コーヒーで旅する日本/九州編|常に数年後の未来を見据えながら。「タウトナコーヒー」が描き続ける“特別”を“日常”にするシナリオ

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

JR大分駅から車で5分ほどの場所にある「タウトナコーヒー 六坊焙煎所」

九州編の第56回は、大分市六坊北町にある「タウトナコーヒー」。“大分 スペシャルティコーヒー”というキーワードで検索すると必ずと言っていいほど出てくる店で、いわゆる大分におけるスペシャルティコーヒーの先駆け的なショップとして知られている。店がオープンしてちょうど10年が経ち、現在は六坊北町の焙煎所とJR大分駅からもほど近い府内町の赤レンガ店の2店舗を展開。大分に新たな風を吹き込み、そしてスペシャルティコーヒーを根付かせた実績は同店の一つのアイデンティティとも言える。店主の山下周平さんは、どんな思い、ビジョンを持ってこの10年を歩んできたのか。

オーナーの山下周平さん

Profile|山下周平(やました・しゅうへい)
1983(昭和58)年、大分県大分市生まれ。工業高校から大分大学に進学し、大学では液晶を専門的に研究。大学時代に経験したコーヒーショップのアルバイトから、バリスタの仕事に惹かれ、大学卒業後は技術者の道から大きく方向転換し、サービス業である京都の小川珈琲に入社。5年弱勤めた後、大分に帰郷し、2012(平成24)年に「タウトナコーヒー」をオープン。

起業のために地力をつける

抽出やサービスは京都の小川珈琲で学んだことが基礎になっている

「タウトナコーヒー」は大分における、スペシャルティコーヒーのパイオニアだ。2012(平成24)年と約10年前に開業し、地道にスペシャルティコーヒーの魅力を広めてきた。オーナーの山下周平さんはもともと工業高校を経て、進学した大学では液晶の研究をしてきた理数系の人だが、大学時代にアルバイトで経験したバリスタの仕事に「一生の仕事にするなら、これだ」と直感。それまで高校、大学と学んできたことを捨て、京都の老舗、小川珈琲の門を叩いた。

カフェラテ(473円、テイクアウト464円)。エスプレッソにはやや深煎りのハウスブレンドを使う

その当時、地元の九州にもコーヒーショップはあったと思うが、あえて京都の名店を選んだのはなぜか。「正社員として就職できるという点もありましたが、その当時から小川珈琲のバリスタは競技会にも積極的に出場していました。そういったスタッフ同士が刺激し合える環境で一からコーヒーを学んだ方が、地力になると考えました。いつか必ず起業するという目標もありましたから」と山下さん。つまり近い将来を見据えた上での選択でもあったわけで、やはり山下さんの思考の根本はロジカルだ。

地域にフィットするスペシャルティコーヒーを

すべての豆を試飲できるようにしている

「タウトナコーヒー」は開業時から焙煎機を導入。修業先ではコーヒーの抽出、接客をメインに学んできた山下さんだが、自家焙煎をすることに一切の迷いはなかったそうだ。なぜなら開業当初からぶれない目標は豆売りで利益を伸ばせる店だったから。中古のフジローヤルの5キロ窯を購入し、機械に強いスキルを活かし、自身でオーバーホールをして整備。独学で焙煎を始めた。

開業当時、まずは飲んでもらうことに重きを置いた山下さん

「もちろん開業して数年は苦労しました。まず、スペシャルティコーヒーという名前自体、聞き馴染みがないということもあり、お客さまの反応は薄い。開業した当時はいわゆる昔ながらの喫茶店で味わえるしっかり深煎りのコーヒーの方がお客さまにとっては当たり前なわけで、さらに言うと日常的にコーヒーを自宅で飲むという人も少ない。そんな中、いきなり『スペシャルティコーヒーです。これは良い豆なんです』なんて説明しても、届くわけはなく。だから、まずはカフェとして認知を広めることに注力しました」

ドリップコーヒー(462円、テイクアウト453円)。6〜7種のシングルオリジン、2種のハウスブレンドから豆をセレクトできる

さらに「多様性のあるスペシャルティコーヒーをどう伝えるか」を考えて、焙煎度合いのレンジも広くした。まずは飲んでもらうことが大切と、当時のスペシャルティコーヒーは浅煎りや中煎りが主流だったが、深めの焙煎もいとわなかった山下さん。なにより「また飲みたい。毎日でも飲みたい」と思ってもらうためには、“過ぎたる”は不要と考えた。

「スペシャルティコーヒーはフレーバー、アシディティ(酸味)が特徴ではありますが、そこを強く打ち出すのは、まだ早いと考えました。お客さまにまずは普通に飲んでおいしい、なんかバランスが良い気がするという味わい体験をしていただく必要があった」と山下さんは開業当時を振り返る。そうやって少しずつスペシャルティコーヒーを知ってもらうことから始めたのは、パイオニアゆえの工夫だと感じる。

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