コーヒーで旅する日本/関西編|エルサルバドルとの縁をきっかけに、「COYOTE」が伝えるコーヒー生産地のリアル

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

抽出に使うマーナドリッパーは、穴が真下でなく少し上に付いているのが特徴。一気に湯が落ちないぶん、豆をしっかり蒸らすことができる


関西編の第73回は、京都市の「COYOTE」。エルサルバドルのコーヒーを専門に扱うオンリーワンの個性で、注目を集める一軒だ。店主の門川さんは、JICA海外協力隊としてエルサルバドルに渡って、産地のコーヒー輸出振興に尽力。その経験を生かし、帰国後にインポーターとして現地の豆の輸入から焙煎・販売まで携わる、ユニークな経歴の持ち主だ。身をもって農園の仕事を体験し、リアルな産地の事情を知るだけに、常に生産者目線でコーヒーに向き合う門川さん。近年、さらに現地とのつながりを深めるなかで、エルサルバドルのコーヒーを通じて伝えていきたいこととは。

店主の門川さん


Profile|門川雄輔(かどかわ・ゆうすけ)
1992(平成4)年、京都市生まれ。学生時代、バックパッカーとしてコロンビアのコーヒー農園を訪れたのを機に、コーヒーのバイヤーを志し、卒業後、京都の小川珈琲に入社。営業担当を務めた後、JICA海外協力隊に応募し、2018年からエルサルバドルにマーケティング隊員として派遣。チャラテナンゴ地区の生産者組合を立ち上げるなど、現地のコーヒー輸出振興に携わる。コロナ禍により、2020年に一時帰国し、エルサルバドルのコーヒー豆の輸入・販売をスタート。2021年に初の実店舗となるカフェ「COYOTE the ordinary shop」をオープン。2023年に姉妹店のビーンズショップ「COYOTE the roots」を開店し、今後は焙煎所として改装予定。

産地のリアルを体感したエルサルバドルでの日々

町家を改装した「COYOTE the roots」。現在、店内は改装中

近年、名前を聞くことが多い中米のコーヒー生産国の一つ、エルサルバドル。といっても、どのあたりに位置するのか、パッと思い浮かぶ人は少ないはず。「COYOTE」店主の門川さんは、そのエルサルバドルに約2年滞在し、コーヒーの生産から輸出まで現地の事情を体感してきたユニークな経歴の持ち主。「ラテン系の国ですが、現地の人々は穏やかで人懐っこい方が多くて。日本にいるより、むしろ現地にいる方が心地いい(笑)」というほどに。「COYOTE」とは、現地で中間業者を指すスラングであり、文字通り、エルサルバドルのコーヒーを日本に広める窓口として、関西でも稀有な存在だ。

遡れば、門川さんがコーヒーとの縁を得たのは、学生時代に世界を旅した時に訪れた南米・コロンビアのコーヒー農園でのこと。「その頃は単なるコーヒー好きで、行ったのも観光向けの農園でしたが、植物として栽培されているコーヒーや、加工のプロセスを初めて目にした驚きが大きくて」と振り返る。その体験冷めやらぬまま、大学卒業後はコーヒーに関わる仕事を求めて、地元のコーヒー焙煎卸の老舗・小川珈琲に就職。営業担当として働いていたが、実際の仕事は想像していたものとは違っていたようだ。

ACOPACAの豆は、「COYOTE」のロゴ入り麻袋で運ばれて来る


「当時から、生豆を取り扱うグリーンバイヤーに憧れて、産地とのつながれる仕事を求めていたんですが、営業の仕事は取引先への卸の仕事が主。当時はまだ、コーヒーの流通の仕組みをよく分かってなかったんですね」。ただ、コーヒーの品質は生豆のクオリティが大きく左右することは実感した門川さん。この頃には、すでにサードウェーブの波が日本にも広がり、各地にロースターやバリスタが増え始めていた時期。先々の独立を考えた時に、「今からでは他の人に追いつけない。だから誰もやっていないことをしないと、と思っていました」。そう考えていた折に見つけたのが、エルサルバドルでのJICA国際ボランティアの募集。まさに渡りに船のタイミングとあって、即断即決。仕事を辞し、2018年から現地へと渡った。

「この時の派遣は、現地のチャラテナンゴ地区のエリアプロモーション、将来のコーヒー輸出振興が目的で、ボランティアよりビジネス色が強いプロジェクトでした。ただ、実際に行ってみたら、農園に住み込みで栽培に携わり、エクスポーターの立場として生産現場に関わりました。大げさに言うと、かつての移民のような感覚で、リアルに生産者事情を体感したのは貴重な経験でした」と門川さん。農園での仕事以外にも、ラボでの焙煎やカッピング、輸出関連の業務、品評会のサポートまで多岐に渡ったという。

販売用の豆はすべてギーセン6キログラムで焙煎。サンプル焙煎用にAillioを使用


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