コーヒーで旅する日本/九州編|飲む人を思い、考え抜くことが味わいに出る。「通山珈琲」は今日も飾らず、心地よく
東京ウォーカー(全国版)

以前、店を開いたばかりのころは深夜まであーでもないこーでもないと焙煎を試行錯誤していたそうで、今でも時間が許せば焙煎をしたいという姿勢は変わらない。シンプルに焙煎をすることが好きで好きでたまらない。結果、自ずと技術が磨かれていったのだろう。
そんな通山さんは店でコーヒーをドリップする際、挽いたコーヒー粉すべてから味わいを抽出するような湯の注ぎ方をする。このようなドリップ方法はともすれば、出したくない部分まで抽出するリスクが大きくなり、それがネガティブな味わいの要素にもなりうる。つまり通山さん自身、それだけ雑味がないと確信を持ってコーヒーを淹れているということだ。

「当店は豆売りがメインですから、豆を購入されたお客様がご自宅で淹れるシーンまでこちらがコントロールするのは不可能です。私自身、そこを一から十まで徹底する気はさらさらなくて、お客様それぞれのライフスタイルに合った方法でコーヒーを楽しんでいただけたらと考えています。そうなるとさまざまな淹れ方、環境にある程度合うようなコーヒーでなくてはなりません。言わばおいしさの幅が広いコーヒー。どの豆もそんな視点で焙煎するのをはじめ、程よいエイジング期間を設けて販売するようにしています」
おそらく、ほとんどのロースターがそこは意識してコーヒーと向き合っているはずだが、「通山珈琲」はその精度が非常に高いと感じる。誰が淹れてもおいしいというのはビーンズショップには不可欠な要素。それを体現できているのは同店の強みだろう。
「SNSでの発信はほぼしていないのに、人づてに聞いたと遠方からもコーヒーを買い求めに訪れる人が少しずつ増えているのは大変光栄なことですし、とても励みになっています」と通山さんは続ける。
真の意味で地域に根ざすとは

通山さんは大学ではもともと保育を専攻。そんな経歴から、いつかはこども食堂のような取り組みにも関わっていきたいと話す。
「僕自身、コーヒーを通して、本当にたくさん助けられてきました。同じように僕もこの場所でだれかを助けられるような存在になれたらうれしい。例えば何か困りごとがある子供が気軽に相談ができるような、あそこに行けばなんでも相談することができる公民館のような、そんな場所になれたらと思っています。社会を変えるというとおこがましいですが、困っている人と助けたい人が繋がるハブのような存在になっていけたらうれしいですね。ロースタリーではありますが、自分ひとりで店をやっていますし、現時点ではガツガツやるんじゃなくてボチボチでいいかな。それよりももっとこの地域に真の意味で根ざした店を目指したい」と話してくれた通山さん。

鳥飼という街に公民館のような存在として根付くコーヒーショップを目指す『通山珈琲』。そんな緩めのスタンスがじわりと琴線に触れるような優しく穏やかな空気感を生み、それがそのままコーヒーの味わいに表れている。
通山さんレコメンドのコーヒーショップは「樹豆珈琲」
「大分県宇佐市にある『樹豆珈琲』さん。僕の故郷の隣町にあるコーヒーショップで、最初は客として足を運んだのがきっかけ。コーヒーはもちろん、いろいろな話をするうちに親交を深めました。店主さんはとても温和で優しいのですが、やると決めたら突き進むパワフルな人。そんな点にも惹かれています」(通山さん)
【通山珈琲のコーヒーデータ】
●焙煎機/GIESEN W1
●抽出/ハンドドリップ(HARIO V60)、エスプレッソマシン(VIBIEMME)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/200グラム1700円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)
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