コーヒーで旅する日本/九州編|正統じゃなくていいと教えてくれる、肩透かしの説得力。「喫茶 銀杏の木」は今日も心地よく

東京ウォーカー(全国版)

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自身の喫茶の原点を大切にしたい

篠原さんは「銀杏の木という言葉の響きも好き」と口にする

新天町にあった「銀杏の木」は、篠原さんが20代前半で働いていた時期に閉店することが決まり、さらに店主夫妻も程なくして亡くなったという。ただ、篠原さんは独立するときには「銀杏の木」の屋号を使いたいと長年考えていたそう。

篠原さんは「いよいよ開業を考えていたとき、店主夫妻の息子さんと偶然つながることができ、ご両親が営んでいた喫茶店の屋号を使わせていただきたい旨を手紙にしたためたんです。ありがたいことに快諾してくださり、『喫茶 銀杏の木』の名で開業できました。余談ですが、入口に飾っている木彫りの看板は新天町の『銀杏の木』のもので、息子さんがわざわざ持ってきてくださったんですよ。townsquare coffee roasters時代によく通っていた『ひだりうま』さんも、もともとただの客だった私に店を貸してくださっていて、本当に人との縁や偶然に助けられて今がある、って実感しています」と話す。

【写真】かつて新天町にあった「銀杏の木」で実際に使っていた看板。年季が入っている

そういうことは本当によくあると私も感じる。その時は些細な出会い、ふとした人とのつながりだと思っていても、後々それが転機のきっかけになるという経験をしたことは少なからずある。ただ、また出会ったときにいい関係性でいられるかはその人次第。そういった意味では篠原さんの親しみやすさ、素直さ、明るさがあってこその「喫茶 銀杏の木」の今だと感じる。

ペンをとり、想いをつづることで

同店ならではの遊び心「喫茶でエッセイ」はお客からも好評

「喫茶 銀杏の木」は馬肉料理店を間借りしていることから、座敷という喫茶店ではあまり見かけないスタイル。それもあってどこか家庭的な雰囲気を強く感じるのかもしれない。ユニークなのがカウンターや各テーブルに置かれた「喫茶でエッセイ」の手書きポップ。「喫茶 銀杏の木」営業中は店内に多数の書籍が置かれているように篠原さんは大の本好き。「喫茶でエッセイ」もまさにそんな趣味から、ふと始まった同店ならではの企画だ。当初はテーマを設けず、お客に好きに書いてもらっていたが、常連から「何かテーマがあったほうが書きやすいのでは?」とアドバイスを受け、今は2カ月ごとにテーマを設定。たとえば、2024年5、6月は『父のハナシ・母のハナシ』となっていた。

過去つづられたエッセイは店内で自由に読むことができる

「始めた当初は『誰かが一言でも書いてくれたらいいな』ぐらいの気持ちでした。ただ、皆さんしっかり書いてくれて、お客さまからの反響もすごくあったんです。一つひとつ読ませていただき、テーマごとに装丁する作業は大きな楽しみになっています」と笑顔で話す篠原さん。この取り組みはシンプルだけど、なかなか思いつかない。もし自分がペンをとると考えると、文章にするためにあらためて過去を振り返ることができたり、忘れていた何かを思い出すきっかけになりそうだ。それぞれのエッセイを読んでみると、懐かしい思い出に浸りつつ、微笑みながらペンを走らせる人たちの姿が想像できた。

箱作家のババリョウコさんに作ってもらってるマッチ、モーニングチケットなど手作り感にほっこりさせられる

間借りスタイルで「喫茶 銀杏の木」の営業を始め、丸3年を超えた。
「『ひだりうま』さんのお店をお借りして、靴を脱いで過ごす喫茶店というスタイルにとっても惹かれているのですが、さすがにずっと間借りのままというわけにはいきませんし、やっぱり自分のお店を持つという目標は叶えたいと思っています。今の感じはそのままに、もっと『喫茶 銀杏の木』らしさを表現していきたい。『喫茶でエッセイ』のように、お客さまと一緒に本を作り上げていくことも目標のひとつ。やってみたいと思ったことは、楽しみながらやっていけたらいいですね」と篠原さんは笑顔で話してくれた。

篠原さんレコメンドのコーヒーショップは「ANTHEM ROASTERY」

「友人と2人でやっているターバンユニット『 海と波 』のイベントで出会った『ANTHEM ROASTERY』さん。飯塚市にあるのですが、住所や電話番号は公表しておらず、InstagramのDMでやり取りして来店する独特なスタイル。ロースターの古賀さんが焙煎したコーヒーは一言で言うと、キレイで丸みがありスムース。本当においしいです」(篠原さん)

【喫茶 銀杏の木のコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/ハンドドリップ(三洋産業スリーフォードリッパー)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/なし(容器持参の場合のみ対応)
●豆の販売/なし


取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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