コーヒーで旅する日本/九州編|より身近にコーヒーがあるライフスタイルを鹿児島に根付かせたい。「LUCK APARTMENT」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

ラテよりもエスプレッソの比率が高い、ピッコロラテ

九州編の第31回は、鹿児島市にある「LUCK APARTMENT」。オーナーバリスタの福永寛尚さんが、2022年2月に開いたコーヒーショップで、鹿児島のコーヒー好きならば“元々、コーヒーイノベートがあった場所”と聞けば、立地のイメージが湧くかもしれない。オーストラリアに2年間留学し、現地のコーヒーカルチャーに触れた後、バリスタ世界チャンピオンのポール・バセット氏が手掛けたエスプレッソカフェ、Paul Bassettで約4年間、バリスタとして腕を磨いた福永さん。エスプレッソを抽出することにかけては、確かな技術を持つバリスタが、10年越しの夢を叶えた場所、「LUCK APARTMENT」の魅力に迫る。

オーナーバリスタの福永寛尚さん

Profile|福永寛尚(ふくなが・ひろたか)
1986(昭和61)年、鹿児島県鹿児島市生まれ。高校卒業後、会社員として約6年間働く。自身が一生をかけてやりたいこととして出した答えがコーヒーだった。もともと、家族が日常的にコーヒーを飲んでいたことから、自身もコーヒー好きではあったが、ほぼ知識ゼロから、ワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアに渡航。ゴールドコーストを中心にローカルのカフェで働きながら、現地のバリスタの仕事に間近に触れる。帰国後、すぐに上京し、オーストラリア出身の世界的なバリスタ、ポール・バセット氏が手掛けるカフェ、Paul Bassettに就職。約4年勤めた後、帰郷。鹿児島市内にあるCAFÉSHOPのマネージャーとして、約4年勤め、2022年2月、「LUCK APARTMENT」を開業。

オーストラリアのコーヒーショップのように、より身近に、より気軽に

抽出はエスプレッソマシンがメイン

「LUCK APARTMENT」のオーナーバリスタである福永さんは、とても計画性があると感じる経歴の持ち主だ。開業に至るまでの道のりを聞いて、そのことを伝えると、「すべて運やご縁に恵まれただけですよ」と笑顔で話す。

福永さんのコーヒーの世界への入口は、オーストラリア。どの街にも早朝から夕方まで営むコーヒーショップが多数あり、サーフィンの前、仕事前、さらにはランチの前、午後のブレイクタイム、ディナーの前など、1日中、コーヒーに親しむのがオーストラリアでは当たり前だ。

福永さんは「最初に自身がコーヒーを提供する側になったのがオーストラリアだったことは、僕にとって幸運だったと思っています。日本とはコーヒーショップが持つ役割が違うというか、本当に現地に暮らす人々の生活の一部になっている感じ。24歳でコーヒーの世界で生きていくことは決めましたが、オーストラリアで過ごした2年間は店のスタイルを決める上で、とても重要な役割を果たしました」と話す。その言葉通り、「LUCK APARTMENT」は早朝6:30から営業し、準備しているメニューもほぼコーヒー一本。

ドリップコーヒー アイス。豆は中煎りのブレンドを使用。注文を受けてすぐに提供できるクイックメニューだ

日本では定番のドリップコーヒー(440円・テイクアウト432円)もクイックブリューというマシンであらかじめ抽出しており、注文後、スピーディーに提供できるような体制を整えている。福永さんは「コンビニでコーヒーを買うくらい気軽に利用いただきたいと思い、オーストラリアのコーヒーショップのスタイルを踏襲しました。もちろん、じっくり腰を据えてコーヒーを楽しむ時間も良いのですが、仕事前にコーヒーを買うとなったら、お客さまをおまたせするわけにはいきません」とその理由を話す。クイックブリューであらかじめ抽出しているとはいえ、味わいのクオリティの高さはさすがだ。福永さんはマシンの特性を理解し、抽出スピード、湯温、豆の挽き目などを細かく調整。ハンドドリップ顔負けの味わいを引き出しており、このテイストが手早く楽しめるというから驚かされる。

世界トップクラスの抽出技術を学ぶために選んだ上京

福永さんの抽出技術の高さを体感するならエスプレッソ系メニューがおすすめ

バリスタとしての高い技術の礎となっているのが、約4年勤めた東京のPaul Bassettだ。オーストラリア出身で、2003年のワールドバリスタチャンピオンシップにおいて世界最年少でチャンピオンとなったポール・バセット氏が手掛けるエスプレッソカフェで、コーヒー業界では広く知られた名店の一つ。オーストラリアのコーヒーカルチャーに触れた福永さんは、「さらにバリスタの技術を高めるなら、絶対にここだ」と、帰国後、すぐに上京。タイミングにも恵まれ、Paul Bassettで働くことが叶った。

「初の東京暮らしで、さらにコーヒーの名店ということもあり、技術・知識を日々身につけていくのは大変でしたが、Paul Bassettで学んだ抽出のスキルがなければ、独立開業はできなかったかもしれません。すべての仕事を通して言えることですが、僕はやっぱり“石の上にも三年”という点は常に考えてきました。どんなに大変でも、3年間はやってみないと見えてこないものがあると思っています」と、コツコツと積み重ねることの重要性を説く。

ラテ ホット(440円、テイクアウト432円)と、エスプレッソの味わいが主張するピッコロラテ(350円)。飲み比べてみるのも良い

そうやって、東京で堅実に積み上げた実績を携え、鹿児島に帰郷した福永さん。次のステップとして選んだのは鹿児島市に2017年にオープンし、今でも若者を中心に高い人気を誇るCAFÉSHOP。店舗マネージャーとして店を切り盛りし、ここでコーヒー以外の知見も多く得る。「CAFÉSHOPでは、コーヒーと一緒に何を売るか、コーヒーがあるからこその空間づくりやアプローチの仕方を実感として学べました。どんなお店が故郷の鹿児島市に受け入れられるか、といったことを考える上でとても有益な4年間だったと思っています」と福永さん。

店が入るのは築50年ほどのノスタルジックな古ビル。鹿児島市役所や鹿児島地方裁判所のすぐそばだ

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