多様性のある社会を目指して。CQラボが提唱する異なるバックボーンを持つ人と協働するために求められる能力とは?
東京ウォーカー(全国版)
日本はひとりぼっち?日本でダイバーシティが進まないワケ
“ホフステードの6次元モデル”を用いることで、各国の価値観が数値で表現できることがわかった。すると、似た価値観を持つ国をグループ化できるという。
「CQラボでは7つのグループに分けているんですが、大変興味深いことに、日本は日本だけでひとつのグループなんですね。似た国がなくてひとりぼっちなんです。これは私の個人的な体験ではあるんですが、海外に行ったときになんでこんなに孤独感や疎外感を感じるんだろうと、自分だけが他の国と違うと感じていました。それは6次元モデルを見ると納得感があるんですよね」

6次元モデルで日本の位置をみると、不確実性の回避と達成志向が高いことがわかる。
「これは行動の予測がつきづらいマイノリティを疎ましく思う傾向があり、マイノリティを支配しようとする意識傾向にあるということです。日本にとってダイバーシティやインクルージョンというのは最も難しいテーマのひとつであることがここからわかります。例えば、日本企業で外国人を採用する理由を聞くと、ダイバーシティ強化だとか、社内を活性化させたいというような答えが返ってくるんですが、蓋を開けてみると、非常に高い日本語能力を求めていたり、日本人みたいに空気を読んでもらわないとダメと思っていたり、日本文化への理解を求めていたりするんですね。これはダイバーシティやインクルージョンではなく、自分たちのやり方に“同化”させているわけです。」
では、どうしたら日本でダイバーシティが実現していくのだろか?
「視点を増やすことです。価値観をメガネだと考えてみてください。自分たちの刷り込まれているメガネしか持っていないと、自分の価値観しか知らないので、他の人の価値観に対していいか悪いかというというジャッジメントをするような見方しかできないんですね。そこに対して、CQナレッジを持つことで違う人の倫理観や価値観を知ると、いろいろなメガネを掛け替えることができる状態になります。ほかの価値観への共感が高まり、異なる価値観との橋を架けることができるようになります」
メガネのレパートリーを増やすことは、CQのコンピテンシーであるCQストラテジー=メタ認知能力を高めることだという。CQラボではメタ認知能力をどうやって高めるのだろうか?
「シナリオを用いたシミュレーションや対話といったワークを行います。例えば、国際会議を想定して、ワーク参加者にそれぞれの国の人になりきってもらう。どの国の人にどんなことをしてもらうとうまくいくのかを体験してもらいます。これは当然難しいことなんですけども、別の国の人がどう世界を見ているのかを、ロール(役割)に没入することで理解でき、結果、視点を変えることができるんです」
ダイバーシティやインクルージョンが難しい日本の価値観。「それ自体が“悪い”ということではないですよ」と田代さんは話す。
「私たちがお伝えしたいのは、価値観を変えましょうということではなく、異なる文化をつなげる橋を架けましょうということ。そして、橋の架け方はひとつではありません。ナレッジが深まればおのずとストラテジーもわいてきて、さまざまな方法を試すことできる。CQのサイクルが回るようになります」
CQを知ることで生きづらさが解消されたという声
CQラボでは法人・個人それぞれに向けてワークショップやコーチング、コンサルティングを随時行っている。コロナ禍の最中である2021年に設立されたこともあり、オンラインを利用したサービスも豊富だ。
「CQというのは異文化適応力だというお話をしてきました。国の文化が価値観に一番大きな影響を与えるということもあって、CQはいわゆるグローバルなシチュエーションに対して有効と思われるかもしれません。しかし、文化というのは国の違いだけではなく、職業、年齢、ジェンダー、地域とあらゆるグループそれぞれに存在するものです。つまり、日本人だけの会社でも、結婚相手にもその人が所属するグループの違いから、価値観の違いというものは発生します。つまり、CQというのは日常生活のありとあらゆる場所で有効な能力なんです」
実際、CQラボの受講者にはグローバル企業に勤めている人以外からの参加者も多く、その属性は多岐にわたるという。
「家庭と育児の両立だったり、ジェンダーバイアスだったり、働き方そのものに対して、受講生のみなさんそれぞれ悩みや生きづらさを抱えていらっしゃる。CQラボでは、CQについて初めて学ぶ人向けの基礎コースを用意しており、5月11日(土)に開催予定です。過去、この講座を受けたことで、自分の生きづらさがどこに由来しているのかがわかり、気持ちが晴れたという感想を持ってくださる方も少なくありませんでした。CQを上げるためには絶え間ない努力が必要で、講座を1回受けたからといって明日からCQが高くなるということではないですが、基礎コースでも受講生の方々からは前向きなコメントをもらえて、私たちとしても大変うれしく思います」
CQラボの講座ではCQの知識だけではなく、ロールプレイをすることで実践的にCQを高めることができる内容になっているそう。他者とのギャップで悩むということは仕事、プライベートのどちらでも起こりうること。その差をどう解消していくのか。CQを知ることでその手がかりが見つかるかもしれない。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・国籍に関わらず、さまざま人と協働するには、相手の価値観を知ることが大事
・理論だけではなく、実践が大事
取材・文=西連寺くらら
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