コーヒーで旅する日本/九州編|自身が受けた感動を伝えたいというシンプルな想いを胸に。「ロッサ焙煎所」が開店に至るまで

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産地に足を運び、本格的に焙煎所設立へ

「農園を訪問したことで、コーヒー愛は深まった」と宮本さん

2020年2月、コーヒー豆の仕入れ先として開店から長年親交を深めてきた「アロマコーヒー」の買い付けに同行する形で、産地訪問が実現。もちろん宮本さんにとって、初めて自身の目で直接コーヒー農園を見る機会となり、その経験が「ロッサ焙煎所」の開店へと繋がる。

「店でずっと使わせていただいていた、ニカラグアとエルサルバドルの農園をメインに訪問させていただきました。産地を訪れる以前もアロマコーヒーさんから、農園や生豆の情報をいただき、自分なりに理解した上でずっとコーヒーを淹れ続けてきましたが、やはり自分の目で実際に産地を見て、どうやってコーヒーの果実が栽培され、どんな苦労があって、私たちの元にコーヒー豆として届いているのかを理解すると、より親近感、愛着が増しました。農園の方々もすごくアットホームに迎え入れてくれ、家族のような存在だと実感しましたね」

農園を訪問する前から、「ロッサコーヒー」の2階で手回し焙煎にチャレンジしていた宮本さんは、すぐに本格的に自家焙煎をスタートするために、焙煎機を探し始める。さまざまなメーカーがあるが、最初から、アロマコーヒーでも使用しているPROBATを導入することに決めていた宮本さん。その理由をこう話す。「私がコーヒーで最も大切にしているのは、香りです。アロマコーヒーさんも屋号が示すように、香りをとても重視されており、私自身、その味作りが好きでした。『ロッサコーヒー』の屋号にも、バラのように香り豊かなコーヒーを提供したいという想いを込めています。そういった理由から導入するならPROBATと決めていました」

ウィーンから取り寄せた、1954年製のPROBAT3キロ窯

焙煎機を探し始めてまもなく、ドイツの企業のSNSを通して1954年製の焙煎機がオーストリアのウィーンにあることを知り、すぐに交渉をスタート。「約70年前の製品の上、長い期間使用されずに放置されていたため、写真を見る限りボロボロでしたが、しっかりとメンテナンスしていただけるとのことで購入を決めました」と宮本さん。

「ロッサ焙煎所」は国の登録有形文化財の1階にある

偶然、自身が理想とする焙煎機を探し当てることができた宮本さんは、さらに、「ロッサ焙煎所」の場所探しでも良縁を得る。ロースタリーとしたのは、国の有形文化財にも登録されている古民家の一角。「以前から、趣のあるこの古民家のことは気になっていたのですが、まさか一角をテナント貸ししているとは知らず。焙煎所の物件探しをしていることを伝えていた知人から、この古民家でテナントを募集しているということを教えてもらったんです。早速、大家さんに相談に行きましたが、木造建築ということもあり、最初はお断りされました。ただ、どうしてもこの場所で焙煎をしたかったので、焙煎機の構造や安全性などについてしっかり説明し、資料を作り、交渉を重ねた結果、最終的にOKをいただきました」

かくして、理想とする焙煎機と場所を手に入れることが叶い、2021年6月に念願のロースタリー「ロッサ焙煎所」がオープンした。

カフェスペースはなく、ドリンクはテイクアウトのみ


自身が好きな味わいを表現し続ける

ハンドドリップは味わいのブレが少ないクレバーコーヒードリッパーを採用。ほかアーモンドミルクラテ(500円)、オーツミルクラテ(600円)なども用意

「ロッサ焙煎所」の焙煎度合いは、浅煎りもしくは中煎り程度で仕上げるのが一般的なスペシャルティコーヒー業界では珍しく、深煎りが主体。なかでもおすすめは、アロマコーヒーが農園から直接仕入れた生豆を使う、深煎りのハウスブレンド、楠並木ブレンドだ。「私自身、しっかりとしたボディ感を感じられる深煎りのコーヒーが好きですし、『ロッサコーヒー』で開店以来人気のラテも、ある程度深めに焼いたコーヒーの方がミルクとの相性も良いと思っていて。生豆の品質が良く、かつ焼き味はできるだけ付けないようなプロファイルにしているので、ある程度深めに焙煎しても生豆由来の香りや酸味は感じることができると思います」と宮本さん。

【写真】ドリップバッグ(1個200円)はちょっとした手土産に人気

ロースタリーがオープンして丸1年経ち、豆売りをメインとした店には、日常的に多くの常連が訪れる。小売りはもちろん、卸しにも力を入れ、焙煎士として日々コーヒーと向き合う宮本さん。最後に今後の展望を聞いてみた。

「7年前に『ロッサコーヒー』を始めた時は、まさか自分が焙煎するとは思っていませんでしたし、店舗を増やすことになるとは想像もしていませんでした。ただ、ずっと考えていたのは、この街に根付くコーヒーショップになること。それを地道にやって来て、さまざまなご縁に恵まれ、今があります。私は自分自身が純粋においしいと思える味わいを大切にしていきたい。トレンドに左右されることなく、普遍的でありながら、どこか個性が光るコーヒーをこれからもお客さまにご提供できたらと考えています」

店前には自販機も設置。コーヒー豆(粉)などが24時間購入可

宮本さんレコメンドのコーヒーショップは「Rametto」

「おすすめは同じ宮崎市内にある『Rametto』。店主の後藤くんは、もともと『ロッサコーヒー』によく来てくれていた常連さんで、エスプレッソマシンの抽出に興味を持つなど、すごく勉強熱心な若者。福岡市内で店をやっていた時期を経て、宮崎にUターンして『Rametto』をオープンさせました。店の空間づくりから、後藤くんと奥さんのセンスの良さを感じることができ、SNSでも話題です。後藤くんはラテアートもすごく上手なんですよ」 (宮本さん)

【ロッサ焙煎所のコーヒーデータ】
●焙煎機/PROBAT PROBATONE12キロ、1954年製PROBAT3キロ
●抽出/ハンドドリップ(クレバーコーヒードリッパー)、エスプレッソマシン(VIBIEMME)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円〜



取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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