コーヒーで旅する日本/関西編|台湾産コーヒー復権の立役者。「GOODMAN ROASTER Kyoto」が伝える“幻のコーヒー”の進化と真価
東京ウォーカー(全国版)
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。
関西編の第72回は、京都市の「GOODMAN ROASTER Kyoto」。台湾で創業し、2019年に日本初の姉妹店としてオープン。ロースタリー激戦区・京都でも注目を集めるユニークな一軒だ。店主の伊藤さんは、現地の農園で台湾産コーヒーに出合って以来、本格的にコーヒーの世界へ。自らが衝撃を受けたその味の、復活と普及を目指して現地に移住し、一時は幻と言われたコーヒーの存在を再び広めた立役者の一人。進境著しい現地のコーヒーシーンを体感してきた、伊藤さんが提案する台湾コーヒーの魅力と、これからにかける期待とは。
Profile|伊藤篤臣(いとう・あつおみ)
1981年(昭和56年)、東京都生まれ。スターバックスコーヒーでの勤務を経て、各地の伝統的な産物を中心としたセレクトショップ・藤巻商店に転身。店長を務めていたときに、台湾産コーヒーの存在を知り、現地の農園を訪れると共にコーヒー本来の味の魅力に開眼。以来、独学でコーヒーの知識・技術を深めながら、台湾コーヒーの復権を目指して現地の農園をたびたび訪問。2010年から台湾に移住して、現地で普及宣伝を行うAlisan Projectを展開。2014年、台北で「GOODMAN ROASTER」を創業し、現地で2店をオープンしたあと、2019年、京都に日本初の姉妹店「GOODMAN ROASTER Kyoto」を開業。
阿里山の風景と共に刻まれたコーヒーの原体験
年々広がりつつある新たなコーヒーの産地の中でも、注目を集めている国の1つが台湾。近年、急速に品質向上を果たし、いまやそのユニークな風味で存在感を増している台湾のコーヒーを広く知らしめた立役者の一人が、誰であろう店主の伊藤さん。一時は“幻の”とも言われたコーヒーの復権、その始まりは15年ほど前に遡る。
当時、スターバックスコーヒーを経て、伝統産物を中心に扱うセレクトショップ・藤巻商店に勤務していた伊藤さんが台湾を訪れたのは、まったくの偶然から。「スターバックス時代の同僚に“台湾でもコーヒーが採れる”という話を聞いて、仕事にも役立つかと思い、個人的に台湾の阿里山にあるコーヒー農園を訪れたんです。初めての経験でしたが、周りに山々が連なる農園の壮大な光景に心打たれました。そんな自然の真っ只中で飲んだコーヒーは、お茶やパイン、ライチ、マンゴーといった土地本来の風味が伝わってきて。それまで、深煎りのコーヒーを飲みつけていたこともあり、対極にある浅煎りのコーヒーの魅力に存分に取りつかれました」と振り返る。街なかの店ではなく、山懐の農園の中で味わった一杯は、忘れがたいコーヒーの原体験として今も心に刻まれている。
台湾での鮮烈な出合いを経たことで、帰国後、「この味をもっと広めたい」と、猛烈な勢いでコーヒーに関する知識、技術を学び始めた伊藤さん。実際にコーヒーを扱うスキルの不足を埋めるべく、東京のスペシャルティコーヒー専門店の店主と交流を広げ、カッピングに参加するなど、独学でコーヒーへの造詣を深めていった。その過程で知り得たことの1つが、台湾のコーヒー栽培が、実は1825年の日本統治時代に始められたという歴史。当時の農業政策の一環としてコーヒー栽培が進められ、明治時代には、日本に宣伝・普及するための台湾喫茶店が登場し、時の皇室にも献上されたという。戦後、コーヒーノキはほとんどすべて伐採され、一時は途絶えたかに見えたが、2000年代に入ると農園の若手後継者が“幻のコーヒー”復活へ向けて動き始める。伊藤さんが台湾を訪れたのは、ちょうど現地の機運が高まり出した頃。日本との縁の深さを知ったことも、台湾のコーヒーに傾倒した理由の1つだ。
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