コーヒーで旅する日本/九州編|積み上げてきた知識と技術で、宮崎のコーヒーシーンに常に新たな風を。「恋史郎コーヒー」

九州ウォーカー

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理由を突き詰めるロジカルなロースター

【写真】蓄熱の良さから選んだ、GIESEN W1A。半熱風式

焙煎機が届いたのは、2018年。マシンは蓄熱の良さなどを理由にオランダ製のGIESENに決め、クラウドファンディングなども活用しながら、導入資金を調達。「ちょうど、店の隣が空きテナントになったことも運が良かった。広さもジャストサイズですし、なによりカフェと隣接していることは、これ以上ない好条件。すぐに隣のテナントを契約し、焙煎機到着を待ちました」と田中さんは当時を振り返る。

コーヒー豆は常時5〜7種をラインナップ。すべてシングルオリジンだ

コーヒーを淹れるバリスタとして約3年店に立ち、それぞれの豆が持つ個性を大切に抽出を続けてきた田中さんだけに、焙煎から導き出す味わい作りも明確だった。焙煎を始めた当初から気を付けたのは、クリーンカップ。「自家焙煎を始める前、 AND COFFEE ROASTER さん、 COFFEE COUNTY さんの豆を仕入れさせていただいていたのは、共にクリーンカップに秀でた焙煎をされていたからです。もちろん、私自身、両店のコーヒーが好きですし、最初はどれだけ自身が好きな味わいに近づけるか試行錯誤の連続でした。YouTubeで焙煎の動画を見て勉強したり、知人のロースターに話を聞いたりしながら、知識や技術を身につけ、それを実践する日々。そうやって自分なりにプロファイルを構築し、ほぼ納得の味わいを作ることができるようになりました。ただ、まだ完璧ではないと思っています」と田中さん。

現在、より理想的な焙煎に近付けるために、マシンのカスタムも考えているそう

この“完璧ではない”とストイックに追求する姿勢が田中さんの真骨頂だ。まったくの素人から焙煎を始めた田中さんだが、日々焙煎と向き合う中で、マシンの特性を細かく理解しようと努力し、“なぜ、こうなったのか”、“なにが作用して、この味わいが引き出されたのか”を常に考えるようにしているという。何事もそうなった理由を深く考えることで、よりおいしいコーヒーを生み出す。こういった姿勢を常に持ち続けている田中さんだからこそ、宮崎のコーヒー業界でも、一目置かれているのだろう。

宮崎に新たなコーヒー文化を作る

採光が良く、明るい店内

「恋史郎コーヒー」は自家焙煎を始めて、豆売りにも力を入れているが、もともとはカフェからスタートしただけに、イートインの利用も多い。メニューはドリップコーヒー(450円)、アメリカーノ(500円)、エアロプレスコーヒー(500円)などブラック系に加え、よりエスプレッソ感が強いコルタード(430円)やジブラルタル(450円)、カプチーノ(450円)、カフェラテ(480円)とミルクビバレッジも豊富。

ヘベスエスプレッソトニック。柑橘の爽やかな香り、甘みが浅煎りコーヒーに合う

さらには、宮崎特産の柑橘を使うヘベスエスプレッソトニック(600円)など、ユニークかつご当地感が光るメニューも用意する。オプションでエスプレッソショット追加、牛乳をオーツミルクに変更、コーヒー自体をカフェインレスに変更など、さまざまな楽しみ方を提案しているのも田中さんらしい。

スコーン(300円)、ワッフル(300円)、パウンドケーキ(380円)など自家製の焼き菓子も準備

また、一般的なハンドドリップコーヒーは豆由来の甘さを引き出し、軽やかに飲めるようにHARIO V60を採用。ペーパーフィルターはHARIO V60の純正ではなく、CAFECのアバカフィルターを使うなど、細かな点にまで田中さんならではのこだわりが光る。田中さんは「植物繊維が原料のアバカフィルターは通液性に優れ、安定した抽出が可能。さらに、アバカの特性上、通常の紙フィルターで淹れたコーヒーと比べると、クリアでまろやかな味わいを表現できます。これも、自身でさまざまなドリッパーやフィルターを使ってきて、今ベストだと思っている抽出器具の組み合わせ。焙煎はもちろん大切ですが、抽出に関しても、より自分が理想とする味わいを引き出せる抽出器具があれば、変化を恐れずより良いものを探していきたい」と力を込める。

長年、ほぼ独学で研究してきたからこそ、確かな抽出理論を持つ

開業から7年を経て、ますます進化を続けるコーヒーショップ「恋史郎コーヒー」。コーヒーに馴染みがない地域・宮崎を、コーヒーが日常的に親しまれるような街へと進化させていくのは、田中さんのように真摯にコーヒーと向き合うロースター、バリスタの存在は不可欠だと感じた。

息子さんのそのまま屋号に付けているのも、ほっこりとする

田中さんレコメンドのコーヒーショップは「みちくさCOFFEE ROASTER&DAREKA COFFEE STAND」

「佐賀市に店を構える『みちくさCOFFEE ROASTER&DAREKA COFFEE STAND』の店主、古川さんとは福岡のコーヒーのイベントで出会いました。そのイベントで古川さんが焙煎し、抽出したエチオピアのアラカ農園のナチュラルのコーヒーが、すごくおいしかったんです。それを機に親交を深め、一度は当店まで足を運んでくれたことも。古川さんはかなりのコーヒーマニアで、店を営む場所は違えど、SNSなどでしばしば情報交換しています」 (田中さん)

【恋史郎コーヒーのコーヒーデータ】
●焙煎機/GIESEN W1A
●抽出/ハンドドリップ(HARIO V60)、エスプレッソマシン(SYNESSO HYDRA)
●焙煎度合い/浅煎り〜中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム850円〜

取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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