コーヒーで旅する日本/四国編|コツコツと信頼を積み重ねて20年。逆境のスタートから切り拓いたロースターの新境地。「BRANCH COFFEE」
東京ウォーカー(全国版)
ロースターとしての矜持を貫いた試行錯誤
産直で豆を仕入れるようになったことで、「もっとシングルオリジンの魅力を伝えたい」との思いを強くした越智さん。焙煎機の入れ替えを機に、それまで深煎りのブレンドが中心だった豆の焙煎度も、浅煎り中心に一新した。とはいえ、「今まで浅煎りを打ち出したことがなかったから、ある意味で賭けでした。最初は、25キロ窯での週1回の焙煎でこと足りるくらいの量しか売れませんでしたから」という通り、突然の変化に戸惑うお客も少なくなかった。それでも、半分以上は焙煎度を中煎り前後にして、豆のテロワールを感じてもらおうと努めた。
一方、カフェのメニューでは、豆の個性がダイレクトに出せるフレンチプレスで提案。現在は、ブレンド3種、シングルオリジン7、8種と幅広く、うち1、2種は希少なCOE(カップ・オブ・エクセレンス)入賞豆を置く。「まずは“コーヒーってこんな味だったの?”という印象を感じてもらいたい。たとえば、COEの優勝銘柄など希少な豆に出合ってほしくて、ランチのセットドリンクに付けたりもする。そんな無茶なことをしているのは、うちぐらいかもしれません(笑)」と越智さん。きっかけは何であれ、おいしいと思ってもらえれば価格にかかわらず豆を購入するお客も増える。この先、スペシャルティは伸びるという強気の想定が結果的に奏功した。
また、喫茶店文化が根強い土地柄もあって、創業当初はオーダーの9割が通常のコーヒーだったが、今ではエスプレッソ系のドリンクも多くを占めるようになった。「門脇さんへの憧れが原点ですから、エスプレッソは外せなかった。業務用の3連マシンを導入したのは、うちが四国で一番早かったと思います。でも最初は、1日にカプチーノ2杯しか出ないということもありました(笑)」。最初は不安な時期が何度もあったという。それでも、シアトル系カフェの普及などが思わぬ追い風となり、時代の流れに店の方向性が意図せず乗ったのは幸運だった。
コツコツと積み重ねて得た信頼に応えるために
「生産者からロースターを経て、お客さんに提供するまでのストーリーと、素材への感謝がないとコーヒーの醍醐味は伝わらない」と、コーヒーを通した人と人との結びつきを強調する越智さん。10年以上かけてスペシャルティコーヒーという店の柱を定着してきたが、「専門的なカッピングの点数よりも、まったくコーヒーに興味のない人の素朴な感想が、お店にとって本来の評価」と、店のあり方においてもお客の立場を重視する姿勢が土台にある。そのため、できるだけ多くのコーヒーの個性を体験してもらおうと、卸先の開拓や出張コーヒー教室にも注力してきた。
その中で、「愛媛では最大の都会で、自分のコーヒーを世に問うフラッグシップショップとして、どうしても松山に店を作りたかった」という越智さんにとって、2016年に開業した松山椿店は一つの集大成ともいえる新拠点だ。何より特徴的なのは、1階を全面的にビーンズショップとしたフロア構成。それまでカフェのイメージが強かっただけに、「最初のころはどう使っていいかわからないというお客さんも多かったですね」というほど、斬新なスタイルは話題を呼んだ。カフェを主体に幅広い世代を受け入れる西条本店に対して、松山椿店は新興住宅街にあって、若い世代のお客を中心に新たなファンを広げている。
思わぬ苦境から始まり、紆余曲折を経て、自力で新境地を切り拓いてきた越智さん。2026年で20年の節目を迎え、今や四国を代表するスペシャルティコーヒー専門店と呼べる存在となったが、これからの店作りに迷いはない。「できるだけデイリーに使ってもらえるように、コーヒーに触れるきっかけを作って、草の根的に伝えていくのがうちのモットー。コーヒーに目覚めて以来、コツコツとやってきて、ここまで来られました。急激に得た人気や評判は長続きしないですし、積み重ねたことが自信につながっている。何回もあきらめかけたけど、店を信用してくれる方が増えたので、これからもコツコツ積み上げて応えるだけですね」
越智さんレコメンドのコーヒーショップは「L PLUS」
次回、紹介するのは、愛媛県松前町の「L PLUS」。
「店主の坂本さんはもともとうちの常連さんで、アロマセラピストのお母さんが主催する宇和島のサロンに豆を卸していたご縁があり、独立してカフェを始めるにあたって立ち上げのお手伝いをさせてもらいました。坂本さん手作りのお菓子が人気で、おしゃれなメニューの見せ方や空間づくりは、自分も参考にしています。まだ新しいお店なので、今後の展開を楽しみにしています」(越智さん)
【BRANCH COFFEE】
●焙煎機/プロバット 25キロ(半熱風式)
●抽出/フレンチプレス、エスプレッソマシン(シネッソ)
●焙煎度合い/浅~深煎り
●テイクアウト/あり(858円~)
●豆の販売/ブレンド3種、シングルオリジン8種。100グラム935円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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