絶滅危惧の背景にコツメカワウソのペットブーム⁉かわいいだけではすまされない現実を飼育員が解説【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】
東京ウォーカー(全国版)
個体数減少の一因はペットブームにあり
――ユーモラスでかわいらしいカワウソだが、それだけでは済まされないショッキングな話もある。現在、カワウソ類の多くが絶滅危惧種に指定されている。しかもその一因が、日本も含め、近年起こったカワウソのペットブームにあるというのだ。
個体数が減少してしまった大きな原因は生息地の環境破壊や環境汚染ですが、野生動物が車と接触して死んでしまうロードキルや、ペットブームによる乱獲も問題になっています。近年、コツメカワウソがペットとして人気になり、カワウソカフェなどもオープンしているようですが、見た目の「かわいい」部分だけが取り上げられているように感じます。かわいい=家で飼いたい、触わりたいだけでいいのでしょうか?身近なカフェやSNSでの人気によってカワウソが、犬や猫と同じように「飼える」という、誤った認識が浸透してしまったように感じます。

アジアでのペットブームで生息数が減少したため、2019年に法律が改正。コツメカワウソの輸出入が原則禁止になりました。でも、日本ではいまだに「カワウソ=ペット」という認識が根強く残っているように日々感じます。
そもそも、コツメカワウソが野生下でどのように暮らしているかという情報が少なく、研究者も多くはありません。繁殖や健康も、わからないことだらけです。そんなことを知らずにペットとして飼った場合、病気になった時に近くの動物病院で診てもらえるかというと、そういう訳にはいかないように思います。
動物園、水族館での飼育は、ペットとして飼うことと全く違う意味合いがあります。飼育技術を確立してデータを蓄積し、野生の個体を守る活動は、動物園や水族館が存在している意義の一つでもあるのです。
まずは野生のカワウソについてよく知ってほしい。そのためには、動物園側からの情報発信が重要です。例えば、毎年5月の最終水曜日は「世界カワウソデー」で、世界中の水族館や動物園が協力してTwitterの投稿などを通じてカワウソの現状を伝えようとしています。今はコロナ禍でお休みにはなっていますが、エサを与えるお食事タイムなどに野生での現実についても話に盛り込むようにしていました。来園したお客さんも、そうした話には興味深く耳を傾けてくれます。

まずは実際にカワウソを見て、どんな動物かを知って
――そんな見過ごせないカワウソの現状を踏まえ、森本さんから来園者へのメッセージを語ってもらった。
カワウソの魅力は水の中を自由自在にスイスイ泳ぐ姿や、石を転がしたりして遊ぶ姿。ぜひ動物園に来て、実際にそんな姿を見ていただきたいと思います。その一方で残念なことに、現在カワウソ13種のほとんどが絶滅の危機に瀕しています。そして日本のコツメカワウソのペットブームが、野生のコツメカワウソに大きな影響を与えているのも事実です。
過去にはニュースにもなりましたが、まだまだ認識されていないように思います。来園された方の中にも、「ペットで飼ってみたい」と話している人を見かけることも。自分には関係ない出来事だと思うかもしれませんが、乱獲されたカワウソの赤ちゃんの密輸先の多くは日本で、しかもたくさんのカワウソの赤ちゃんが死んでいるという背景を知ってもらえるよう、私たちも伝えていきたいです。
「カワウソはかわいい。だから飼いたい」でいいのでしょうか。かわいいからこそ、魅力的だからこそ、彼らがこの先も暮らしていけるよう、私たちの意識を変える必要があるのではないでしょうか。カワウソをペットにしたいと言っている人ほど、実はカワウソについて詳しく知らず、見た目以外には興味がないようにも感じています。まずは「カワウソ=かわいい」だけで終わるのではなく、カワウソがどんな所にすんでいて、どんな生活をしているのか、どんな動物なのかなど、カワウソについて正しく知ってください。
皆さんがカワウソについて知るきっかけを作れるよう、これからも動物園側から情報を発信したり、イベントを実施したりしたいと考えています。まずはぜひ動物園に足を運び、実際にカワウソたちを見てください。

取材・文=鳴川和代
監修=久保田潤一(NPO birth)
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