コーヒーで旅する日本/関西編|京都のコーヒーシーンを牽引する「WEEKENDERS COFFEE」。尽きぬ探求心で進化を続ける先駆者の“今”

関西ウォーカー

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飽くなき探求心を携えて、走り続けるコーヒーロード

「WEEKENDERS COFFEE ROASTERY」は、陰影を強調した照明で、伝統的な町家の雰囲気を活かした空間

ここまででも金子さんのコーヒーへのアプローチは大きく変わったが、それをはっきりと印象付けた画期は2016年、「WEEKENDERS COFFEE TOMINOKOJI」の出店だ。ビルの狭間に潜む町家を改装した店は、豆の販売とテイクアウトの小さなカウンターのみ。市中の庵を思わせる小さな店には、いまや朝から国内外のお客が入れ替わり立ち代わり。店を始めた頃は珍しかったエスプレッソも、「特に海外の方は慣れていて注文が多いので、スタンドにした意味はそこにもあるんです」と、自らの原点も忘れていない。

「町家を活かしたのは、日本的表現の一つとして、海外からのお客さんを意識した部分もあります。また、店の造りを小さくしたのは、コンパクトな方が道具やしつらえにいいものを使えますし、お客さんと相対して反応が見られる。席があるとコーヒー持って行って終わりになるので」。あえて小さな空間を作り、隅々に店主の気配りが行き届いたなかで、自身が思う最上のコーヒーを供する。その店のあり方は、茶の湯におけるもてなしにも通じるものがある。

創業店の移転と共に新たに導入したローリング社の焙煎機。メタリックな機体と年季を経た木造建築の取り合わせが目を引く


さらに2019年には、創業地の元田中から焙煎所を移転。焙煎機もプロバットから、サイズアップしたローリングへと入れ替えた。「移転して単純に焙煎の容量を増やしたかったというのが理由の一つ。加えて、よりきれいな味わいを追求するために完全熱風式を導入しました。ただ、それよりも移転を機に、生豆を管理するエアコン付きの部屋を作れたのが大きいですね。生豆の保存状態も味に影響するので。最近は産地からの運送時もビニールや真空パックをするようになりましたが、かつて麻袋にそのまま入っていた頃は劣化がすごくて、今、思えば怖い時代でした」

コーヒーの品質管理に欠かせない、空調管理ができる生豆の保管室


コーヒーのクオリティ向上のために環境を整える一方で、店の外では新たなチャレンジとして、2019年から懇意のデザインスタジオが主催するイベント・Coffee Ceremonyに参加。「日常的に淹れているコーヒーを、お寺や神社など非日常の場で楽しむという趣向で、この時のためだけの特別な道具やしつらえが用意されます。普段とやることは同じですが、場が変われば感じ方も変わる。ドリップする時の音や匂いなど、普段何気なく接しているコーヒーに集中して向き合うからこそ、感じられることは多い。例えば、スマホから手を離して飲むことだけでも十分に違います。機会があれば、海外でもやってみたいですね」。新たなコーヒーの楽しみ方は、京都から世界へ広がっていく可能性も秘めている。

非日常の空間でコーヒーを楽しむCoffee Ceremonyは、毎回、会場を変えて開催


日本のコーヒーシーンが劇的に変わった、この20年ほどを通して、尽きぬ探求心で試行錯誤を重ねながら、自らが目指すコーヒーを求めて変化し続ける金子さん。「自分では変わってないようで変わっているし、変わっているようで変わってない。ただ、変わること自体に抵抗はない。周りは大きく変わっていて、今はコーヒーに関する技術だけは洗練されたものがすでにありますが、しっかり理解を深めるには、ここまでコーヒーが変化してきた経緯をたどり、“なぜそれをするのか?”を考えることが欠かせません」。エスプレッソマシンを触り始めた頃の初心は、今もブレることがない。

「WEEKENDERS COFFEE ROASTERY」では、風情ある中庭を見ながらコーヒーを楽しめる


最後に、その飽くなき探求心はどこから来るのか、尋ねてみた。「例えば、僕はランニングを日課にしていて、よく“飽きない?”と聞かれますが、同じことをしてるようでも、もっと速くとか、もっといいフォームで、という思いが出てきます。コーヒーに対する感覚も、毎日走ることと同じで、飽きることはなくて、常に次のことを考えています」。奇をてらわず、よりスタンダードな道を進みたいという金子さん。京都のコーヒーシーンを牽引するトップランナーは、淡々と先を見据えて走り続けていく。

本日のドリップコーヒー(470円)


金子さんレコメンドのコーヒーショップは「The Roasters」

次回、紹介するのは和歌山市の郊外にある「The Roasters」。
「店主の神谷さんは同じ福島県出身で、元田中に店があった頃からよく来てくいただいてました。その後、開店するにあたり、焙煎機を見に来られたのが縁で、同業者としても交流が続いています。うちとは味の傾向は違いますが、和歌山でいち早くスペシャルティコーヒーの魅力を提案した、先駆け的な一軒です」 (金子さん)

【WEEKENDERS COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/LORING S15 15キロ(熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ V60)、エスプレッソ(ラ・マルゾッコPB)
●焙煎度合い/浅煎り~中深煎り
●テイクアウト/あり(470円~)※TOMINOKOJIのみ
●豆の販売/シングルオリジン6~7種、ブレンド2~3種 100グラム723円〜

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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