コーヒーで旅する日本/関西編|バリスタ界のエンターテイナーが、回り道を経て原点回帰。「Okaffe Kyoto」で体現するおもてなしの心

関西ウォーカー

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新天地は喫茶店の跡地。独立を機に12年越しの原点回帰

看板スイーツのパンどら(500円)、ダンディブレンド(550円)。ドリンクセットで100円引き

その後も、トップバリスタとして活躍を続ける中で、独立を考えたきっかけは何だったのだろう。「最初は1人で始まったものが気付けば数十人になり、自分もチーフバリスタになり、後進の育成や組織運営の仕事が中心になりました。バリスタという新しい職業を広めることはもちろん大事ですが、本来はお店に立ってこその存在。“生涯現役で、カウンターでコーヒーを淹れていたい”という思いが強くなってきたのが、大きなきっかけでした」。そして2016年、岡田さんが新天地に選んだのは、地元で長年続いた喫茶店の跡を改装した空間だった。ここまで、自ら先頭に立ってバリスタの醍醐味とエスプレッソの魅力を広めてきた岡田さんの姿からは、意外に感じるかもしれないが、「元々は喫茶店のマスターを目指していましたから、僕にとっては12年越しの原点回帰。バリスタも喫茶店のマスターも、サービスのプロとしての心構えは同じ。舞台は変わっても、基本にカウンターサービスがあり、“目の前のお客さんに楽しんでいただく”というモットーは変わりません」と岡田さん。一見、回り道をしたように見えるが、バリスタ日本一の道程で得た経験は、「Okaffe Kyoto」でも存分に生かされている。

本店のほど近くにある姉妹店「amagami kyoto」は、舞妓さんのロゴマークが目印


元の店の趣を生かした空間のみならず、メニューも純喫茶テイストが随所に。コーヒーの種類は、2つのブレンドに、時季替わりのシングルオリジンを加えた3種のみ。ビターな香味とコクが後を引く深煎りのダンディブレンド、フルーティーな酸味を生かしたパーティーブレンドと、シンプルに味わいの個性を提案する。「もちろんエスプレッソも置いていますが、コーヒーのことを説明することはほとんどありません。それよりも、地元の人が集まる場所として、いろんなお客さんとの会話を引き出すのが第一の仕事。呉服店時代の接客経験もありますから、日々のトークに困ることはないですね(笑)」と、肩肘張らない雰囲気作りに腐心する。

また軽食メニューでは、ナポリタンやカレー、卵の風味を生かして固めに仕上げたプリンなど喫茶店の定番のほか、オリジナルの一品も人気。自家製パンケーキ生地に和菓子の老舗・亀屋良長の餡を挟んだパンどらは、いまや店の名物に。さらに、2年前にオープンした姉妹店・amagami Kyotoでは、手毬寿司に想を得て考案した、独自の“手毬シュークリーム”も好評。喫茶店のテイストを踏襲しつつ、京都らしさを加味したメニューは、地元出身の岡田さんだからこその発想だ。

本店とは対照的に開放的な雰囲気の「Okaffe ROASTING PARK」


自家焙煎を本格始動。“バリスタ界のエンターテイナー”の新たなチャレンジ

「今後は豆の販売、卸なども力を入れていきたい」という岡田さん

バリスタとしての経験を土台に、京都ならではのおもてなしで多くのファンを魅了する岡田さんが、新たに取り組んだのが自家焙煎。2019年から2年間、「Okaffe 嵐山」として焙煎所を稼働した後、新たな拠点として、2022年にオープンしたのが「Okaffe ROASTING PARK」だ。店を構えたのは、岡田さんの幼馴染が営んでいた、歴史ある元材木店の一角。本店と同様、地縁を生かしたユニークなロケーションも魅力の一つだ。「前職時代、競技会の時などは自分で焙煎することもありましたが、設備が大きくかつ焙煎専門の担当者もいたので、いわば車の運転はお任せして助手席に乗っていたようなもの。本格的に取り組むのは実質、初めてのことですが、焙煎は表現として面白いし、自分らしいコーヒーを作りたいと思った」と岡田さん。

