コーヒーで旅する日本/関西編|コーヒーを通して素晴らしいつながりが生まれる場を目指して。「GRANKNOT coffee」が続ける“深化”と“進化”

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

内装は大阪のデザイン集団・アントリーに依頼。奥行きの深い空間は手前にスタンド、奥にテーブル席を配置し、幅広い使い方に対応


関西編の第63回は、大阪市西区の「GRANKNOT coffee」。高感度なショップや飲食店が集う堀江エリアにあって、コーヒーを主役に据えたスタンドとして、2013年にいち早くオープン。今では、個性派コーヒーショップがひしめく界隈の、草分け的な一軒として厚い支持を得ている。自らを凝り性と評する店主の芝野さんは、アパレルの仕事から転身し、バリスタ修業時代からコーヒーの世界に没頭。開店後も尽きぬ探求心を発揮して、今ではロースターとしても存在感を高めつつある。1杯のコーヒーを通して“素晴らしいつながり=GRANKNOT”を生みだす芝野さんが腐心する、“深化”と“進化”の継続とは。

店長の芝野さん


Profile|芝野勝也 (しばの・かつや)
1978年(昭和53年)、大阪府生まれ、アパレルショップで6年勤務した後に、コーヒー店の開業を志し、大阪府内のカフェ・バールでバリスタとして3年あまり修業。2013年、大阪市西区の堀江に「GRANKNOT coffee」を開業。2018年に焙煎機を導入し、自家焙煎もスタート。2023年春には、新たなブランド「バトン」を立ち上げ、堺市の浜寺公園にロースター兼菓子工房をオープン。

回り道を経てつながった、コーヒーとの運命的な縁

店のある界隈は、近くに大きな公園もあり、どこかのんびりした雰囲気。常連客には、近隣のショップスタッフの姿も多い

「子供の頃、両親が喫茶店をしていて、サイフォンの動きがおもしろくてよく眺めていました。店でコーヒーを飲んでいる人を見て、“大人やなあ”と思って、一回、真似して飲んでみたら、やっぱり苦かったですね(笑)」という店主の芝野さん。実家が喫茶店を営み、しかも誕生日が10月1日の“コーヒーの日”。長じて、10年前に「GRANKNOT coffee」を創業したのだから、何やら不思議な運命の綾さえ感じさせる。まさに三つ子の魂と言えなくもないが、実は、芝野さんがコーヒーのおいしさを知ったのはアパレルの仕事から、飲食業へと転身してからのことだった。

「当時は、仕事の息抜きなどで、何かとカフェに行くことが多くて。実家の喫茶店の影響もあるかもしれませんが、いろんな店に通ううちに、自分でも空間のデザインや人の集まる場を作ることに興味が湧いてきたんです。そこから開業を目指して働き始めたカフェが、コーヒーにこだわりのある店で、このときにコーヒーのおいしさに気付けた。コーヒーに触れるのが早すぎて、逆に苦手意識がついていたから、だいぶん遠回りしました」と振り返る。

店内奥は大テーブルを置いた落ち着いた空間に。配管を使った照明もユニーク


自らを評して1つのことにハマると、とことんまで突き詰めるタイプという芝野さん。その後は、Knoppの吉田さんやCOCO COFFEEの西村さんも在籍した、シェーカーズカフェ・ラウンジで、バリスタとして本格的に修業。「本気で競技会の世界一を目指したこともあって、一時は常にミルクピッチャーを持ち歩いて、電車の中などでも振る練習をしていました (笑)」とは、当時の熱の入れようが伝わるエピソードだ。そんな芝野さんは、開店を目前にしたあるとき、自身の想像をはるかに超えた、究極ともいえるエスプレッソと出会ったことで、目指すべき道を見出す。

「自家焙煎を始めてから、味のイメージをより明確に表現できるようになりました」と芝野さん


「大阪で開催されたセミナーで、島根のカフェロッソの店主・門脇洋之さんが淹れてくれたエスプレッソが、あまりに衝撃的で。自分でもそれなりにコーヒーのことを勉強してきたつもりでしたが、“とんでもないものを飲んだ”という感覚がありました。普通、複雑で強い味を出そうとすると、後味が重く残りがちですが、最初の香りのインパクトから、途中の風味の広がりと変化、余韻の消え方に至るまで、味作りがとにかく精密で。以来、理想の味として、店を始めてからもずっと追いかけ続けて、3年ほどして島根までもう一度確認しに行ったくらい」という芝野さん。カフェロッソを訪れた際、門脇さんからは、まだ完成ではないと聞かされ、さらに衝撃を受けたという。そのとき、店の焙煎機に貼ってあった“神は細部に宿る”というフレーズは、今でも自身のモットーとして胸に刻まれている。

カヌレやキャロットケーキなど、コーヒーとのペアリングを考えた焼菓子も人気


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