現役女子大生タレント・中川紅葉が見つけた“聖域”/ココロすっぴん#31
東京ウォーカー(全国版)
青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。第31回は、最近見つけた「純粋にやりたかったこと」について。
#31「聖域がない。」
仕事に繋がらなくても構わない、というほど熱中できる何かがある人は、その人だけが知る聖域を持っていることと同義だと思う。そんなオアシスが私にはない。
私にとっての聖域は何なのかずっと分からなかった。寝食忘れてのめり込むこともない。休日はどう過ごすのか聞かれても、寝ることだと笑いに逃げることしかできなかった。
そもそも、日々辛くはないが、超楽しい!と感じることも、これをしている時が幸せ!という時間もあまりない。そう自覚し親に相談すると、本気で心配された。当たり前である。
飲み会も、カラオケも、ボウリングも好きじゃない(珍・大学生)。映画や読書は仕事に繋がってしまう。そう思いゲームを始めてみたが、やはりどうしても身体に合わない。一体何が好きなのだ、私は。
そんな私がエッセイ本を出した。実を言うと、今でも誰が読むのだろうと思う。色んな人が手伝ってくれたのにそんなことを言うのは失礼だ。でもやっぱり、私自身がこんなに暗めなのに、読んでいる人が救われるのかとても不安だった。
本が世に放たれてから燃え尽きてしまった。何かを言われても、「本を読んでくれ、全部書いてあるよ」と思えるようになった。良くも悪くも、焦らなくなった。これから何を目標にすれば良いか分からなくなっていて、ということは、本を書くこと(出すこと)が一番の夢だったことに今頃気がつく。そして、それ以外に夢だと思っていたことが実はまやかしだったことにも。
そもそも趣味でさえなくて、それはもちろん仕事にも当てはまってきていた。何を本職にしたいのか年々形がぼんやりしていき、薄くなっていた気がする。そんな中叶ってしまった書籍化だった。
目標がなくなったときだとか、視野が狭かったことに気がつくときだとか、そんな時に人は迷うのだろう。発売日を過ぎてからの私は、まさしくその感覚の中で浮遊していた。
エッセイを書き、更に感想を読み、言われても困ると前から言っていてた「気にしすぎ」「悩みすぎ」という言葉を受け取る。考えを言語化するのが“真っ当なエッセイ”ならば、そう言われても困ってしまう。“自身を書く”という仕事なのだ。やはりとても困る、が、その通りだと思った。
自分の夢、そして自分が何を好きかすらも曖昧なことくらいちゃんと気がついている。本を出してから、それが一層強くなっていた。そんなことも「普通」の人は、悩まずにいられるのだろうか。
発売から10日後。仕事帰り22時。チェーン店に入ろうとすると、青山学院大学のトートバッグを持った男子5人組がエレベーターに乗り込んでくる。今日は大学の卒業式だった。去年も届いた「卒業アルバム撮影会」の小冊子を、今年も封を開けずに捨てた。
今日はレギュラーのラジオ番組の収録で、現役女子大生という肩書きをもうやめたいと言い出せない雰囲気を感じ、言葉を飲み込んだ。最近、SNSの自己紹介文から大学名と学年を消した。たったそれだけなのに、何を書く場所だったのかすら急に分からなくなって、今も自分の紹介を書けずにいる。
この記事の画像一覧(全10枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約1100カ所の紅葉スポットを見頃情報つきでご紹介!9月下旬からは紅葉名所の色付き情報を毎日更新でお届け。人気ランキングも要チェック!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介