コーヒーで旅する日本/関西編|空間からメニューまで、一つ一つに語るべき“ストーリー”が息づくブックカフェ。「DONGREE BOOKS & STORY CAFE」

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

古民家の佇まいを残した空間は、まさに“お家”感覚でくつろげる雰囲気


関西編の第17回は、2020年にオープンした滋賀県湖南市の「DONGREE BOOKS & STORY CAFE」。店主のドリーさんは、2016年に京都で「Dongree コーヒースタンドと暮らしの道具店」を始めた後に、湖南市の地域おこし協力隊として現地に移住。“本を通して人が集まれる場を作る”というプロジェクトから立ち上げた新たなカフェは、「日々の暮らしと手仕事をより丁寧にしていきたい」との、長年の思いを体現している。都市を離れたローカルな場所で、コーヒーと手仕事を通して人のつながりを広げるドリーさんが作り上げた、“ストーリーを楽しめるカフェ”とは。

「先々は、山や森林などもっと自然に近い場所に拠点を作りたい」という店主のドリーさん


Profile|ドリー
1982(昭和57)年、大阪府箕面市生まれ。京都の芸術大学を卒業後、フリーランスのWEBデザイナーに。京都のロースターが主催するイベントに参加したのを機にコーヒーを軸にしたコミュニティ作りを志し、2016年、顔の見える手仕事をテーマにした「Dongree コーヒースタンドと暮らしの道具店」を京都にオープン。2019年に、滋賀県湖南市の地域おこし協力隊に応募して京都から滋賀に移住し、2020年、新たなブックカフェ「DONGREE BOOKS & STORY CAFE」をオープン。

コーヒーと手仕事を通じた暮らしを豊かにするコミュニティ

宿場町の家並みに溶け込む、古民家の佇まいを残した店構え

遠く鈴鹿山脈から琵琶湖に至る、県下最長の河川・野洲川のほとりにある湖南市石部。旧東海道の宿場町の面影を伝える古い町並みの奥、細い路地をたどった先に現れる「DONGREE BOOKS & STORY CAFE」。一見、年季を経た木造民家だが、引戸を開けた中には、思いもよらない憩いのスペースが広がっている。「店内はDIYをベースにして、リノベーションに1年かかりました」と、にこやかに迎えてくれた店主のドリーさん。表情の異なる木材を組み合わせた床に、意匠もさまざまなアンティークの家具や照明、テーブルもあれば座卓もある、大らかで気取らぬ空間は、手作りならではの親密感に満ちている。

コーヒーを抽出するカウンターの土台は、大きなドアを横倒しにして改造したもの


実はドリーさんにとって、カフェをオープンするのは、これが2回目。遡ること6年前、京都で開いた「Dongree コーヒースタンドと暮らしの道具店」がスタートだった。「きっかけは、京都のロースターが主催するイベントに参加したことから。オリジナルのドリップスタンドを使って、お座敷でコーヒーを提供する趣向でした。当時は本業がWEBデザイナーでしたが、コーヒーを軸に自由に生きる人の自由な表現に共感して、自分もコーヒーにまつわる場を作りたいと思ったんです」。3年の熟慮の末に開いた京都の店は、コーヒースタンドに、作家の手に成るアイテムの展示・販売を併設。この時に掲げた“暮らしを豊かにする手仕事と顔の見えるつながり”というコンセプトは、今に至るまで店を続ける上での揺るがぬ軸となっている。

本棚に並ぶ本のほとんどが栞本。持ち主のさまざまな思いに触れるのが楽しい


一方で、当時から地方への移住を考えていたというドリーさん。そんな折に出会ったのが、湖南市の地域おこし協力隊の募集。とりわけ、地域と移住者のマッチングを取り持つ一般社団法人・NCL(Next Commons Lab)のユニークな取り組みに惹かれたという。「店を始める前から、日々の生活と仕事をより丁寧にしていきたいという思いがありました。そのために、少し都市から離れたローカルな場所でコーヒーと手仕事を通したつながりを広げ、自分も周りも豊かに暮らせるコミュニティ作りを模索していました。NCLでは、各地で起業を目指す起業家が連携し、単独ではなくチームで移住を進めているのが特徴。湖南市は京都のコミュニティとも距離的に近く、最初から仲間がいるなかで移住できるのは心強かったですね」とドリーさん。2019年春に初めて湖南市を訪れた後、夏には移住を実現。2020年から、地域おこし協力隊として“本を通して人が集まれる場を作る”というテーマに取り組み、ブックカフェとして新たに誕生したのが「DONGREE BOOKS & STORY CAFE」だ。

栞本を店で読んだお客が、新たな栞をんでいくこともあるとか


移住後の2年間は、店の立ち上げや運営と並行して、古本マルシェと銘打ったイベントを開催。店内には、イベントを通じて集まった本がずらりと並ぶ。この過程で生まれたのが、本を介してコミュニケーションを広げる“栞本”の仕組みだ。「お客さんが読んだ時の思い出や感想を記した栞を本に挟んで、店の書棚に預けてもらうシステム。栞を通して持ち主のことを考えたり、想像が広がったりして、いろんな人の読書体験がつながっていく。栞本を置いてくれた方の交流会もあって、リアルにつながる場も企画しています」

大人のための絵本読み聞かせや、予約制の朝のブックカフェなど本にまつわる企画のほか、音楽ライブやバリスタを招いてのトークなど多彩なイベントも開催。また、京都の店でも扱っていた作家が手掛ける道具は、店内全体を使った年6回の企画展示が中心に。本や手仕事が取り持つ交流の場として、思わぬ出会いがあるのも、この場所の魅力の一つだ。

店内の一角で、陶器やアクセサリーなど手仕事による道具を販売


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