コーヒーで旅する日本/関西編|音楽の道からコーヒーの世界へ。移動販売から始まった辺境のロースターの進化の軌跡。「中山珈琲焙煎所」

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

現在の店は2021年にリニューアルしたばかり。窓越しに3台の焙煎機が見える


関西編の第26回は、京都府南部の木津川市にある「中山珈琲焙煎所」。店主の中山さんは、長年続けた音楽の道から、コーヒーの世界へと転身。地元で小さなコーヒー屋台からスタートし、イベント出店で多くのファンを獲得して、いまや関西で人気のロースターの一つに。コーヒーの知識も、商売の経験も、まったくのゼロから始めた店は、2021年のリニューアルを経て、今も進化を続けている。決してアクセスが良いとは言えない場所にあって、この店が変わらぬ支持を得る所以とは。

店主の中山修也さんと、奥様の舞蘭(まいら)さん


Profile|中山修也(なかやましゅうや)
1980 (昭和55)年、大阪府生まれ。大学卒業後、アルバイトをしながら、高校時代から始めた音楽活動を続けた後、京都の染物工場にて約3年勤務。この頃に、コーヒーを淹れる楽しさに魅了され、2009年から自宅で焙煎を始め、野菜直売所やマルシェ、イベントなどでコーヒーの販売をスタート。その後、焙煎所を独立させ、2010年、京都府木津川市に「中山珈琲焙煎所」を開業。2021年に、店をリニューアルし、イートインスペースも併設。

“初めて自分で淹れた一杯”からコーヒーの楽しさを発見

店の窓の外には、一面に緑豊かな里山の景色が広がる

京都府最南端、奈良県との境に広がる木津川市。田園地帯の丘陵地に開けた住宅街の入口に、2021年に新装したばかりの「中山珈琲焙煎所」のスタイリッシュな店構えが現れる。前面がガラス張りになった店内は、「カウンターから目を上げると、開放的な景色が広がって、気持ちいいですね」と店主の中山さん。コーヒーショップというよりは、コーヒー“ラボ”と呼びたくなる、整然とした空間にあって、ひときわ目を引くのは、窓際に並ぶ大・中・小とサイズの異なる3台の焙煎機だ。開業以来、中山さんが使用してきた、歴代の機体は、そのままこの店がたどった足跡と重なっている。

元々コーヒー好きだった中山さんが、本格的にその深みへ引き込まれたのは、28歳の頃。それまでは、高校時代に友人と始めたヒップホップユニットで音楽活動に邁進していたが、10年続けても鳴かず飛ばず。先々を見据えて、京都の染色工場に就職してしばらく経った頃だった。「当時からコーヒーのおいしい店を探し歩いたりしていましたが、もっぱら飲む方が専門で、自分でコーヒーを淹れたことはなかったんです。ある時、友人が手回しのコーヒーミルとドリッパーをプレゼントしてくれて、初めて豆を挽いて淹れてみたんですが、挽き立ての豆で淹れるとこんなにも違うのか!と、衝撃を受けたのを覚えています」

「ずっと店にいると視野も狭くなるので、新たな出会いを求めてイベント出店は今も続けています」と中山さん


自分の手でも、おいしいコーヒーは作れる。その感覚が忘れられず、以降、いろんな豆を買っては淹れてを繰り返したという中山さん。ここで、コーヒーの楽しみを覚えたことが、新たな道を拓くきっかけになった。「音楽を諦めた後で、気持ちは落ち込んでいたんですが、コーヒーに触れていると楽しかった。それなら、これを仕事にすればいいんじゃないか?」と、不安もありながら動き始めた。

とはいえ、当時は、市内にコーヒー専門店などほぼ見当たらなかった頃。豆を販売しようと思っても、いきなり始めたのではお客が来る見込みがないかもしれない。それなら、まずは飲んで味を知ってもらおうと、近所の野菜直売所の軒先を借りてコーヒースタンドをスタート。屋台のような小さな店が、コーヒー店主としての原点にある。「始めるにあたって、実家のキッチンに手回しの焙煎機を置いて、自分で豆を焼き、店で挽いて、抽出していましたが、最初はやっぱり自信がなくて。直売所で一緒に軒を並べていたパン屋さんや惣菜屋さんから、“もっと大きい声出しなさい”とか“値付けが安すぎるんちゃう?”とか、アドバイスをもらいながらの営業でした」と振り返る。その時は、コーヒーのことはもとより、商売のイロハがまったく分かっていなかったという中山さん。売上のほとんどを原料や設備につぎ込む自転車操業で、3年ほどは赤字が続いたそうだ。

ただ、意に反して、「一番エキサイティングだったのはこの頃」と中山さん。「自分が作ったものに対して、おいしいという声を聞けて、お金払ってもらえる。ただそれだけで、うれしさもひとしおでした」と、自分で作って売ることの喜びは、今も心に深く刻まれている。

ブレンドは、オーダー後に都度、豆を配合して提供する

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