世界でも繁殖例はわずか5園のみ。サメ・シロワニは生まれる前からハードモード!?【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

東京ウォーカー(全国版)

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生存競争はお腹の中から始まっている

――サメの出産形態には卵を産んで孵す卵生と、胎内である程度の大きさまで子供を育てて出産する胎生の2つの形態がある。シロワニは胎生で、1メートル近い大きな赤ちゃんを産む。

当館では卵生のサメの繁殖にも力を入れていて、成功例も結構あります。サメ全体の4割ぐらいが卵生で、13~15センチぐらいで生まれてくる赤ちゃんもいます。それでも彼らはその小さな体で、自力で生きていかなければいけません。

一方、シロワニはかなり大きくなるまでお腹の中で育て、生まれた時点で1メートル近くにまでなっています。これは、生まれた時点でほぼ生きていけるだろうという大きさで産むからだと考えられます。

シロワニの子宮は2つあり、一度の出産で最大2匹の赤ちゃんが生まれます。受精後、子宮の中では受精卵から孵化した赤ちゃんがどんどん出てきますが、最初に生まれた大きな赤ちゃんが次々に生まれてきた他の赤ちゃんを食べて、自分の栄養にして育ちます。

野生のシロワニの調査から、水温をダイナミックに調整

――胎生とはいえ、子宮内では激しい生存競争が繰り広げられ、その結果赤ちゃんが誕生してくる。そこに至るまでにはさまざまな試行錯誤を繰り返したという。

繁殖の成功例がなかったので、どのような環境を作ってやればうまく繁殖できるのかといった情報もありません。当館では20年以上前、シロワニの飼育を始めた当初から繁殖を目標に掲げていました。その中で水温を夏場は上げて、冬場は少し下げるといった変化を付けたり、水槽の照明時間を季節によって長くしたり短くしたりするなどの調整をしてきました。

サメの海と呼ばれる水槽。さまざまな種類のサメが泳ぐ写真提供:アクアワールド茨城県大洗水族館


その結果、2015年には初めて妊娠の確定まで至りました。残念ながら死産で小さな赤ちゃんが早く出てきてしまったのですが、妊娠したことでこの方法が間違いではなかったことが分かりました。ただ、その後も継続してチャレンジはしていましたが、そこから先には進んでいませんでした。

何かが足りないのではないかと頭を抱えた時期もあったのですが、私が小笠原の野生のシロワニの調査に行ったときに分かったのが、彼らは結構水温の変化がダイナミックなところで生活しているということ。一定の水温でずっと暮らしているのではなく、水温の変化の激しいところで生活していたんです。そこで飼育下でも、水温の幅をさらに広げるというチャレンジを開始。水槽にはほかのサメもいるのですが、まずはシロワニの繁殖を優先させたいと温度の調整をしました。これが成功につながったかどうかは明確ではありませんが、結果的に成功したという流れです。

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