教えをしっかり守った酒造り。宮城県「男山本店」若手杜氏の快進撃
東京ウォーカー(全国版)
教えをしっかり守った酒造り。若手杜氏の快進撃
菅原さんが頭を抱えていた時、杜氏から指名されたのが、当時、主に営業を担当していた柏大輔さんだった。

「営業で採用した人材でしたが、2002年ころから開発に乗り出した新しい酒の造りにも関わっていたことがありました。いわゆる門前の小僧というやつですよね。
震災の前だったら、柏が『やれます』と言っても『いやいやいや』となっていたのでしょうけれど、よくも悪くも震災を経験したことでチャレンジをいとわなくなっていた。それで『じゃあ、やってみなよ』ということになったんです」。
菅原さんにとっては賭けにも等しい挑戦。しかし、柏さんは大化けした。
12年の造りではこれまで入賞できなかった南部杜氏の品評会で、純米吟醸部門でトップを獲得したのだ。
「知識がなかった分、先代の杜氏の言っていたことをしっかり守ったのが大きかったのかもしれません」と菅原さんは言う。
先代杜氏の教えとは、蔵の掃除をしっかりすること。そして、みんな仲良くすること。

「蔵の人間関係がトゲトゲすると、それがお酒の味にも現れるんだそうです」と菅原さんは笑うが、あながち間違っていないようだ。
ちなみに、震災で人目に触れる機会が多くなった『蒼天伝』だが、実は「伏見男山に次ぐブランドを」と以前から研究を重ねてきた酒だった。
「気仙沼の蒼い海と空をイメージしています。さらにカツオやサンマなどの青魚に合う酒をつくろうと、試行錯誤。スッキリとしたのみ口の酒に仕上がりました」。
完成した『蒼天伝』は、今や日本にとどまらず、各国の品評会でさまざまな賞を受賞するまでの酒に成長した。
「よくも悪くも、震災が僕たちを大きく変えた。あの悲劇を生き延びた者としてやらなくちゃいけないことがあると思うし、これからも挑戦する気持ちを忘れずにやっていかなくちゃいけませんね」。
そう言って笑った菅原さんの表情は、気仙沼の海や空のように澄み渡っていた。

※KADOKAWA刊『会いに行ける酒蔵ツーリズム 仙台・宮城』より
栗原祥光
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