コーヒーで旅する日本/九州編|自分にとってなにが一番豊かなのか。考え、悩みたどり着いたありのまま。「nageia coffee」
東京ウォーカー(全国版)
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州・山口はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州・山口で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

今回、
Cafe一雨
からバトンを繋いでもらった「nageia coffee」。実は以前、本連載でも紹介した熊本市の
COFFEE BLUE
の店主・木下さんに「大分県竹田市にステキなロースタリーがあるので、もしお近くに寄られた際には」とおすすめされていた。

レコメンドしてくれたCafe一雨も、COFFEE BLUEも、ともに静かで穏やかな空気感をまとったコーヒーショップであり、かつ「nageia coffee」は竹田市という自然豊かな町に店を構えていることから、きっと喧騒とは無縁のコーヒーショップだろうと想像していた。
屋号は“梛(なぎ)”という植物の学名で、海で風や波が穏やかな状態を指す“凪(なぎ)”にも通じる。
JR豊後竹田駅の目と鼻の先。竹田の城下町に新しくも優しい風を吹き込んでいる「nageia coffee」の魅力に触れてみたい。

Profile|志賀翔太(しが・しょうた)
大分県久住町生まれ。高校卒業後、農機具メーカーに就職。地元や大分市内などで働く中で、結婚。少しずつ日々のライフスタイルが変わっていく中で、自分が本当にしたいことは?と自問し、飲食の道へ。その後、コーヒーのおもしろさに開眼。大分市のロースタリーで働いた後、2020年10月に「nageia coffee」を開業。
高原を吹き抜ける穏やかな風のような

デスクワークのお供にコーヒーをたっぷり注いだマグカップ、登山やキャンプなどアウトドアでの休息で湯を注ぐだけと手軽なドリップバッグ、移動中に車内で飲むコンビニコーヒーや缶コーヒー。種類、淹れ方、シチュエーションもバラバラだが、コーヒーを飲む行為という点では同じ。ただ、コーヒーは飲む環境や時間、誰と、といった要素で味わいの感じ方が変わる飲み物だと思う。

そういった意味で「nageia coffee」で飲む一杯のコーヒーは、心を落ち着かせ、穏やかな気持ちにさせてくれる。その一番の理由は、店主の志賀翔太さんが醸し出す雰囲気。落ち着いたたたずまいで物静かだが、会話をすると言葉の端々に凛とした人柄が垣間見える。一つひとつの言葉に深みがあり、話していて不思議と穏やかな気持ちになった。
志賀さんは大分県久住町生まれ。くじゅう連山、久住高原に代表される高地に位置する町で、冬は九州では珍しく日常的に積雪するほど。幼少期から自然豊かな小さな山村でのびのびと暮らした。
高校卒業後は農機具メーカーに就職し、作曲家としても活躍する佐賀県出身の小由実さんと結婚。暮らしの本質的な豊かさを大切にする彼女と一緒に暮らす中で「本当に自分がやりたいことってなんだろう」と考えるように。
「漠然と飲食店をやってみたいと考えていて、転職を決意しました。いろいろ経験する中で、家で豆から挽いて、ハンドドリップして日々コーヒーを楽しむ妻の影響もあって、コーヒーに強くひかれたんです」

当時、大分市に住んでいた志賀さん。いまや大分のスペシャルティコーヒーを代表するロースタリー、
スリーシダーズコーヒー
が西大分にオープンし、そこで飲んだエチオピアのコーヒーに衝撃を受けた。
「確かプロセスはウォッシュドだったと思うのですが、ジンジャーやレモンのような華やかな香りで。その出会いがあって、もっとコーヒーのことを勉強したい、おいしいコーヒーを淹れられるようになりたいと思い、スリーシダーズコーヒーで働かせていただきたいと考えました」

その当時から近い将来、ロースターとして独立したいと考えており、開業資金を貯めるために夜はホテルでダブルワーク。志賀さんは苦笑いで当時をこう振り返る。
「お恥ずかしい話しですが、当時はすごく焦っていました。30歳を過ぎて転職を決意して、コーヒーの世界に入ったのは32、33歳。将来的に独立することを考えると、遅すぎたと考えていました。そんな時にコロナ禍になり、ダブルワークで入っていたホテルの仕事がなくなって。1日でも早く焙煎のスキルを身に付けたいと考え、まだ早いとはわかっていましたが焙煎に挑戦させてもらいました。もちろん店の商品のローストはできませんので、あくまで自身の勉強のために焼き始めました」と志賀さん。
コロナ禍というだれも予想できない状況下、焦燥感があったのは非常にわかる。きっと、なにかアクションを起こさないと、少しでも前進しないとと誰しも思うはずだ。裏を返せばそれだけコーヒーに対して本気で取り組みたいと思っていたということ。そこからは、志賀さんは自身の素直な声を大切にすることにした。
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