
――清原さんは、香住や大野にシンパシーを抱けることはありましたか。
【清原果耶】香住に関しては、理解はできたのですが、共感まではいかなかったです。例えば、私は自分の感情だけで一人の人間をいろいろなところに連れ回したりはできないなと…。
【成田凌】連れ回してよ(笑)。
【清原果耶】(笑)。なんなら香住よりも、ちょっと世間知らずすぎる部分はありますが、自分の世界で生きている大野の方にとても共感しました。例えば、安物の服を指摘されても「これ、どこどこで買ったんだよ。安くていいでしょ」と返せるように、自分の好きなものを信じて好きと言える、“媚びない生き方”っていいなと思いました。
――逆に、成田さんは香住に共感できるところはありましたか?
【成田凌】香住が誰かの受け売りでなんとなくしゃべっているのを見ると、学生時代にそういうことあったよなと思うことはありましたね。大衆の意見を代弁している香住の気持ちには共感できました。
映画館は楽しいところだと感じてもらえるように「面白い映画を作って届けたい」
――成田さんは第63回ブルーリボン賞の受賞の際、「普通のことをしていても成立する役者になりたい。まだ役に頼って演じている。『脱カメレオン俳優』を目指したい」とおっしゃっていましたが、「カメレオン俳優」と呼ばれることへの違和感はありましたか。
【成田凌】僕としては役と自分を切り離して考えていて、例えば何にもしない役というか、道しるべが全くない役のオファーがきたらどう演じるだろうか、そういう役を演じられるようになりたいなとか、そんな想いがあっての発言でした。
ただ何もせずに立っているだけで、観客や視聴者の方が「この人はどういう家庭環境で育ったんだろう?」と興味を抱いたり、「こういう友達がいたのかな」「この人バスケ部だったんだな」といった背景が自然と見えたりするような芝居ができるようになりたいんです。でもおそらく、それは永遠の目標になるような気がしています。
――清原さんにとって本作は『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020年公開)に続く映画主演作となりますが、“映画の顔”になることでお芝居への向き合い方への変化はありましたか。
【清原果耶】私は主演作であっても“映画の顔”という意識はあまりなくて、あくまでも作品の一部だと思っているんです。ただ、年を重ねていく中で「責任ってなんだろう?」と考えることは増えました。とはいえ、私がするべきことは「いただいた役を懸命に生きること」なので、そこは今後も変わらず大事にしていきたいと思っています。
――成田さんは先日、井浦新さん、斎藤工さん、渡辺真紀子さんが中心となって活動している『ミニシアターパーク』のオンライン配信に出演するために大阪から駆けつけていらっしゃって、その行動力に深い映画愛を感じました。演じることに限らず、これから俳優としてやっていきたい活動があれば教えていただけますか。
【成田凌】僕にできるのはまず、お客さんに映画館へ来てもらえる俳優になることだと思っています。「ちょっと来てよ」と言われたら全国どこでもフットワーク軽く行けるようになりたいですし、1回でも劇場を満席にすることができるならそれは素晴らしいことですから、自分ができる範囲でいろいろとやっていけたらなと。
映画館って楽しいところなので、その楽しさを一人でも多くの方に感じていただくためにも、まずは面白い映画を作って、その映画を自信を持って全国の映画館に直接届けに行くというのを、今後もやっていけたらなと思っています。
――清原さんはこれから先、俳優としてやってみたいことは何かありますか?
【清原果耶】私はまだこの業界に関する知識が浅く、経験も少ないので、まずは出会った作品や人々を大切にしていけたらと思っています。
――最後に、お2人の映画館での思い出のできごとを教えてください。
【成田凌】井浦新さんと大阪の街を散歩したあと、第七藝術劇場で観た『さとにきたらええやん』がすごく思い出に残っています。「こどもの里」という、家庭の事情を抱えた子供たちを受け入れている実在の施設を舞台にしたドキュメンタリー映画です。それまでは映画館でウルッとくるときがあっても我慢していたんですけど、新さんの横だったら泣いてもいいなと思えたのもあって、初めて映画館で泣いたのもいい思い出です。清原さんは映画を観て泣いたりする?
【清原果耶】めちゃめちゃ泣きます(笑)。映画館で泣いたエピソードといえば、高田馬場に早稲田松竹という映画館があるんですけど。
【成田凌】そこの近所で昔バイトしてた!2本立て上映をやっている、名画座と呼ばれるような映画館だよね。
【清原果耶】そうです。『湯を沸かすほどの熱い愛』がどうしても観たくて行ったんですけど、一番前の席しか空いてなかったんです。仕方がないのでスクリーンを見上げる状態で鑑賞したら、ものすごく感動してしまって、観終わる頃には涙で顔全体が濡れていました(笑)。
【成田凌】耳にも涙が入ったんじゃない?(笑)
【清原果耶】いろいろなところに涙が流れていきました(笑)。でも、映画館で観て良かったなと思いますし、今でも見返したくなる作品です。
【成田凌】やっぱり、映画館って特別な場所ですよね。『まともじゃないのは君も一緒』もぜひ大きなスクリーンで観ていただけたらうれしいです。
撮影=友野雄
取材・文=奥村百恵
◆成田凌
ヘアメイク=高草木剛(vanites)、スタイリスト=伊藤省吾(sitor)
◆清原果耶
ヘアメイク=窪田健吾(aiutare)、スタイリスト=井阪恵
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