コーヒーで旅する日本/九州編|コーヒーに対する確かなポリシーを、肩肘張らない雰囲気に落とし込む「MOMENT COFFEE」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

カウンターとテーブル合わせて16席を用意(C)KADOKAWA

九州編の第4回は、昼夜問わず常連が憩う福岡市・舞鶴の正統派コーヒーショップ「MOMENT COFFEE」。派手さはないが、2012年のオープンから着実にファンを増やしてきた同店のコーヒーの魅力に迫る。

(C)KADOKAWA

Profile|千葉久寛
1983(昭和58)年、千葉県柏市生まれ。調理師の専門学校を卒業後、イタリア料理店に入る。勤めていた料理店が閉店したため、ワーキングホリデー制度を利用し、約1年、オーストラリアに渡る。帰国後、サイクルショップで約4年間働き、自身も常連だったmanucoffeeに入店し、コーヒーの道へ。

店主との会話に花が咲く、いつものカウンター

店があるのは大正通り沿い(C)KADOKAWA

大正通交差点そばにたたずむ「MOMENT COFFEE」。開業は2012年と、そこまで古いわけではない。ただ、それ以前からあったような感じを受けるのは、舞鶴という街にとてもなじんでいるからだろう。カウンターに常連が座り、店主の千葉さんと談笑している姿をよく目にする。それが同店の日常の風景だ。

店を切り盛りするのは千葉さん一人で、コーヒーを飲みながら千葉さんとおしゃべりするのを目的に訪れる人も多い。実際、取材した日にいたお客さんもそうだった。気さくに、ときにジョークを織り交ぜながら場を和ませてくれる千葉さんの人柄に惹かれ、遠くに引っ越した今も、ふいに足を運びたくなる時があるそうだ。

カウンターから席が埋まっていくことも多い(C)KADOKAWA

そんな飾らない人柄が魅力の千葉さんだが、コーヒーへの思い入れは強い。もともと凝り性で、専門学生時代から業務用のエスプレッソマシンを購入し、家でエスプレッソを淹れていたそう。

「実はそんなにコーヒーが好きなわけじゃなかったんですが、ちょうどスターバックスが福岡に出店した時期、世間はコーヒーブームの真っ只中。僕も流行にのっかる形でコーヒーショップに通い始めました。コーヒーって知れば知るほどおもしろくて、僕の凝り性の性格もあってハマりましたね。スペシャルティコーヒー(※1)の存在を知ってから、当時野間にあったハニー珈琲で購入できると聞いて、すぐに足を運んで。それから、スペシャルティコーヒーの豆を使ったエスプレッソが飲めるmanucoffeeに通い。そんな風に自然と身近にコーヒーがある生活をしていました」と千葉さん。

転機となったのは、manucoffeeのオーナー・西岡総伸さんとの何気ない会話から出た「3カ月間だけmanucoffee 舞鶴店を手伝う?」という提案。もともとコーヒーショップで働きたいと思っていただけに、すぐにmanucoffee舞鶴店で働き始めた千葉さん。「働いていたら、今度は舞鶴店を譲るから、自分でやってみないか、というお話をいただき。それなら自分でやってみようかな、って2012年11月に『MOMENT COFFEE』としてスタートしました」と開業のきっかけを振り返る。

ガラス戸の引き手にmanucoffee時代の名残が(C)KADOKAWA


コーヒーに求めるのは個性

「MOMENT COFFEE」は2021年10月に自家焙煎に切り替えたばかり。開業した2012年から2年ほどはmanucoffee、その後は自家焙煎を始めるまでCOFFEE COUNTYから豆を仕入れていた。焙煎度合いは浅〜中煎りがメインだったが、自家焙煎に切り替えてからはダークローストもラインナップに加えている。

焙煎機はGIESENの半熱風式(C)KADOKAWA

千葉さんは「僕自身、華やかで果実味のある浅煎りも好きですし、しっかりとしたボディ感がある深煎りも好き。その豆に合った焼き具合があると思うので、それを感じ取りながら一番おいしい焙煎度合いを見極めていきたい」と焙煎について説明。

店で扱うのがシングルオリジン(※2)のみである理由を聞くと、「産地によって味わいや香りなど、個性がまったく異なるのがコーヒーの楽しさの一つ。お客さんにもそれを知ってもらえたらと思ってのことです。ただ無理強いはしません。人それぞれテイスト、焙煎度合いの好みはありますから」と千葉さん。

