無限に自慢話ができる「武勇伝聞いてくれる会議」って知ってる?商品訴求をしないキャンペーンが奏功した理由

東京ウォーカー(全国版)

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「ビールに合うチーズ」という未開拓分野に切り込み当初計画より大幅な売上げを達成!

本キャンペーンには「お客様の興味やニーズに刺さる企画を」という思いがあったと坂本さんは話してくれたが、さまざまなアプローチが考えられるなかで、「武勇伝聞いてくれる会議」という形に落ち着いた理由はなんだろうか?

2023年4月1日に発売になった「魚Chee ピリ辛マグロ」(左)と「魚Chee 燻製カツオ」(右)【撮影=三佐和隆士】

「それには魚Cheeという商品特性が大きく関わっています。そもそも魚Cheeは40〜50代をターゲットに商品企画を考えていました。開発前、お客様たちの晩酌について調査したんです。普段の晩酌がどんな内容なのか、どんな気持ちで飲んでいるのか。すると、ビールのつまみが侘しいという意見が出てきました。日中仕事を頑張ってきたのに、晩酌をしても満たされない気持ちがあると。また、調査からはコロナ禍もあって飲み会に行きづらくなったとか、上司が部下を誘いにくくなった、ひいては自慢話をしにくくなったという状況があるということも見えてきました。そういった時代だからこそ自分のことをいくらでも語れる場所をキャンペーンとして提供していきたいと考えました」

魚Chee自体は約2年半前から開発がスタートした商品。コロナ禍で家飲み需要が高まっているにも関わらず、おつまみ系チーズが拡大していないといことに目をつけた坂本さんが「ビールに合うチーズ」をコンセプトとして開発していった。

根っからのビール党の坂本さん。「ビール好きを増やしたい」とビール会社の人のような発言が飛び出すものの、これまでに20以上のヨーグルト、チルド飲料、チーズの商品開発に携わってきた【撮影=三佐和隆士】

「ビールユーザーは非常に多いのに、そこに特化した商品がないのはもったいないと感じていました。私自身もビールが大好きで、ビール離れという言葉も嫌いなんです。ビールはたくさんの人に愛されているのに…という悔しい気持ちがあって。ビールをより盛り上げていきたいなという思いもありました。弊社ではビールは作っていませんが(笑)。また、魚Cheeは『クラフト 切れてるチーズ』のサブブランドとして展開しています。弊社の『クラフト 切れてるチーズ』はロングセラーの商品なのですが、新しいお客様を取り込んでいきたいという思いがありました。『切れてるチーズ』を食べたことがない、最初から切れていることの利便性を体感されたことがない方も多くいらっしゃるので、おつまみに特化した商品を作ることで、ブランド全体に興味を持っていただけたらと考えています」

未開拓な分野なだけに、開発には非常に苦労が多かったのだそう。

大きさと厚さにもこだわった魚Chee。小さいサイズは作ることが難しく、製造現場からはもっと大きいサイズで製造してはどうかと言われたが、食べやすいひとくちサイズが重要であることを力説。結果、25mmサイズ、厚さ4.5mmで販売することができた【撮影=三佐和隆士】

燻製カツオ(左)とピリ辛マグロ(右)の2種類が出ている魚Cheeは、いずれも魚の旨みが存分に感じられる味わい【撮影=三佐和隆士】

「一番大変だったのは、具材の部分ですね。魚Cheeにはマグロや燻製カツオなどの魚介珍味が入っているのですが、材料を探すのが大変でした。通常、チーズに何か具材をいれる場合は、商社を通じて専門業者が持っている材料を卸して使っているのですが、魚を使った小さな具材がそもそも存在しませんでした。魚介の珍味を扱う業者がそもそも少ないうえに、具材の食感は残しつつもチーズを邪魔しない大きさに加工してもらうところからお願いしなければならないので、弊社の食品開発研究所チーズ研究室で魚Cheeの開発を担当している西岡照洋と一緒にさまざまな業者を巡りました。ほかにも、どうやって魚の生臭さをなくすのか、魚と乳というかけ離れたものを合わせたときにどうやって品質管理をしていくかという問題がありました。おつまみに最適な厚みについてもこだわりましたね。ビールは口の中を洗い流すようにごくごく飲みたいものですが、そこをチーズの乳(にゅう)感が邪魔しないようなサイズを模索していきました。業者の方や、弊社のさまざまな部門の者と問題点をひとつずつつぶしてやっとお披露目できました」

商品開発にあたっては課題が多かったが、コンセプトなどを突き詰めて開発された分、キャンペーンについては企画が決まってからは順調に準備が進んだという。

「『武勇伝聞いてくれる会議』も『夢が叶うPHONE&わざと周りに聞かせるPHONE』も魚Cheeを家でつまむだけではなく、キャンペーンと一緒に楽しんでもらえる付加価値のある喫食体験ができるものとして作り上げていこうというコンセプトがあったので、さまざまなアイデアを出し合いながらスムーズにやっていけましたね」

おふざけ要素の強いキャンペーンに対して、社内から反発の声はなかったのだろうか?

「むしろ、こういうサービスを待っていました!というような反応もありました。魚Cheeはターゲットとしている層の晩酌に対しての気持ちや、時代背景をくんだ商品ですから、社内の40〜50代の社員からは共感を得られましたね」

商品そのもののコンセプトがしっかりとあり、キャンペーンも同じコンセプトを持たせることでブレない展開がターゲット層に刺さったのかもしれない。発売からおよそ1カ月で出荷がシリーズ計100万個を突破。計画比240%と好調に推移している。

「一般的なおつまみチーズと比べると、30〜60代の男性が購入層として多いというデータが出ています。従来の『クラフト 切れてるチーズ』は割合として女性が多いというのがあるので、新しい層を取り込めていると考えています。Twitterでも商品名を出してツイートをしてくださっている方が多くて、施策の効果を感じています。今後の展開についてはまだ具体的な内容までは決まってはいないのですが、魚Cheeを体験してもらえるような機会・場を創出できたらと思っています」

「武勇伝聞いてくれる会議」のサイトは当面据え置き。魚Cheeとビールを片手に武勇伝(愚痴などでもいいかもしれない)に興じつつ、次回の展開を待ちたい。

この記事のひときわ #やくにたつ
・商品ターゲットとキャンペーン内容を合わせることで、商品を前面に出さなくても効果が期待できる
・頭ひとつ抜けたおもしろさを提供することで、商品を知ってもらえる
・新規客を取り込むためには未開拓分野に切り込む勇気が必要

取材・文=西連寺くらら

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