地域とつながる!スターバックスから発信する未来への贈り物とは?

東京ウォーカー(全国版)

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スターバックス コーヒー 河内長野高向店×大阪府森林組合で、コーヒーの豆かすと木材チップから“たい肥作り”にチャレンジ中!

「コーヒーが森をつなぐ」そんな未来が河内長野市から発信できる日が来るかもしれない。

人口10万人程の河内長野市は、大阪中心部から電車で30分という立地ながら、市内の約70%を森林が占める自然豊かな街。そんな街に21年9月、市内初のスターバックス コーヒー河内長野高向店が誕生した。店内は大きな窓から光が降り注ぎ、明るい木目の家具がゆとりを持って配されている。窓からは豊かな植栽や田園風景が眺められ、自然の中でコーヒータイムを過ごしているよう。そしてこの店では、地域と一緒に未来へつなぐための取り組みが行われているという。

地元の良さを伝えたい!おおさか河内材をふんだんに使った家具や外壁

【写真】明るい店内に、おおさか河内材で作った家具がゆったりと並ぶ

河内長野高向店が誕生するきっかけとなったのは、19年11月に大阪中心部にオープンしたLINKS UMEDA 2階店だ。「スターバックスの森」として地元木材をふんだんに使ったこの店づくりを機に河内長野の地域住民とのつながりが生まれ、今回の出店につながった。

「つながりから生まれた店だから、コーヒーを通じて地域の皆さんの活力やエネルギーとなるような存在でありたい」

そんな思いで生まれたのが河内長野高向店だ。

外壁やエントランスの木材もおおさか河内材だ

地域のつながりのきっかけとなる場所であるために、どんなことが出来るのか?大阪府森林組合南河内支店(以下、森林組合)とともにその方法を模索してきた。その1つが、地域の資源・おおさか河内材を活用することだ。

店内のブラックボードでイラストや写真を用い、おおさか河内材を紹介

おおさか河内材は地元のスギやヒノキで、緻密な木目と、ヒノキは薄くピンクがかかった色味が特徴。店内のテーブルやイスはこの木材を使い、家具を森林組合と飛騨産業株式会社とで共同開発したもの。まわりの豊かな自然と相まって、店全体からコーヒーと木のあたたかさを感じる空間だ。

スギなど柔らかな針葉樹は家具に適さないとされているが、圧縮することで強度を増し、家具の資材に

「家具に触れると、丸みのある感触で気持ちいいんです」とは、店長の趙珠希さん。同店勤務を機に河内長野市で暮らすようになったが、自然の豊かさと空気の美味しさにこの土地の魅力を感じると言う。

「おおさか河内材は地元でも知らない方がいます。そういう方にはまずこんな素晴らしい木材があることを知っていただきたいと思っています。実際、地元にこういう木材があるんだということに感銘を受けてくれる方がたくさんいてうれしいです。私たちも河内長野の森林で大切に育まれたおおさか河内材に囲まれて働けるのは喜びですね」

「コロナ禍が収束したら、河内長野の森林でコーヒーを飲むイベントをしたい」と未来を描く趙さん

こうした木材の利用から地元に素晴らしい資源があることを知り、地域の方々が森林について考えるきっかけになってほしいと、大阪府森林組合南河内支店 森林ESD/プロモーション担当の倉橋陽子さんは話す。

「森林からの恩恵を受けて生活していることはなかなか気づきにくい。例えば河内長野市の水源の一部である石見川は、水質が良いというAA類型に属するほど水がきれいで美味しいんです。しかし森林を守らなければ川はゆっくり流れません。森林を手入れしなければ土砂崩れなど、災害が起こる可能性も高くなります。このように私たちの生活に森林が密接にかかわっていることを、店舗をきっかけに知り、興味を持ってもらいたいです」

木糸のタペストリーに、コーヒー豆をモチーフにしたアートを施している

壮大なチャレンジへ!コーヒーの豆かすと森林組合の木材加工で出る木材チップからたい肥を作り、苗を育て、森へ帰したい

豆かす、木材チップなどを混ぜたボックスを入れ、発酵を促しているコンポスト

もう一つ注目すべきは、「コーヒーの豆かすと木材チップでたい肥作り」をしていることだ。屋外の敷地にたい肥を作るコンポストを設置。店舗で出るコーヒーの豆かすと、森林組合からの木材加工で出る木材チップを混ぜ入れ、たい肥を作る試みを行っている。1カ月に1回、豆かすと木材チップの様子を見ながら配分を変えて作り、数日おきにかき混ぜるなどして発酵状況を確認。6カ月程度でたい肥が完成する。

毎回、豆かすと木くずの重さをはかって比率を変えて配合している

河内長野市の森林では今、国産木材の需要と供給のバランスから植栽が進んでいないこと、また将来の担い手が少ないことなどの課題があるという。

「そこで、家具や外壁などのハード面だけでなく、ソフト面でも何かしたい!と、継続的なプロジェクトとしてたい肥作りを行っています。地域の課題に寄り添い、店舗での活動が地域の皆さんの気づきのきっかけになればと考えています。パートナー(店舗スタッフ)は市内在住者が多いので、土いじりは日常的。みんなで楽しく作業しています」と趙さん。

箱ごとに日付や配合したものを記入。科学の実験のようだ


たい肥作りは森林組合がレクチャーし、店舗パートナーとともに作業に当たっている。

10月のある日、そのたい肥作りを見学させてもらった。すると「豆かすの水をもっときった方がいいですか?」「水をきりすぎても発酵が進まないのよ」と、森林組合のスタッフに尋ねながら真剣に取り組む趙さんほかパートナーの姿が。

左がこの日仕込んでいるもの。右は1カ月前に仕込んだもので違いは一目瞭然!


1カ月前に仕込んだ箱の中を確認すると豆かすや木材チップの形跡はほとんどなく、サラサラの土のような様に「おお…!」と、自然の力に対する驚きと喜びが混じった声が上がる。「こういう“見えない力”の面白さをたい肥作りを通して知ってもらいたい」と森林組合の倉橋さん。「森林は50年、100年も前に人が植えてくれたものの恩恵を受けています。見えない力が私たちを支えてくれている。それを私たちも未来へつないでいきたいと思っています」と語ります。

森林組合の倉橋さん。ほかにも鎮守の森コミュニティ研究所 特別研究員など、森林と人の暮らしのための活動を多岐にわたって行っている

このプロジェクトには大きな夢が広がっている。ここで出来たたい肥を敷地の植栽に使用していくこと。そしていつかは、店舗の敷地でコーヒー豆と木材チップのたい肥を活用しながら木の苗を育て、その苗を、河内長野の山に返したいという想いがある。

店からも河内長野の山々が見渡せる。この森林を未来へつないでいくのは私たちなのだ

いつか河内長野の山々にスターバックス育ちの樹木が青々と茂る日がやってくるかもしれない。50年先、100年先を見据えた道のりは、まだ始まったばかりだ。

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