コーヒーで旅する日本/四国編|日常目線の店作りで広がった人の縁。お客の数だけ楽しみがある稀有な憩いの場「14g」
東京ウォーカー(全国版)
お客との縁が店を続けるモチベーション

確かに、「14g」は元をたどればコーヒーショップだが、ここを訪れるお客の目的は実にさまざま。豆やお菓子を求める人はもちろん、店内で開かれるアーティストの個展や服の展示会を見に来る人もあれば、イベントやライブを目当てに来る人も。えつこさんも、コーヒーを前面には出さないゆえに、何も知らずに訪れて、あとからアアルトコーヒーとのつながりを知る人も少なくない。ただ逆に、融通無碍な店のスタイルと懐の深さこそが、多くの人をこの場所に惹きつける魅力でもある。えつこさんにとって、そうして縁を得たお客さんと時を経て再会するのも、店を続けるモチベーションになっているそうだ。
「理由はなんであれ、ここに来てくださるのはありがたいこと。一番うれしいのは、一時期来られていたお客さんが、思い出してしてまた来てくれること。高校生のころに来ていて進学、就職したあと、帰省のときに寄ってくれるとか。“昔は制服で来てたね”なんて会話していると、時間の移り変わりを感じられます。感覚としては、駄菓子屋のおばあちゃんに近いですね。お客さんが来たら、“はい、はい”と言って奥から出てくる感じも似ていますし(笑)」

開店から10年を経て、「自分の身になじんだ場所になりました」という、えつこさん。近年はスタッフの独立が相次ぎ、コロナ禍を経て心境にも変化があるとか。「元々イベント出店が多く、最初のころは子どもが小さかったので臨時休業も多かったんですが、コロナ禍を経て、今なら一人でも続けていけるのではと感じました。今では店のあり方をわかってくださる方が増えて。お客さんに理解があり、支えられている部分は大きいですね」。時に、お客が個展の展示を手伝ったり、ライブの参加者が片づけをしたり、自然と動いてくれるのは、ここまで培ってきた関係とえつこさんの大らかな人柄によるところが大きい。一方で、近隣の商店の店主の中には毎日、休憩に立ち寄る常連も多く、「ときどき、“コーヒー飲んだし、仕事に戻ろか”といった声を聞くと、自分の存在意義を感じられますし、一人でお店をやってるわけではないんだな、とあらためて思います」
今でこそ、異業種コラボの店作りも珍しくなくなり、店のスタイルも自由度が広がっているが、「14g」は10年前から先駆けて、ハイブリッドなコーヒーショップとして親しまれてきた。以前は、自身の生活のペースから、開店も不規則だった時期もあったが、「これから、10年助けてもらったお客さんのリクエストに応えて、少しずつ恩返ししていきたい」というえつこさん。先々は、パン作りの再開や、夜のカフェ営業なども考えているとか。時々に形を変えるこの店に、また訪れる理由が増えるかもしれない。

庄野さんレコメンドのコーヒーショップは「HACHIO COFFEE」
次回、紹介するのは、徳島市の「HACHIO COFFEE」。
「2年くらい前に開店した、徳島のニューフェイスです。店主の橋本さんは、コーヒー焙煎卸に勤めていた経験をいかして、ロースタ―として独立。生活感が残る古い民家を、そのまま店として使った営業スタイルもユニークです。橋本さんの愛すべき柔和な人柄も魅力のお店。同世代でもあり、応援したい一軒です」(庄野さん)
【14gのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし(アアルトコーヒー)
●抽出/ハンドドリップ(メリタ)
●焙煎度合い/中煎り~深煎り
●テイクアウト/あり(450円~)
●豆の販売/ブレンド3種、200グラム900円
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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