コーヒーで旅する日本/関西編|一杯のエスプレッソから生まれた衝動を胸に、尽きぬ好奇心と熱意でコーヒーの楽しみを追求。「Cauda」
関西ウォーカー
16年を経ても尽きないコーヒーへの好奇心と熱意

開店した当時は、ちょうど関西でスペシャルティコーヒーを謳う店ができ始めた頃。ただ、高品質の豆や本格的なエスプレッソを提供する店は奈良にはまだなく、「Cauda」は界隈の新たなコーヒーシーンを先駆けた存在でもあった。「最初の頃は、今までにないコーヒーの味に驚く人が多かったですね。スペシャルティとかシングルオリジンとか、そもそも言葉自体が広まってなかったですし、伝えても“何それ?”っていう反応でした」と振り返る。
2015年、現在地に移転を機にメニューはコーヒー中心に絞ったが、現在のブレンドやシングルオリジンの品揃えは、富雄時代からほぼ変わらないラインナップ。中でも、幅広いフレーバーを提案するシングルオリジンには、新興産地のタイの豆や、コロンビアのアナエロビックなど新たなプロセスの銘柄もあるが、「産地がどこかはあまり気にしない。どういうニュアンスを出したいかによって、豆のチョイスや焙煎度を変えています。スペシャルティ専門と言ってしまうと、味作りの中で言葉に縛られてしまうので、面白いと思う豆をどんどん探していきたい」という。例えば、エチオピアベースの香りブレンドは、ジューシーな酸味の個性を出しつつも、ふっくらと厚みのあるボディ感、どこかホッとするやわらいだ余韻が印象的。カフェラテも然り。マロンを思わせるまろやかな甘味とコクは、エスプレッソ専用ブレンドの配合の妙が感じられる。

いまや、コーヒーの豆も器具も年々進化を遂げているが、「ハイテク化した焙煎機やミルも当り前になりつつあるけど、うちは今も100%マニュアルでやってます」と杉坂さん。焙煎や抽出の随所に見せる職人的な手仕事が、ユニークでかつ心和む味わいを生み出しているようにも思える。そんな癒やしの一杯を求めて、訪れるお客は夕方から夜にかけてが多いそう。遅くまで営業している店が界隈では希少なだけに、仕事帰りにエスプレッソで一日を締めたり、帰宅前にコーヒーを飲んでスイッチをオフに切り替えたりする場として定着している。
奈良でいち早く、新たなコーヒーの楽しみを広げ、若い同業者からも厚い支持を得てきたが、「これからも、ひたすら焙煎の腕を磨いていくだけ」と、楽しげに語る杉阪さん。Caudaとはイタリア語で“熱い”の意。島根で衝撃の一杯と出合ったあの頃と変わらず、コーヒーに向き合う熱意はいまだ衰えることはないようだ。

杉坂さんレコメンドのコーヒーショップは「Cafe manna」
次回、紹介するのは兵庫県猪名川町の「Cafe manna」。
「店主の長田さんは、コーヒーの勉強会などで知り合って以来のご縁。Qグレーダーの資格を持ち、カッピングの競技会準優勝など、女性では数少ないカッパーとして、味覚のセンスの鋭さで同業者からも一目置かれる存在です。里山の只中にあるお店の雰囲気がとても良くて、“こんなところにカフェが?”と思ってしまう、ロケーションも魅力です」(杉坂さん)
【Cauda のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 5キロ(半熱風式)
●抽出/サイフォン、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ)
●焙煎度合い/浅~深煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド2種、シングルオリジン5~6種、100グラム600円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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