「とにかく履いてみることが大切」革靴のプロが教える“最初の一足”の選び方と長持ちさせるコツ
東京ウォーカー(全国版)
ビジネスシーンや冠婚葬祭では必須の革靴。足元のおしゃれとしてだけでなく、性格や生活習慣を表すとも言われており、ビジネスシーンでは人柄を判断する材料になることも。
しかし、いざ革靴を購入しようとなった際に「どう選べばいいかわからない」と悩む人も多いのではないだろうか。また、せっかくよい革靴を買っても、保管方法や手入れの方法がわからず、長持ちさせられなかった経験もあるのでは。
そこで、ロングセラーの革靴ブランド「スコッチグレイン」を手掛ける株式会社ヒロカワ製靴(以下、ヒロカワ製靴)スコッチグレイン営業部の三川成男さんに、初めての一足に最適な革靴や手軽にできる手入れの方法について話を聞いた。

革靴の製法から見る入門者におすすめの一足
革靴の起源はかなり古く、古代ローマやギリシアの時代にさかのぼると言われている。現代のような形になったのは15世紀の中世ヨーロッパ。結婚式やパーティーといったドレスコードの厳しい場で雰囲気を統一するために着用されていたそう。
19世紀に入ると生産体制が整い、世界的に普及するようになった。日本も例に漏れず、革靴はビジネスシーンをはじめとしたフォーマルな場で履くものとして浸透している。

「革靴はアッパーやレース、爪先の形状によって細かく分類されており、その種類は多岐にわたります。そのなかでもわかりやすい違いとして、3つの製法による革靴の分類があります。『グッドイヤー製法』と『マッケイ製法』そして『セメント製法』です。これらは、製法によって価格帯も異なります」
「グッドイヤー製法」によって作られた革靴は非常に頑丈で、修理して何年も長く履ける点が特徴。しかし、頑丈であるがゆえに複雑な製法のため、数十万円するものもあり、高価なので上級者向けとされる。

甲革とソールを直接縫う「マッケイ製法」は、「グッドイヤー製法」よりも製造コストを抑えられ、比較的軽くて足に馴染みやすい。修理ができないことが多く、価格帯は3万円前後のものが中心で、中級者向けだ。

大量生産できる「セメント製法」は、甲革とソールを接着剤で圧着して作る革靴。使用されている革も安価なものが多いため、使い続けると傷が目立ち、持ちもあまりよくない。また、修理はできないが、数千円から1万円台くらいの価格帯で気軽に購入できるので、入門向けとされる。

「最初の一足には『セメント製法』がおすすめですが、長く使うことを考えると『マッケイ製法』もアリだと思います。『グッドイヤー製法』はさらに革靴に興味を持った人向けなので、“ゆくゆくは”というイメージですね。また、晴れ・雨で使い分けるのと、靴に休息を与えるために3~4足ほどそろえておくのがいいです。同じ靴を毎日履くよりも2、3日空けて履くほうが、革が長持ちします」
意外と知らない手入れの手順とより簡単な方法
革靴の手入れといえば、ブラシやクリーナーなどさまざまな道具を用いて、工程も多く複雑な印象がある。正しい手順で手入れしたくても覚えられず、「もっと手軽な方法があれば」と考えることも多い。そこで、基本的な手順と、初心者でもできる方法を聞いた。

「まず、基本的な手順を少し簡略化してお話します。最初に、革靴表面のホコリや汚れをブラシで落とします。そのあとにブラシでは落としきれない汚れをクリーナーで拭き取り、革靴に付いていた汚れを落とし切る。そして、乳化性クリームを革全体に塗り込み、残った分は拭き取ります。残っていると革が傷むので、しっかり拭き取ってあげてください。仕上げに、ツヤ出しのためのワックスやポリッシュを塗り、ブラシで磨いて完了です」

初めて革靴を買って、さらに道具をそろえて手順を覚えるというのは、入門者には難しそうだ。長く革靴を使いたいが、あまり手間をかけられないという人には少しハードルが高い。
「より簡単なお手入れ方法が、着なくなったTシャツとストッキングを使った方法です。まず、着なくなったTシャツで靴の汚れを拭き取ります。そのあと、踵などの見えづらいところからクリームを塗っていくんですが、拭き取りにはストッキングを使います。最後にワックスを塗り、またストッキングで拭き取って完了です」
ストッキングを使うと繊維が付かず、簡単に余分なクリームを取り除くことができ、摩擦もあり艶が出る。これなら、いらない布とストッキングという、比較的身近なものに乳化性クリームとワックスを買い足すだけだ。

三川さんによると「乳化性のクリームは拭き取りが必須のものを」とのこと。なかには拭き取り不要の便利なものもあるが、使い続けていると革の表面に薬品の膜ができて革の呼吸を防いでしまうため、避けたほうがいいのだとか。
「革靴にとって、湿気は大敵です。雨の日は着用を避けるか、ウォータープルーフのものを履くようにしてください。やむを得ず濡れてしまった場合や汗による湿気が気になるときは靴の中にシューズキーパーを入れて、革底などは爪先を浮かせた状態で、風通しのいい日陰で保管しておくとよいでしょう」

革靴を長く使うためには湿気をうまく除去することが大きなポイント。特に雨が多く湿気が出やすい時季は、天気のいい日を見計らってなるべくシューズキーパーを入れてベランダで陰干しするのがいいそう。ヒロカワ製靴の公式サイトではより詳細に手入れの方法について解説しているので、そちらも要チェック。
「とにかく履いてみることが大切」
新型コロナウイルスの流行により外出規制があった影響で、現在も継続してテレワーク中心となっている企業も多い。それに伴い、革靴を買う人は減っているが、いざ買うとなったときに「選び方がわからない」という人も増えているようだ。また、昨今は“バッチリフォーマルな革靴”よりも“カジュアルにも履けるような革靴”が選ばれる傾向にある。
「目的に合わせた革靴を購入することが大切なので、店舗ではお客様のニーズを聞き出すように心掛けています。そのため、わからないことも不安なこともスタッフにたくさん聞いてほしいです。靴にも段階があるので、仕事内容やキャリアに合わせて買うのがいいと思います。無理して背伸びしたものを買うと懐にも足にもよくありません」

続けて、サイズ選びについては「革靴は履くほどに表革と裏革が伸びてきて、中底と本底に曲がり癖がつき、足馴染みが増していきます。ジャストサイズで履くのが主流ですが、少しゆとりがあるものからスタートして馴染みと伸びを経験するのもいいですよ」と話す。ただし、フェイクレザーやエコレザーといった合皮は馴染みにくいので注意が必要だ。
「ネット通販も普及していて便利ではあるのですが、まずはお店で話を聞きながらいろいろ履き比べてください。でも、その場で無理して買う必要はなく、断っていただいても大丈夫です。試着してから、後日ネット通販で購入するのもいいと思います。とにかく、履いてみることが大切なのです」

ひと言に「革靴」といっても、製法や形状にはさまざまなものがある。試着して、自分に合った一足を探してみよう。
取材・文=織田繭(にげば企画)
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