謎に包まれたミニカバの生態に迫る。野生でほとんど出会えず、むしろ動物園でしか会えないかも?【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】
東京ウォーカー(全国版)
トレーニングは動物と人、双方のストレスを減らすために必要
――このとき誕生したタムタムは現在、繁殖のため神戸どうぶつ王国にお婿入りして元気に過ごしている。来園者から、タムタムの近況を聞くことも多いという。こうしたミニカバファンに限らず、子供たちやお客様を喜ばせているのがミニカバの愛嬌たっぷりのしぐさ。村上さんはミニカバにお座りや伏せも教えているそう。

相手は「野生動物」であり、人に慣れるために進化した訳ではありません。人の手で飼育するにあたっては、安心して手からエサを食べ、体を触らせてくれる状況を作る必要があります。なので幼獣のころから私たち人間と良好な関係を築くことができるよう、一緒にトレーニングしました。また、野生動物は人が近づくと逃避行動を取ることがあり、トレーニングを通じてそれをできるだけ少なくすることは、動物と人のストレスを減らすことにも繋がります。
お座りや伏せをさせると、普段は見えにくい喉元や前肢、おなかなどを観察できます。オスのモトモトはなでられるのが大好きで、なでているときにたまたま伏せをしたのが始まりです。今ではフルフルも伏せをします。お座りや伏せは健康チェックに加え、私たちと動物との関係を構築するという目的もあります。ただ、距離が近すぎてペット化してはいけないので、そこはきちんと区別して、動物とは適切な距離を取ることを心がけています。
お客様の手本であるために、動物とは適切な距離感を
ミニカバに限らず小さなサルや鳥、コツメカワウソなどすべての生き物は、一歩間違えるとこちらがケガをする危険があります。おとなしそうに見えても、実はイライラしていることもあるかもしれません。ミニカバに関しては体が大きく、立派な牙も持っているので、柵の中には入らない「間接飼育」という形をとっています。
一方で、動物とのコミュニケーションも重要です。そこで、メリハリをつけて対応します。体を触るときは、餌があるとき。その時はしっかり体を触って、怪我がないか確かめます。それ以外の時間は動物が近寄ってきてもあえて距離を取るようにしています。
また、我々動物園・水族館の職員は、野生動物を扱う年下の飼育員や、お客様の手本でなければならないと考えています。例えば動物を抱いたり、キスしたり、過度なスキンシップを取ってしまうと、「野生でもやっていいんだ」という誤った情報を伝えることになるので、ミニカバに限らず動物との距離感を正しく取ることは大切です。

仕事だけじゃなく、いつでも動物のことを考えている
――そんな村上さんが、毎日の飼育で心掛けているのが「観察時間を確保することと、生き物がよりよく生活するために思考すること」だそう。
観察は飼育係にとって絶対にやらなければいけないことです。動物にはいずれ必ず死が訪れますが、そういう時に思うのは「もっとよく見ておけばよかった、もっと時間を持てばよかった、もっと改善できたのでは」ということ。どの動物が死んでも、後悔が残ります。いくら観察しても、したりない。

思考するというのは、限られた空間で暮らす動物の幸せな一生、よりよく暮らすための飼育方法やエサやり、環境への工夫などを考えるということ。仕事の時だけじゃなく、帰り際とか、お風呂に入りながらとか、いつでも考えていますね(笑)。
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