本日のコーヒー(580円〜)。プリン(500円)、スコーン(300円)などスイーツも千葉さんが手作り。夏季はかき氷も人気だ(C)KADOKAWA

「manucoffeeで働く前、自宅で手回し焙煎機を買って、豆を焼いていたこともあったんです。だから、焙煎機を購入して、以前にも増してコーヒーと向き合うのが楽しくなりました。ただ、改めて感じるのが、コーヒーってやっぱり農作物ということ。栽培・収穫、生産処理を施し、僕たちの手元に生豆が届いた時点で、ほぼ味わいって決まっていると思うんです。ロースターはその豆に適した火の入れ方をするなど、わずかにしかコントロールができない。抽出に関しても同じことが言えますね。要は豆が持っているポテンシャル以上のものを引き出すのは無理だということ。そういった意味で原料がとても大切になると考え、今はCOFFEE COUNTYさんから生豆を仕入れさせてもらっています」(千葉さん)

2021年12月現在、ナチュラルプロセスのエチオピア、アナエロビック・ファーメンテーション(嫌気性発酵)のニカラグア、ウォッシュドプロセスのコロンビアの3種の豆を用意。生産処理がそれぞれ違う上、焙煎度合いも浅煎り、深煎りと異なるので、飲み比べてみるのも楽しいはずだ。

生豆が持つポテンシャルをできるだけ損なわない焙煎を心がける(C)KADOKAWA


理論はあっていいけど、あくまで感覚を信じたい

価格も手ごろで、自宅でも取り入れやすいドリッパー、HARIO V60を使用(C)KADOKAWA

「MOMENT COFFEE」の抽出はエスプレッソマシンとHARIO V60でのペーパードリップが基本。要望があればネルドリップ、フレンチプレス、エアロプレスなどで淹れることもあるそう。

さまざまな抽出方法に触れているのも千葉さんの勉強熱心なところだが、「抽出理論的なものはあまり考えたことはないですね。純粋に淹れたコーヒーがおいしいか否かがすべて。ただ、浅煎りでも深煎りでも、豆のフレーバーをしっかり感じることができ、かつできるだけすっきりとした味わいを表現するようには心がけています。ペーパードリップにHARIO V60を使っているのも、そんな理由から」と千葉さん。

焙煎機はGIESENの半熱風式。千葉さんは「本当は以前のmanucoffee、COFFEE COUNTYと同じようにドイツ製のPROBATが理想だったんですが、設置できるスペースの関係上、それが叶わなかった。国産機種やアメリカのDIEDRICHなど、いろいろ検討した結果、オランダ製のGIESENに決めました。理由を聞かれると説明しづらいんですが、GIESENで焼いた豆に味わいの厚みというか、奥行きがあるように感じたから。そんなテイストが僕の好みなので、自身で焙煎する際も、生豆が本来持っている香りと複雑味、飲んだあとに感じられる余韻を重視しています。まだまだ焙煎は勉強中なので、取り扱っている豆も3種と少なめですが、豆売りが伸びてきたら、ほかの産地の生豆も仕入れてみたい」と意気込む。

理屈っぽさがないけれど、抽出したコーヒーからは味わいを通して確かなポリシーを感じられる点。これこそが「MOMENT COFFEE」の一番の魅力かもしれない。

【写真】店名のMOMENTには、コーヒーで素晴らしいひとときをという思いを込めて(C)KADOKAWA


千葉さんレコメンドのコーヒーショップは「3CEDARS COFFEE」

次回、紹介するのは大分市にある「3CEDARS COFFEE」。
「オーナー・ロースターの庄司さんは、もともとmanucoffeeで焙煎していたこともあり、昔から親交がある先輩です。庄司さんが焙煎したコーヒーは本当においしい。先日も店舗でゲストビーンズとしてお客様に提供させていただきました」(千葉さん)

【MOMENT COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/GIESEN W1
●抽出/エスプレッソマシン(LA MARZOCCO strada EP-2)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり(550円〜)
●豆の販売/シングルオリジン3種、100グラム850円〜

※1…国際審査員が行うスコアシートに基づく評価によって80点以上の点数をつけるコーヒー豆
※2…生産者や農場、精製方法などの単位で統一された豆のこと

取材・文=諫山力(Knot)
撮影=大野博之(FAKE.)


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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