「Okaffe ROASTING PARK」には心地よいオープンエアのテラス席も併設。多彩な材木を使った家具もここならでは


「Okaffe ROASTING PARK」では扱う豆の種類も増え、新たに考案したスターブレンドのほか、シングルオリジンも4、5種類をラインナップ。浅煎りから深煎りまで、焙煎度も幅広く揃えている。「新しい焙煎所は、店名の通り“公園”のイメージ。老若男女が気軽に集える場所にしたいので、コーヒーの風味も特定の人の嗜好に合わせるのでなく、デイリーな深煎りから、ちょっと特別なスペシャルティコーヒーまで、いろんな嗜好に応えられるようにしています。この界隈で“コーヒーならここが一番”と言われるようになれれば」

とはいえ、岡田さんにとって店の顏はブレンド。コーヒーシーンは長らく、浅煎りでシングルオリジンの個性を生かす方向が主流となっているが、現在は、世界的にもブレンドを見直す動きがあるとか。「焙煎、ブレンド、抽出と、味作りの変数が多いほど、味作りの選択肢は立体的に広がります。いずれかの要素を固定すると、その変数が少なくなってしまう。やはり、お客さんに、好みの味を選んでもらえるようにしたいので」と、お客本位の姿勢はここでも変わらない。

新作スイーツのバターサンド(粒あん・コーヒー、420円)とオ・カヌレ(350円)。カフェラテ(550円)。随所にあしらった星マークが目を引く


ロースターとして新たなステージに進んでも、岡田さんの本分はあくまでサービスマン。コーヒーを通してお客を笑顔にすることが中心にある。「技術や知識も大事ですが、あまりそこばかり意識すると、お客さんのことが見えなくなります。淹れる方は何十杯、何百杯と作っていても、それぞれのお客さんにとっては目の前の一杯がすべて。それを上手くコントロールするのが、サービスマンの腕の見せ所。コーヒーは生活に寄り添っている飲み物なので、店を出てからふと“旨かったな”と思い出すような感覚で、何気なくおいしさを感じてもらえれば」と岡田さん。

何より、“バリスタ界のエンターテイナー”と称される尽きぬサービス精神で、日々、お客を楽しませることが、この道に入って以来の変わらぬモットーだ。「父と母が出会ったように、喫茶店で生まれる縁もあります。だから自分が店に立つ時も、人の出会いやつながりを大事にしたいと思って、カウンターで隣同志になった方を紹介することもよくあります。コーヒーを介して、お客さんを元気にするのがサービスマンの役割ですから、コーヒーの蘊蓄よりも、“誰が淹れて、誰と飲むか”に価値を感じてもらえれば嬉しいですね」

新たに加わったスターブレンドやシングルオリジンの豆は、「Okaffe ROASTING PARK」のみの販売


岡田さんレコメンドのコーヒーショップは「TERRA COFFEE ROASTERS」

次回、紹介するのは、大阪府吹田市の「TERRA COFFEE ROASTERS」。
「ヘッドロースターの順平くんは、小川珈琲時代の後輩。ドイツ・ベルリンでバリスタ・ロースターとして仕事をした経験があって、Okaffe 嵐山を立ち上げた際に焙煎担当として入ってもらいました。当時からコーヒーに対する姿勢はストイックで、スペシャルティコーヒーの醍醐味を追求するこの店でも、持ち前の探求心を発揮しています。北摂でも注目を集める一軒で、後輩のさらなる活躍に期待しています」(岡田さん)

【Okaffe Kyotoのコーヒーデータ】
●焙煎機/ギーセン 6キロ(半熱風式)、AILLIO 1キロ(電熱式)
●抽出/ハンドドリップ(カリタ)、エスプレッソマシン(デッラコルテ)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/ あり(550円~)
●豆の販売/ブレンド4種、シングルオリジン3~4種、100グラム1050円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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