コーヒーで旅する日本/関西編|Made in Japanの器具を通じて、日本のコーヒーカルチャーを京都から世界へ広げる。「Kurasu」

関西ウォーカー

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ロースターの仕事は、常に同じ焙煎環境を作る準備にあり

生豆は気温・湿度を管理した専用の部屋で保管する

とはいえ、良原さんが本格的に焙煎に取り組んだのは、この時から。ロースターとなってからの4年間で最も腐心したのは、常に安定した焙煎を行うための環境作りだという。「焙煎する時に、毎回同じ条件の環境というはありえないこと。そんな中でも、同じ豆を10回焼いて、同じ焼き方ができることが理想なので、いかにブレをなくすかが大事です。そこで、気候風土は変えられないから、まず自分のコンディションを一定にしようと、焙煎する日は決まった行動を取る、いわばルーティンを作るようにしました。逆に、それを決めずに焙煎するのは難しい。だから、常に同じ環境を作る準備が焙煎士の仕事だと思っています。自分の場合は、焙煎中に調整することは一切なくて、焙煎が始まったら何もしません。むしろ、それより前の段階、どういう準備をして取り組むかがポイントなんです」

テイクアウトのハンドドリップコーヒー500円~


日々、細部まで行動を律するアプローチは、実はバリスタの仕事が土台になっている。抽出時の湯温、粉の量、注ぎ方など、一杯のコーヒーを抽出するために、条件を整えることはバリスタなら当たり前のこと。良原さんにとって、焙煎のプロセスもその感覚と同様だ。ただ、焙煎を始めた頃は、機械の扱いも不慣れな部分があって、同じ豆でも焼くたびに違うということが多々あったという。「毎回条件が違うと、失敗してもどこが原因かが分からないんですね。基準がないと、焼き方を試そうにも、変えた部分と結果の違いが結びつかないことがストレスでした。そこで、毎回同じように焼くために、焙煎プロセスの変数を少なくしていく工夫を重ねていって。一定の条件を作る作業は、いつも同じ味を抽出するバリスタの仕事に通じるものがありました」

家具問屋が立ち並ぶ夷川通にある「Kurasu」夷川店


それゆえ、今でも自身のスタンスをロースターでなく、バリスタ・ブリューワーと位置付けているという良原さん。「焙煎も、抽出のプロセスのなかのいち変数と捉えて、バリスタがおいしいと思って、淹れられる豆をイメージしてます。自分が淹れる時に味わいに納得して、自信をもってお客さんに勧めたいので」との思いを抱いて、日々焙煎に向き合っている。

日本国内のさまざまなメーカーのコーヒー器具を取りそろえる。品揃えの広さに思わず目を見張る


充実したコーヒーライフを支える心強いパートナー

豆のサンプルには、店内で抽出に使用する器具まで明記

近年、ロースターとしても存在感を増しているが、豆の販売だけに止まらず、日本製の多彩なコーヒー器具を通して、楽しみをさらに広げる提案をできるのが、「Kurasu」ならではの特色。「スタッフの自分が訪れても、品揃えの幅広さに感心します(笑)」という、姉妹店の夷川店は、器具のショールーム兼カフェとして2020年にオープン。店内の壁一面に、ドリッパーやポット、ミルなどの器具がずらりと並び、手に取って選べるショップは、今までにありそうでなかったスタイル。しかも、購入を考える際には、実際に抽出の実演を見たり、試用したりできるのも魅力の一つだ。

石川県の伝統工芸・山中漆器の技術を活かした木製の安清式ドリッパーも取り扱う


また、カフェで提供するコーヒーも、実際に購入できる器具を使用して抽出。基本はすべて家庭用の器具ゆえに、抽出レシピは誰もがそのまま再現可能だ。中でも、オリジナルのエアロプレスラテは、“家でも気軽にラテアートを楽しみたい”との声に応えて生まれた人気メニュー。エスプレッソマシンがなくとも、本格的なラテアートが作れるアイデアはまさに目から鱗。お客の希望や好みに応えて、器具の使い方や組合せをコーディネートできるのは、幅広いアイテムを揃える「Kurasu」だからこそ。それゆえ、家庭で使うお客だけでなく、イベント出店者や開業希望者が器具の相談に訪れることも少なくない。

エアロプレスラテ600円~は、器具の使い方に通じた「Kurasu」らしい一品


「日本ならではのディテールの追求は、器具もコーヒーも共通する点。日本製器具の良さを広めることから始まり、日本のコーヒーカルチャー全体を海外に発信する中で、今後はロースターとしても、生豆選びから焙煎、抽出まで、自分たちだから表現できるものを目指していきます。グローバルに展開しているからこそ、この店が根ざす土地の特色に目を向け、地域の風土を感じられるような味作りができれば。さらにクオリティを上げて、“Kurasuといえばこの味”と言えるコーヒーを作っていきたいですね」と良原さん。器具に触れ、抽出に親しみ、豆の個性を味わう。そのプロセスの醍醐味をトータルに提案する「Kurasu」は、一人ひとりのコーヒーライフに寄り添う心強いパートナーだ。

広いカウンターは、ゲストバリスタを招いてのカッピングやイベントにも使われる


良原さんレコメンドのコーヒーショップは「common.」

次回、紹介するのは京都市上京区の「common.」。
「店主の久米さんはKurasuの元スタッフで、2021年に独立して、奥様と2人でコーヒーショップ兼ヘアサロンというユニークなお店をオープンされました。僕が焙煎に取り組みはじめた時から、何かと励ましてもらった先輩でもあり、コーヒーの抽出技術はもちろん、お人柄がとても素敵で。バリスタとしてのプロ意識の高さ、気配りの行き届いたサービスは、“自分には真似できないな”と、いつも思います」(良原さん)

【Kurasuのコーヒーデータ】
●焙煎機/ギーセン 6キロ(半熱風式)、ローリング 35キロ(熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、エアロプレス、エスプレッソマシン(ラマルゾッコ)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド3種、シングルオリジン4~5種、100グラム870円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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